第3章 第3話「若きバジリスク」
第3章『街と騎士団』
第3話「若きバジリスク」
――静寂。それは、嵐の前触れだった。
「……レイ、何か感じる?」
「……いる。さっきより、近い。……来る」
レイの言葉に続くように、森の奥で“バキッ”と枝が折れる音がした。
そして、地面がわずかに揺れる。
――ズル、ズル、ズル。
茂みを割って現れたのは、異形の魔物。
全長は4メートル近い。蛇のように長くうねる身体。
しかし、頭部は巨大なトサカを持ち、鷲のような鋭いクチバシがある。
その瞳は、濁った赤でこちらを見下ろしていた。
「……あれが、バジリスク……ッ!」
「でけぇ……ってか、あれ一匹でマジで街を襲えるぞ」
カイが剣を構える。すでに汗がにじんでいる。
こいつは、並みの魔物じゃない。
「作戦通り、俺が囮になる。レイは準備、カイは一撃を任せた」
「行くよ。影を伸ばす、あと5秒」
「了解、正面は俺が取る!」
俺は、真正面から駆けた。
バジリスクが口を開く。
「ッ! 毒ブレスだ! 下がれッ!」
ドォン、と地面が抉れるような勢いで吐き出された紫の霧。
腐食性の毒ガス。それに少しでも触れたら……。
「《見切り》ッ!」
足元の動きに集中し、風を切るように斜めへ跳ぶ。
ギリギリ、かすり傷もなく回避。
「レイ、今だッ!」
「影縛りッ!」
レイの影が地を這い、バジリスクの巨大な胴体を束ねるように巻きつける。
その一瞬――カイが、踏み込む!
「くらえぇぇえええっ!!!《一撃》ッ!!!」
剣が、バジリスクの鱗を砕いた。
血が飛び散る。しかし……。
「まだ……動くのかよッ!」
カイの渾身の攻撃でも倒れない。
バジリスクは、怒り狂ったように暴れ出した。
影の拘束が破られ、巨体が宙を舞う。
「ぐあっ……!」
俺とカイが吹き飛ばされる。レイも距離を取ったが、これはヤバい。
「レイ、魔石は!?」
「中心部にある。首の奥深く……!」
――届かない。
だが、ここで引くわけにはいかない。
「……渾身突き、試すしかねぇ……!」
痛む身体を押して、俺は立ち上がる。
「カイ、もう一度正面! 奴の意識を引け!」
「おう、任せろ!」
カイが吠えるように突っ込む。
バジリスクの注意が逸れたその瞬間――
「《見切り》発動……からの、《渾身突き》!!」
剣が風を切り、バジリスクの喉元を貫いた。
「――ッッ!!」
手応えが、あった。
骨を砕き、魔石に触れた感触が、確かに……。
次の瞬間、バジリスクの身体がガクンと崩れ落ちた。
……勝った。
「……はぁ……やっと、終わったな」
「っつぅ……ちょっとヤバかったぞ、今回……」
「……でも、生きてる。……勝った」
レイが魔石を取り出す。淡く光る紫の宝石。
「質、いい。これ、騎士団にも評価される」
静かに、確かな達成感が胸に広がっていく。




