表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/73

第3章 第12話「牙を抜く者たち」

第3章『街と騎士団』

第12話「牙を抜く者たち」

夜、月も隠れる雲の下――。


俺たちは“猫のひげ亭”のナーヴァから受け取った地図を頼りに、郊外の廃工房へと向かっていた。


「ここ……で間違いないな」


鬱蒼とした林の奥、朽ちた木造の建物。

だが、窓の奥にはかすかな明かりが漏れている。


「見張りが2人。扉の内側にもう3人。……奥には、もっといる」


レイが囁くように言った。


「レイ、お前が先に“抜く”か?」


「……うん」


闇に紛れて、彼女の姿がすっと消える。

次の瞬間――


「……っ!」


建物の影から、倒れ込む影。


「一人。眠った」


「“眠った”、ねぇ……」カイが苦笑する。


静かに近づくと、もう1人の見張りも崩れ落ちていた。剣傷はない。だが、息はある。


「毒か?」


「気絶だけ。……私、殺すの苦手」


レイが小さく呟く。


その瞬間、俺の胸の奥で何かがじんと響いた。


――戦う理由は違えど、レイはレイなりの“線”を引いてるんだ。


「よし、俺たちも行くぞ。音は立てるな」


 


* * *


 


廃工房の中は、予想以上に整っていた。

壁に並ぶ帳簿、薬草、錬金釜。表向きは薬屋を装っていたのかもしれない。


「誰か、いる……!」


リラが囁いた直後、奥の扉が開いて、男たちが数人姿を現す。


「……チッ、騎士団じゃねぇな。誰だテメェら」


「悪いが、こっちから“牙を抜きに来た”んだよ」


俺の言葉と同時に、戦闘が始まった。


――が。


俺たちは既に“格”が違っていた。


「はっ!」


カイの渾身の一撃が、一人を壁ごと吹き飛ばす。

俺は“渾身突き”で正面の男を床に沈めた。


レイは背後から静かに近づき、無音の動きで一人、また一人と眠らせていく。


「フレア・ロック!」


リラが小声で呪文を唱え、敵の足元に赤い魔法陣が出現。重力が増したように、相手は動けなくなる。


「おおおっ、くそっ……体が、重いッ……!」


その隙に俺が駆け込み、一撃を叩き込む。


「終わりだ!」


10分もしないうちに、建物の中の敵は全員沈黙した。


 


* * *


 


「ふぅ……終わったな」


肩で息をしながら、俺は壁にもたれかかる。

部屋の奥から、レイが小箱を手に戻ってきた。


「毒薬。……裏仕事の道具。全部、潰す?」


「いや。証拠としてクルトに渡す。街の中でこいつらを放置しちゃいけねぇ」


カイがうなずきながらも、複雑な顔をして言う。


「けどよ……こんな拠点、街中にいくつあるんだか。いたちごっこだな」


「でも、今夜のこれは……“警告”になる」


レイの低い声が、静かに響いた。


「うん。あいつらも、私たちが“黙ってはいない”ってこと、分かったはず」


リラが頷き、にこりと笑う。


その表情は、魔法少女というより、もう一人の“冒険者”のようだった。


 


――こうして、黒街の末端は一つ、牙を失った。


けれど。


これはまだ、序章にすぎない。


街の闇は、もっと深く、もっと冷たい。


そして俺たちは、知らず知らずのうちに――


その核心に、足を踏み入れ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ