第8話 進化
少し意識が浮上する。
まだ完全に覚醒したわけではない、どこかふわっとした、ぼんやりとした形容しがたい感覚。
『***』
なにかが聞こえてくる。
話声とは言い難い、ただの音といった響きのものが聞こえてくる。
『***』
何を言っているのかはわからないが、何を伝えようとしているのかはわかる。
不思議な感覚だ。
『***』
その音はわたしがどうなりたいか、どうありたいかを問うてきている、そんな気がする。
考える。
私は自分がどうなりたいのか、そしてなにをしたいのか。
考える。
どうして洞窟の外を目指していたのだろうか。
考える。
私は、ただ知識の中の世界に─洞窟の外の世界に憧れただけ。
考える。
どうして外の世界に憧れたのだろうか。
そこにも憧れるだけの何かがあったのは間違いないだろう。
何気ない気持ちで外を目指して歩き始めた。
だが、そこには外を目指させるだけの私の気持ちが必ずあった。
私はそう確信のようなものを持っている。
考える。
考える。
考える。考える。考える。考える。──
──そして
私は、おそらく外の世界に未知を求めたのだろう。
私の知らないもの。
私の知らない景色。
私の知らない食べ物や人々。
なんのために未知をもとめたのだろう。
考える。
その中にある温かみに憧れたのだろう。
記憶はないが、思考を得る前、この温かみのかけらもない、陰気な洞窟を彷徨っていた私は、寂しかったのかもしれない。
いまならそんなふうに思う。
だから、外の世界を求めたのだろう。
そう思うと、急に寂しさが現実味を帯びてくる。
伝える。
「どんなふうに、どうありたいかなんてものはまだわからない。でも、みちをしり、あたたかみをしりたい。わたしはさびしかった。このさびしさをうめるためにも未知を、そしてそのさきにあるあたたかさをしりたい。ただそれだけ」
『…よろしい』
『個体名:ーーの進化に逾槭?繝?え繧ケが干渉』
『逾槭?繝?え繧ケがあなたを個体名:アイシアと命名』
『逾槭?繝?え繧ケがあなたに称号:プロキオンを贈与』
『逾槭?繝?え繧ケがあなたの発話に違和感を検出。逾槭?繝?え繧ケによりあなたの知識に発話情報を紐付けられました』
『進化に伴い肉体を再構築─性別:♀のため肉体を女性型として再構築』
『完了』
『コンコルディアの魂を異能::莠。髴翫?譚ッ─亡霊の杯に取り込み進化、異能の覚醒。よって種族がアンデット種:不死に進化』
『完了』
『:莠。髴翫?譚ッより最後に通告。あなたが天に届くことを望む』
『これにて進化を終了する』