第3章 第18話「変質したバジリスク」
第3章『街と騎士団』
第18話「変質したバジリスク」
黒く変質したバジリスクが、咆哮と共に飛びかかってきた。
「避けろッ!」
俺の声と同時に、レイが滑るように回避。
その動きは人間離れしていて――だけど、いつものように静かで冷たい。
「“影縛り”!」
レイのスキルが発動。
地面から黒い影が伸び、バジリスクの足を絡め取る。
しかし――
「ぬるい!」
男が指を鳴らすと、バジリスクの体から黒い瘴気が噴き出し、影の拘束が弾き飛ばされた。
「っ……影が、効かない……!」
リラが叫ぶ。
「魔獣の魔力が……異常に高いのよ!」
「くそっ、だったら力で押し切るしかねぇ!」
カイが吠えるように叫び、真っ向から斬りかかった。
だが、バジリスクの尾が地を叩くように振るわれ――
「カイ!」
「ぐっ……まだ、いける!」
衝撃を受けながらも立ち上がるカイ。
「ケン! 連携で行くぞ!」
「――ああ!」
俺たちは視線を交わし、一気に距離を詰めた。
カイが先陣を切って斬りつける。
その隙に、俺は“渾身突き”を繰り出す。
「喰らえッ!」
渾身の力を込めた拳が、バジリスクの脇腹に突き刺さる。
鈍い音と共に、魔獣の体がぐらりとよろめく。
「今だッ!」
その瞬間、レイが背後から剣を振り下ろした。
刹那――バジリスクの首が、飛んだ。
「……倒した、か……?」
俺たちは肩で息をしながら、魔獣の消えゆく残骸を見つめる。
そのとき――
「……ははっ。ああ、素晴らしい……!」
黒衣の男が、口元を歪めて笑った。
「試してみて、正解だった。やはり“器”を守るほどの力がある」
「お前……何者だ……!」
リラが杖を構えると、男はひらひらと手を振る。
「名乗るほどの者じゃない。ただの、“仕掛け人”さ。……いずれまた会おう。今度はもっと“深い場所”でな」
そして彼は、闇に紛れて姿を消した。
残されたのは、少女の静かな寝息と、傷ついた俺たち。
その空気の中で、リラが小さくつぶやく。
「黒街は、ただの闇商人集団じゃない……。本格的に、街の“根”に関わってる」
「この街には……もっと深い闇があるってことか」
俺は拳を握った。
バジリスクなんて、ただの前座だった。
本当の敵は――これから、待ってる。




