第4章 第12話「転移の門」
第4章『封印された遺跡』
第12話「転移の門」
遺跡の最奥部――薄暗い石の大広間の中央には、紫に脈動する魔法陣が浮かび上がっていた。円形のそれは、古代の文字で縁取られており、まるで生きているかのように光と熱を発している。
「……これが、転移装置か」
俺は慎重に近づき、足元の魔法陣に手をかざす。
反応があった。空間が微かに震え、魔力の流れが全身を駆け抜ける。
「転移先は固定式みたい。古い魔法だけど、まだ動いてるわ」
リラが周囲の文様を解析しながら言う。
「……つまり、一方通行ってことか?」
カイが顔をしかめ、剣の柄に手を添えた。
「うん。入ったら戻ってこれない可能性が高い。先に進むしかないわ」
「戻れない……か」
俺は視線を転移装置に戻し、息をひとつ吐いた。
レイは沈黙を守ったまま、黒い剣を背に立っている。何も言わず、ただこちらをじっと見つめていた。
「行こう」
俺の一言に、全員が静かにうなずく。
そして、四人は転移陣の中心へと歩み出た。
次の瞬間、視界が揺らぎ、肌に冷たい風が突き刺さる。
「っ……ここは……!」
目の前に広がるのは、雪と氷に閉ざされた断崖だった。灰色の空。吹きつける吹雪。遠くの山々は霧に包まれ、まるで異世界に放り込まれたような感覚を覚える。
「……寒ぃな……」
カイが歯を鳴らしながらマントを強く握る。
リラは凍りついた地図を広げながら、歯切れよく言った。
「地形的には“禁呪の谷”の東端ね。このまま尾根を越えれば、“研究区画”に入れるはず」
「……っ!」
突如、前方の崖から気配が跳ね上がった。
「ケン、来る!」
カイが叫ぶと同時に、雪煙を割って白銀の影が飛び出す!
「アイス・ビーストか……!」
素早く構えた俺は、新スキル《剣嵐・トリプルレイヴ》を発動。連撃の風が獣の突進を弾き飛ばす!
獣は怯まず、爪で応戦してくる。雪の中でも自在に動く敏捷性。さすがはこの寒冷地の主だ。
「カイ、援護頼む!」
「任せろッ!」
カイが低く構え、鋭く踏み込む。《二連斬》! 斜めの剣閃が獣の肩を切り裂いた。
「リラ、今だ!」
「《氷封逆断》!」
詠唱の終わった魔法が命中し、獣の脚を凍りつかせる。
その瞬間、レイが無音で滑り込み、獣の死角に現れた。
黒剣が、喉元へ――
ズバッ……!
返り血も凍るような一撃。獣は崩れ、動かなくなった。
静寂が戻る。風の音だけが、山肌を撫でていた。
「はあ……っ、意外と手強かったな」
「こいつで“入口”か……。奥はもっと厄介だな」
カイが剣を納めながら言う。
リラは地図を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。
「この谷、ただの遺跡じゃない。魔法文明の“負の遺産”が眠ってる……」
「それでも、行くしかないんだ」
俺は振り返り、仲間たちを見る。
レイは静かにうなずく。
リラは少しだけ目を伏せた。
カイは、ニッと笑った。
「行こうぜ。証明するんだろ? ここでも“俺たちはやれる”って」
「……ああ、行くぞ」
俺たちは、再び雪の中へ歩き出した。




