第4章 第15話「記憶の回廊」
第4章『封印された遺跡』
第15話「記憶の回廊」
仮面の人物は、時空転移核の前で静かに立っていた。
まるで、ここに来ることが“決められていた”かのように。
「君が“K”か。……いや、今の名はケンだったか」
声は年齢も性別も感じさせない、澄んだ音。
「お前は……誰だ」
俺が問いかけると、仮面はわずかに首を傾ける。
「我は観測者。そして記録者。かつてこの遺跡を管理していた“統括意志”の残滓だ。君がこの空間に入ったことで、我は目覚めた」
観測者は右手を差し出す。
「君の記憶……失われた断片を返そう。“君自身”を知る覚悟があるなら、触れるがいい」
俺は一瞬、躊躇した。
だが、今までの戦い。避難民や世界の未来。そして――この世界で生きると決めた覚悟。
そのすべてが、俺の背を押した。
「……わかった」
俺はその手に触れた。
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次の瞬間、視界が白に染まり――
無数の映像が、頭の中に流れ込んでくる。
誰かに注射器のような器具を突き立てられる自分。
叫ぶ子供たち。消える仲間。
異世界転移の瞬間。そして、実験失敗のアラーム。
何者かの声が響く。
「K、彼は失敗した……いや、“適合しすぎた”。既存の法則が、通用しない……!」
最後の映像には、空間の裂け目に飲み込まれる自分――いや、“K”がいた。
そして、次の瞬間。俺はこの世界の草原に倒れていた。
(……そうか。俺は、実験によって“世界の法則を飛び越えて”この場所に現れた……)
だから、記憶も中途半端で、異質な《起動者》の称号を持っていた。
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意識が戻ると、俺は膝をついていた。
「……ケン!」
駆け寄るリラ。カイも肩を貸そうとするが、俺はゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫。……思い出しただけだ」
「……何を?」
「俺が、なぜここにいるのかを」
俺は、観測者に向き直る。
「ありがとう。けど、あんたが“記録者”っていうなら、ひとつだけ教えてくれ」
「何だ?」
「俺以外にも、来たやつがいるんだろ。“もう一人の起動者”ってのが記録にあった。……そいつはどこだ?」
観測者はしばし沈黙したあと、こう言った。
「彼は……“この世界を終わらせる者”となった」
その言葉は、俺たちの背筋を凍らせた。




