第4章 第14話「Kの記録」
第4章『封印された遺跡』
第14話「Kの記録」
俺たちは、実験室の奥へと進んだ。
壁に埋め込まれた魔導端末は、未だに弱い光を放っている。その一つが、リラの操作によって起動した。
「記録ログ、まだ読めるみたい。古代語と融合してるから、少しだけ解読が必要だけど……」
リラが操作を続けると、映像記録が浮かび上がった。
それは、無表情な子どもたちが実験台に並べられ、ひとりずつ何かを注入されている光景だった。
魔力ではない、何か“異質”な力。
その力に触れた瞬間、何人かの子どもは悲鳴を上げ、そして――姿を消した。
まるで空間ごと“消失”したかのように。
映像の最後、担当者らしき人物がこう呟く。
「起動者候補、K。適合率82%。制御下には置けず、暴走。転送ログに記録はなし。だが……彼の“痕跡”は、確かに次元の裂け目に残っている」
画面はそこで途切れた。
その瞬間、全身に冷たい電流が走る。
(……K。それは、俺のことなんじゃないか)
今までの断片的な記憶。異世界転移の“違和感”。
この研究所での実験が、俺の出自に繋がっている――そう確信できた。
「ケン、平気?」
リラの声が優しく響く。
俺は、小さく頷いた。
「なんとなく、わかってきた。俺がここに来た理由が。……そして、なぜ“起動者”なんて称号を持ってたのかも」
そのとき――
研究所の奥、封印扉の向こう側から、重々しい音が響いた。
ぐぅぅぅぅ……ん、と。
魔力の波動が、空気を震わせている。
まるで、俺の存在に反応したように。
「……開いた?」
カイが構える。
レイはすでに抜刀していた。静かな瞳が、闇の奥を見据えている。
「呼ばれてる」
レイがぽつりとそう呟いた。
俺たちは、無言で頷き合い、その封印扉の先へと進む。
中にあったのは、古代魔法文明が遺した最後の空間だった。
無数の魔導装置、そして――中央に浮かぶ黒い“球体”。
「これは……!」
リラが息を呑む。
「時空転移核……! 完全な空間跳躍を可能にする、理論上の魔導装置!」
その核が、不気味に脈動していた。
そして、音もなく、その前にひとつの人影が立つ。
白いローブ。古代文明の印を刻んだ仮面。
「……ようこそ、起動者。君の記憶、取り戻す準備はできたか?」
それは――この遺跡の“守護者”だった。




