表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/73

第3章 第10話「深夜の襲撃」

第3章『街と騎士団』

第10話「深夜の襲撃」

――カツン、カツン、と小さな足音が響く。


セイントラの夜は静かだ。けれど、静かすぎる夜には、別の気配が紛れる。


その男は、路地裏から忍び込むと、俺たちが泊まっている宿の裏手の扉に指をかけた。


カチャリ。


施錠はされていない。ここは貧民向けの宿だ。鍵をかける文化自体がない。


「……じゃ、試してみるか。“英雄”ってやつの実力を」


男はニヤリと笑い、無音で中へと滑り込んだ。


 


* * *


 


「……ん?」


俺はふと、違和感で目を覚ました。


――気配がある。寝ているはずの空間に、もう一つの“呼吸”を感じる。


体が反射的に跳ね起きる。

同時に、暗がりの中で、光を反射する“刃”が飛んできた。


「っぶねぇ!!」


紙一重でかわし、俺は手探りで枕元の短剣を掴んだ。


「おいカイ、レイ、起きろ!! 敵だ!!」


「なっ……マジかよ!? ……っち、もう来たか!」


カイが跳ね起きて構える。だが――すでに侵入者はひとり、部屋の中央に立っていた。


黒衣の男。顔は布で隠されていて、表情は読めない。


「静かにしろ。今回は警告だ。ただの一撃で済ませるつもりだった」


「は? 何が警告だ。勝手に押し入ってきて、刺そうとしておいて……!」


俺が怒鳴ると、男は片手で制すような仕草をし、ボソリとつぶやく。


「……お前たちのような“浮いた英雄”は、消される。それがこの街のルールだ」


そう言って、男は刃を構え――もう一度、飛びかかってきた!


「来るぞ!!」


俺が構えた瞬間――


 


「……遅い」


低くて静かな声が、部屋の隅から響いた。


レイだった。


その手には、漆黒の剣。


まるで闇に溶けるような滑らかな動きで、彼女は刺客の攻撃を“見切り”、逆に切り返す。


シュッ――!


黒衣の男の腕から血が吹き出し、床に赤い線が走った。


「……チッ」


刺客は即座に距離を取るが――レイの剣先は、ぴたりと男の喉元に向けられていた。


「名前」


「……は?」


「名を、言え」


レイの瞳が、まるで氷のように鋭く光る。男はしばらく沈黙してから、かすれた声で答えた。


「“影牙”。黒街〈くろがい〉の一派だ。依頼主は――言えねぇ。言ったら俺が死ぬ」


「なら、倒すだけ」


レイが剣を振りかけた、そのとき。


「……待て! 逃がせとは言わん。ただ、殺す前に訊きたいことがある」


俺が止めると、レイはしぶしぶ剣を止めた。


「“黒街”ってのは……街の裏組織、か?」


「その通り。……あんたら、踏み込んじまったんだよ。“誰かの縄張り”に」


刺客の言葉に、背筋が冷える。


俺たちが討伐で評価されたことで、何かの勢力に“とって変わる”存在として認識された。だから、潰しに来た――。


 


「……伝えとけ。こっちは、引くつもりはない。必要なら、何度でも斬り返す」


俺がそう告げると、男は苦笑しながら頷いた。


「……気に入った。だが覚えとけ、“次”はもっとヤバいやつが来る。せいぜい、死ぬなよ」


そう言い残し、男はレイの剣をギリギリでかわして、闇に溶けるように逃げていった。


 


* * *


 


静けさを取り戻した部屋で、俺たちは肩で息をしていた。


「……なあ、ケン」


「ん?」


「これ、マジでヤベェやつに絡まれたんじゃねぇのか……?」


「……かもな。でも――」


俺は窓の外、まだ夜が深い街を見つめる。


「それでも進むしかない。“守る”って決めたからな。……避難民たちの未来も、この街の中にあるんだ」


カイは眉をひそめ、レイは無言で頷いた。


そして、夜が静かに、明けていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ