第3章 第13話「動き出す真実」
第3章『街と騎士団』
第13話「動き出す真実」
――次の日、騎士団本部・北棟応接室。
重厚な木の扉が閉じられた室内で、俺たちはクルトとレオナルド副長に、昨夜の潜入戦の報告をしていた。
「……ふむ。毒薬、記録帳、隠し通路……すべて押収済みか。手際のいい仕事だ」
レオナルド副長が資料を手に、深く頷く。
「その“隠し通路”ってのがミソだよな。街の外壁下まで続いてるルートなんて、普通の連中が知ってるわけねぇ」
クルトが腕を組みながら言った。
「……つまり、“中”に手引きした誰かがいるってこと?」
リラの声に、室内の空気がぴりりと張る。
「おそらくはな。騎士団、または街役人の中に、〈黒街〉と通じてる内通者がいる可能性が高い」
レオナルド副長はそう断言した。
「放っておくわけにはいかんな。だが、証拠が薄い……」
「だったら、もう少し揺さぶってみるか」
カイが珍しく、静かに言った。
「今、黒街の末端は俺たちにやられて、混乱してるはず。ここで一気に……“疑いの種”をばらまけば、敵は何かしら動く」
俺もカイに同調する。
「……なるほど」
レオナルドは目を細め、俺たちを見る。
「お前たちに、その役目を任せよう」
* * *
「おいケン、マジでまた“任務”増えたぞ。お前、なんで毎回引き受けちまうんだよ……!」
騎士団本部を出てすぐ、カイがぼやく。
まあ、分からなくもない。昨日の今日だし、さすがに疲れてる。
「でも、悪くないだろ? こうして街の中心に近づいていく感覚。嫌いじゃない」
「……まあな」
後ろから、レイとリラも静かに歩いてくる。
レイは今日も無表情だが、何となく、歩調が軽い気がした。
「ねえ、ケン。今の街って、いろんな“派閥”があるんだよね?」
リラが訊ねてきた。
「ああ。ざっくり言えば、こんな感じらしい」
俺は昨日クルトから聞いた情報をまとめる。
【セイントラ・三大派閥】
騎士団派(レオナルド副長)
秩序と武力による街の防衛。クリーンさを重視するが、融通が利かない。
商会連合派(大商人ヴォルトン)
金と物流を握る街の実権派。〈黒街〉とも一部つながっていると噂。
教会派(白の聖堂)
街の信仰と民衆の心を掌握。中立的に見えるが、時に“裁き”として動く。
「この3つが、それぞれ微妙に対立しつつ、均衡を保ってる。で、俺たちは……まだ、その外側ってわけだ」
「……あたしたちが“内側”に踏み込んだら?」
リラがふと、寂しそうに言う。
「きっと、ただじゃすまない」
レイが、ぽつりと呟いた。
「……そうだな。けど、避難民の居場所を守るには、俺たちも“踏み込むしかない”んだ」
俺はそう言って、拳を強く握る。
この街の真実に、少しずつ触れ始めた俺たち。
騎士団の中に敵がいる。
そして、〈黒街〉の奥にはもっと危険な“何か”が潜んでいる。
――次に動くのは、どっちだ。




