第3章 第9話「狙われた英雄」
第3章『街と騎士団』
第9話「狙われた英雄」
――街に戻って、三日目。
俺たちは、セイントラの冒険者ギルド本部に呼び出されていた。
「おぉ、お前らか。話は聞いてるぜ、バジリスク討伐ってな!」
ギルド内の受付にいたのは、ガタイのいい男。歳は30前後ってとこか。肩には傷だらけのプレートアーマー。いかにも歴戦の冒険者って感じだ。
「……アンタは?」
「俺はハルト。ここの登録担当だ。お前らの戦果、噂だけかと思ってたが……本物らしいな」
男は少し唸ると、俺たちの冒険者証を手に取り、ぽん、と机に置いた。
「お前たち三人。仮登録から“準英雄ランク”に格上げだ。バジリスクを討伐した連携と力量……十分認められる範囲だよ」
「マジか……!」
カイが驚き、レイは小さく目を見開く。
ギルドでのランクは、街での信頼そのものに直結する。俺たちは、一人前の冒険者として認められたわけだ。
「ただし――」
ハルトの声が低くなる。
「注意しとけ。お前ら、今……“目立ちすぎてる”」
「目立ちすぎてる、って?」
「この街はな、“急に名を上げる奴”を嫌う連中が多い。貴族、商人、裏稼業……いろんなやつの利権に、意図せず触れる可能性がある」
「……たとえば?」
「たとえば、依頼の横取り。偽の噂流し。最悪、暗殺未遂もな」
「……そんなの、ギルドが取り締まるんじゃないのか?」
「取り締まれねぇよ。法じゃ裁けない“空気”ってのが、この街にはある。忘れんな、お前らはよそ者だ」
重い言葉だった。
だがそのとき――
「でしたら、私を同行させてください」
そう声をかけてきたのは、リラだった。
「君たちを守るのも、私の役目。いま動かれると困る人間がいるのは確か。でも――それは、君たちが“脅威になれる証拠”でもある」
リラの真っ直ぐな瞳に、俺は息をのんだ。
「……ありがと、リラ」
彼女は小さく微笑んで、うなずいた。
* * *
その夜。
俺たちは宿に戻り、久しぶりに休息を取っていた。
外はしんと静まり返り、セイントラの石畳の路地を、月明かりが照らしている。
……その影の中で、一つの人影が、俺たちの宿をじっと見つめていた。
「……あれが、“例の三人”か」
男はつぶやいた。
手には毒針付きの小型のナイフ。腰には短剣。
目元を覆った黒い布の奥で、不気味な笑みが浮かんでいた。
「なら、“試してみる”か。英雄が、本物かどうか――」




