表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

7話 交わる刃

月明つきありとむらやすあかほのおで、ガガは不気味ぶきみらされている。


ガガはかたなてんげた。にぶひか銀色ぎんいろやいば上空じょうくうえがく。


それを合図あいずのように周囲しゅういから兵士へいしたちが姿すがたあらわし、ながやりかまえてイチハとリツをかこんでいく。


八人はちにん兵士へいしたちがえんえがくように配置はいちにつき、ゆっくりと二人ふたりへの距離きょりめていく。それぞれのかおには表情ひょうじょうがなく、まるであやつられているかのようだった。


リツは小林こばやしほうなおり、集中しゅうちゅうした表情ひょうじょうまえした。


小林こばやしまわりのつち波打なみうち、まるで意思いしつかのようにうごき、かまくらのように半球状はんきゅうじょう土壁つちかべとなってかれ完全かんぜんおおった。


「おい、つち防壁ぼうへき小林様こばやしさままもっているが完璧かんぺきではない。まかせる」


リツはつよ口調くちょうでイチハにめいじた。彼女かのじょくろにはるぎない決意けつい宿やどっていた。


イチハは山刀やまがたなさやからき、まわりの兵士へいしたちに警戒けいかいくばりながらかまえる。かれ背筋せすじには緊張きんちょうはしるが、その表情ひょうじょう冷静れいせいそのものだった。


ころせ!」


かたな切先きっさきをイチハにけると、呼応こおうした兵士へいしたちが一斉いっせいやりろした。


しかし、はげしい金属音きんぞくおんがするだけでそこにはだれもいない。


イチハはおよそ5メートルのたかさまで跳躍ちょうやくし、したにいるかれらをするどにらみつけながら、地面じめんかって急降下きゅうこうかする。


着地ちゃくち同時どうじ前方ぜんぽうてきかって山刀やまがたなよこぐ。


前方ぜんぽうにいた兵士へいし2にんするど斬撃ざんげきけ、悲鳴ひめいげられないまま後方こうほうび、うごかなくなった。


のこりの6にんおそいかかろうとしたその瞬間しゅんかん、「せろ!」という女性じょせい特有とくゆうするどこえひびく。


イチハは即座そくざ反応はんのうし、地面じめんにあごをけるほどの低姿勢ていしせいになってかまえる。


真上まうえつちかたまりがいくつもび、兵士へいしたち全員ぜんいん頭部とうぶ正確せいかく着弾ちゃくだんする。つちはリツの意志いししたがって加速かそくし、ハンマーのような衝撃しょうげきあたえていた。


そのまま6にん兵士へいし気絶きぜつしてうごかなくなった。


「おいおい、よわぎんだろ」


ガガはかたなかまえたまま間合まあいをる。かれ暗闇くらやみなかでもあかひかり、その姿すがたつかさどもののように不気味ぶきみさをただよわせていた。


イチハとリツは目配めくばせすることもく、いきったうごきで同時どうじした。


二人ふたりうごきにわせ、リツの能力のうりょくによって地面じめんおおきく波打なみうつ。そのうえかぜってけるイチハ。


渾身こんしん一撃いちげきるうもガガはうしろへ跳躍ちょうやくしながらそれをながす。


ガガは着地ちゃくち同時どうじ足元あしもとよこたわっていた、村人むらびとげた死体したいをイチハめがけてばした。


「ぎゃはっ!」


顔面がんめんめがけて死体したいせまり、イチハは前方ぜんぽう視界しかい一瞬いっしゅんさえぎられる。


上体じょうたいよこにそらして回避かいひし、前方ぜんぽう視線しせんもどすが骸骨がいこつおとこ姿すがたはすでにえていた。


どこだ?


あごしたにチリチリとした殺気さっきかんじる。


ガガは低姿勢ていしせい死角しかくかくれながらちかづいていた。


下段げだんから死体したいごと両断りょうだんする斬撃ざんげきをイチハへびせる。


イチハは咄嗟とっさ山刀やまがたなけたが山刀やまがたな上空じょうくうばされる。


かたまわりがあつい、おそらくられたのだろう。


とどめの一撃いちげきるがリツがななめからし、かたなでガガの手首てくびりおとす。


「っち。やっぱり2にんはきついか」


ガガの足元あしもと手首てくびからした赤黒あかぐろまっている。


しかし、その表情ひょうじょうには苦痛くつういろはなく、むしろ興奮こうふんいろえる。


「まだはあるんだよ!!」


そうって、かたな胸元むなもとから小瓶こびんしてにぎりつぶして小瓶こびんった。


ガガはひかりはなりゅうのカケラをり、それを手首てくびうしなったうで切断面せつだんめんにねじんだ。


もだえ、うめきながらからだふるわせるガガ。くなったはずの再生さいせいはじめ、にく膨張ぼうちょう筋肉きんにくがり、丸太まるたよりふと怪物かいぶつじみたうで形状けいじょう変化へんかしていく。


うでにはうろこえ、ほねのようなつめ何本なんぼんしている。


「くくっ。すごいぞこれは」


そういながら、ひとだったなにかは人間にんげん声帯せいたいではせない怒号どごうのようなさけごえをあげながら突進とっしんする。


イチハはもろにそれをけてばされ、地面じめんたたきつけられいき出来できなくなる。


リツはかまえるもなぐばされ、地面じめんころがる。


ガガはまっすぐに小林こばやしまもっているつち防壁ぼうへきはしってたたこわすためうでげる。


リツはちからしぼってがり、相手あいて腹部ふくぶかたなれた。


ガガは一瞬いっしゅんよろめくが、それでもまらない。


イチハも地面じめんからがり、ちていたやりをつかむと全力ぜんりょくげつけ、巨大化きょだいかしたうでつらぬく。ついにうごきをめた。


人間にんげんからだ変化へんかえられないのか、うで形状変化けいじょうへんかけて、右腕みぎうでしろけむりきながらのようにほそくなっていく。


「くそっ、もうもたねぇか。やれよ」


をつむる。その表情ひょうじょうにはつかれと諦念ていねんわらいがえた。


リツによって防壁ぼうへきからてきた小林こばやしおとこ一瞥いちべつする。


小林こばやし月明つきあかりのしたゆるやかにくちひらく。


そして、一言ひとこと


「イチハ、むらおそった罪人ざいにんです。くびをはねなさい」


イチハは一瞬いっしゅんだけ躊躇ちゅうちょしたが、かたな頭部とうぶへと一閃いっせんした。


地面じめんくずちた身体からだからはいましろけむりめ、次第しだいけむりよわくなると同時どうじ身体からだすなのようになっていった。


ガガのいのち途絶とだえた。


きましょう」


小林こばやしこえに、二人ふたり無言むごんうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ