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第3章 第5話「閉ざされた門、開かれた扉」

第3章『街と騎士団』


第5話「閉ざされた門、開かれた扉」


――その日、俺たちは“街”に足を踏み入れた。


 


バジリスク討伐の報告が受理され、避難民の入城が「審議対象」となった。

まだ確定ではない。けれど、街の門は一時的に――ほんの数時間だけ、俺たち三人に開かれることになった。


 


「……これが、セイントラ……」


重い鉄門を抜け、石畳の大通りを歩いた瞬間、思わず立ち止まる。


広い。高い。美しい。


けど――冷たい。


 


街の中は整っていて、華やかで、騎士や商人、市民たちの行き交う声が響いていた。

けれど俺たちのような“よそ者”には、そのすべてが壁のように感じられた。


「視線、痛ぇな……」


カイが肩をすくめながらつぶやく。


確かに。

通りを歩くたびに、誰かの視線が刺さる。好奇の目もあれば、警戒、侮蔑――いろんな感情が混じっていた。


「おい、こっちだ」


クルトが手を挙げて呼んでくる。

俺たちは彼の案内で、街の中央付近にある一つの建物へ向かった。


ギルドだ。


 


冒険者ギルド。

ここに登録すれば、街の中で正式に活動できる身分になる。

つまり、“ただの避難民”じゃなくなるってわけだ。


「このギルドは、街の中でもちょっと浮いてる。騎士団とも微妙な距離感なんだよな。まあ……気にすんな」


クルトがそんな説明をしつつ、受付へ。


ギルドの中は騒がしく、酒と汗と革のにおいが漂っていた。

だが一部の冒険者たちは、俺たちの姿を見てぴたりと動きを止める。


「あれが……」


「試験組? マジでバジリスク倒したのかよ」


「でも……三人とも若ぇな。特にあの女……」


レイを見ながら、ひそひそと何か言ってる声が聞こえる。


 


だが――


レイは何も言わなかった。


いつも通り、無表情のまま、視線すら向けずにじっと前を見ている。

彼女の隣に立ってる俺でさえ、何を考えてるのかよく分からない。だけど、ただ一つだけ感じることがあった。


……すごく、冷静だ。

この街の圧にも、噂にも、一切流されていない。


いや、たぶん――興味すらないんだ。


 


「登録、完了。お前ら三人、正式に“冒険者”だ。これで街で活動できるぞ」


受付の若い男がプレートを渡してくる。

金属製の、セイントラの紋章が入った簡素な証明書。それを手にした瞬間――


少しだけ、自分たちの居場所ができたような気がした。


 


「まずはギルドの依頼をいくつかこなして、街に貢献しろ。審議会での避難民の扱いも変わってくるはずだ」


クルトの言葉に、俺とカイはうなずいた。


「レイ、どうする?」


そう聞くと、彼女はちらりと俺の方を見たあと――


「……ついていく」


小さな声で、それだけ。


 


それだけなのに、なぜだか俺の中には妙な安心感が広がった。


 


――避難民のため、俺たちは動く。

この街で、“仲間”として、生きていくために。


そして次なる依頼は、思いもよらない“少女”との出会いをもたらすことになる――

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