第9話
意識が覚醒する。
意識が落ちる前とはまるで違う全能感のようなものを感じる。
「これが、進化」
進化した。
何がきっかけで進化したのかはわからないが、進化により、コンコルディア戦以前の自分よりも何段階を強くなっているのだけはわかった。
個体名:アイシア
種族:不死
性別:♀
異能:亡霊の杯
特性:魂読みの魔眼
魔術適性:水・風・闇
位階:伯爵級
称号:異界の知識をもつ者・プロキオン
私は自分のステータスを確認する。
以前までは読めなかったところも読めるようになっていた。
私か感じている全能感の正体は位階が一般中級からいっきに伯爵級へと上昇したものによるのだろう。
私の知識が正しければ位階はおそらく一般下級→中級→上級と上がったのちに男爵→子爵→伯爵と上がっていくのだろうことが予想される。
この通りであったならば私の位階はいっきに4段階も上昇したことになり感覚に大きな違いがでているのも納得できる。
コンコルディアの位階が男爵級であったことを考えると今の私はそうとう強いのではないだろうか。
【水球】
ヒュン
自身の力がどれくらい変化しているのかを確認するためにもとりあえず使い慣れた魔術を撃ってみた。
魔術を撃ってみてわかったのは私の魔術自体の威力にほとんど変化はなかった。
少し以前よりも威力がでている気がしたがその程度で大きく威力が上がったといえるものではなかった。
だが、以前よりも身体の中を流れる魔力の動きがスムーズになった気がする。
以前までは、障害物の多い川を魔力が流れているような感じだったが、今は川の障害物が減ってより流れやすくなったとでも言うべき感覚だ。
となると大きく変化したのは身体能力だろう。
ためしにこの戦闘を行った空間を走ってみると、明らかに身体能力が向上しているのがわかる。
もしかして、私は武当派なのだろうか?
そんなことを考えてみたり。
そんなこんなで異能については一旦飛ばして次、他にも大きく変化したものがある。
それは肉体である。
この部屋の灯りの近くに寄って水球をだし自分の姿をうつしだす。
以前の私の姿は、黒い人影といったようなものであった。
しかし今は違う。
体の形は人形で、身長はおよそ140cmほど、肌はとても白く、髪は長い白髪、瞳は碧眼、胸は…薄い。
アンデットだからだろうか肌が不健康そうなぐらいに白い。
私も一応は女なんだから意識が生まれた以上もう少し胸は欲しかった。
でもそれ以外はいいのではないだろうか、自分でいうのもなんだが結構美しい造形をしていると思う。
まあ、他に人を見たことはまだないのだが。
とまあ、そんな感じで確認するのは残すところ異能だけになった。
実のところ目覚めたときから異能【亡霊の杯】で出来ることと使い方はなんとなくわかっていた。
出来ることは、
一つ、【霊魂降術】これは、私が殺した生物の魂を杯の中に貯めることができる。そして、その中に貯まった魂を私の魔力を使うことで生前の姿で現実に顕現させることができる。
私がこれまで殺したのはコンコルディアとコウモリたちだけ。
試しにコウモリを顕現させてみることにした。
【霊魂降術】
私の目の前に淡い青い光を放つ球が出現する。
その球に黒い靄が纏わりつくようにしてコウモリの体を形作っていく。
キー、キー
「…できた」
初めて使った異能、なんかちょっと嬉しい。
それにしてもこれまで散々殺してきたコウモリだが、こうやって見てみるとなんだか少し可愛い気がする。
それはさておき、異能の解除は簡単。
心の中で顕現させたものに杯の中に戻るように命じるように願うだけ。
「よし。もどった」
それからコンコルディアの顕現も試してみたが、こちらか何が原因かわからないが顕現するようなことはなかった。
二つ、【葬送】これは魔術やそれに類するもの、おそらく異能も一部であれば霧散させることが出来る。
今は試すことが出来ないが、いずれ試してみたいと思う。
そんなこんなで、進化による変化の確認を一通り終えた私は、ようやく外の世界へと向けて足を進め始めるのだった。