第3章 第19話「招かれざる使者」
第3章『街と騎士団』
第19話「招かれざる使者」
――夜が明けた。
前日の戦闘の爪痕を残す街の片隅で、俺たちは宿に戻り、束の間の休息を取っていた。
レイは窓際で静かに剣の手入れをしている。カイは包帯を巻いた腕を動かして、「もうイケる」と無理やり笑っていた。
リラは少女の様子を見守っている。……あの“器”だという少女は、まだ目を覚まさない。
「黒街の連中……あれが本格的に動き出したら、やっかいだな」
俺がつぶやくと、リラが頷いた。
「ええ。しかも、あの男……禁術を使った気配があった。普通の闇魔法じゃないわ。街の奥に封じられていたはずの……“古術”よ」
「古術……?」
「伝承では、王都でも使用が禁じられた禁呪。古代遺跡から流れ出た力が、黒街の手に渡ったのかもね」
「遺跡……って、どこに?」
「……セイントラの地下よ。この街は、“遺跡の上”に築かれた都市なの」
その言葉に、俺たちは一斉に顔を見合わせた。
そのとき――宿の扉がノックされた。
「ケン様、カイ様、レイ様……騎士団からの“使者”です」
宿の主人の声に、俺たちは警戒を強める。
扉の向こうに立っていたのは、白銀の紋章をあしらった騎士――レオナルド副団長の側近だった。
「団長より伝言です。“街の中央議会より、君たちに正式な要請がある。至急、城内へ”と」
「……ついに来たか。向こうが動いたんだな」
「はい。ただし……“歓迎されている”とは限りません。お気をつけて」
その言葉と共に、騎士は踵を返して去っていった。
「どうする?」
カイが問うと、俺は深く息を吐いて頷いた。
「行くしかない。避難民の未来を開くって決めたんだ。ここで逃げるわけにはいかない」
レイが黙って立ち上がり、剣を腰に差す。
リラも頷いた。「私も同行するわ。あの“器”の件、今のうちに手を打たないと遅い」
「よし。行こう。次の扉を――開けに行くんだ」
こうして俺たちは、“議会の間”へと向かった。
そこに待っているのは――味方か、敵か。それすらも、まだ分からない。




