第4章 第5話「試練の間」
第4章『封印された遺跡』
第5話「試練の間」
遺跡の封印扉をくぐった瞬間、背後の石扉が無音で閉じた。
「……閉まったな」
「……想定通り」
レイは淡々とそう言って、周囲を警戒するように目を走らせる。
その空間は、まるで空気すら止まっているように静かだった。
壁も床も、古代語の刻まれた黒い石でできている。
そしてその中央に――不思議な装置が、ぽつりと浮かんでいた。
「……台座?」
「違う。魔法装置……おそらく“試練”の発動装置」
俺たちが近づくと、突然、空間全体が淡く光りはじめた。
その瞬間――
「資格者、確認。個体数:三名」
無機質な声が、頭の中に直接響く。
「試練、開始」
そして、目の前に“それ”が現れた。
鉄の甲冑をまとい、全身を魔力で補強された“騎士”の像。
けれど、それはただの像ではなかった。
唸りを上げながら剣を構え、こちらに向けて歩き出す。
「動くんかよ……!」
「来る」
俺とカイは剣を抜き、レイはすでに構えていた。
「まずは動きを見よう。無理はすんなよ、レイ」
「うん。……足、止める」
レイの瞳が光る。影が床にのび、それが一気に敵の足元を縛るように絡みつく――
スキル《影縛り》。
だが、敵の騎士はそれを力ずくで引きちぎった。
「受け止める!!《雄叫び》」
カイに不気味な騎士の剣が唸りを上げ振り下ろされる。
「スキル《防御姿勢》!!」
剣同士の衝突で凄まじい火花が散る。
「ケン、今だ!!」
カイが叫ぶ。
俺の《渾身突き》が唸りを上げて騎士の胸元へ――だが、剣がはじかれる。
「魔力防壁か……!」
「なら、削る」
レイが背後に回り、連撃を仕掛ける。今度は、わずかに装甲が軋む音がした。
「よし、通った!」
「……もっと」
俺も息を合わせ、再度《渾身突き》!
そのタイミングで、レイの新スキル《影剣・断》が発動――闇の刃が騎士の背後から突き刺さる!
ギィ……ン!
魔力のバリアが砕ける音。
そして、敵の剣が止まった。
「……試練、合格」
騎士の像が崩れ、灰となって消える。
「……終わった、のか?」
レイは静かにうなずいた。
「うん。……ケガ、ない?」
「へへ、大丈夫。レイとカイのおかげで勝てたよ」
「一秒遅かったらあいつの剣で死んでたわ」
「……連携、よかった」
その一言で、胸がじんわり温かくなる。
その時、石の壁が静かに開いた。
奥にはさらに深い通路があり、空気の質が一変していた。
まるで“生きている何か”が、俺たちを待っているような気配。
「……次が、本番かもな」
「うん。でも、行こう」
並んで歩き出す。
ここからが、真に“遺された封印”との対峙だ。




