表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/13

13話 救出

四恩しおんいえ辿たどいたとき、そこはすで戦場せんじょうはしになっていた。


帝国兵ていこくへいとおりを制圧せいあつし、民家みんかはなっている。

住民じゅうみんたちの悲鳴ひめいひびわたる。


四恩しおん!」

イチハがさけぶ。


いえまえには、五人ごにん帝国兵ていこくへいっていた。

そのおくで、四恩しおん壁際かべぎわめられている。


「やめて……」

四恩しおんふるえるこえ


貴様きさまら!」

イチハがかぜまとって突進とっしんする。


帝国兵ていこくへい一人ひとりじゅうけるが、イチハはかぜ弾道だんどうらし、山刀やまがたな兵士へいしせた。


神楽かぐらみぎだ!」

われなくても!」


神楽かぐら雷撃らいげきはなつ。青白あおじろひかり帝国兵ていこくへいつらぬき、三人さんにんたおれる。


のこ一人ひとりけんくが、イチハの一閃いっせんがそのむねつらぬいた。


四恩しおん無事ぶじか!」

「イチハさん……神楽かぐら!」


四恩しおんる。

神楽かぐらかおそむけた。


ねえさん……ごめん」

神楽かぐら……」


四恩しおんいもうときしめた。

神楽かぐら最初さいしょ抵抗ていこうしたが、やがてあねむねくずれた。


「ごめん、ごめんなさいねえさん……わたしわたし……」

「いいの、いいのよ。無事ぶじかった」


イチハはその光景こうけい見守みまもりながら、周囲しゅうい警戒けいかいした。

まだ帝国兵ていこくへいがいる。


二人ふたりとも、いてるひまはない。げるぞ」


「イチハさんかい?」

そこへ一人の男が現れた。

町民の服を着ているがスッとした立ち方と目つきで一般の人ではないと判る


「ああ、俺がイチハだ」

「小林様からだ。これに目を通したら通り沿いの倉庫街に来い」

そういって男は書面を渡した。


イチハはもらった書面に目を通した。

飛翔船ひしょうせんとしてほしい。みなときた倉庫街そうこがいたこ用意よういした。イチハなら出来ると信じている』


たこ……?」


イチハはそら見上みあげた。


飛翔船ひしょうせんが、ゆっくりと旋回せんかいしている。

あれをとせば、帝国軍ていこくぐん指揮系統しきけいとうみだれる。


だが、どうやって。


「イチハさん、なにいてあるんですか?」

四恩しおんたずねる。


飛翔船ひしょうせんとせ、って」


「あのものをどうやって……」

神楽かぐらつぶやく。


たこ使つかう」


たこ?」


「ああ。かぜばして、あれにく」


イチハは神楽かぐらた。


神楽かぐら、おまえかみなりで、あのふねこわせるか?」


神楽かぐら一瞬いっしゅんおどろいたかおをしたが、やがてうなずいた。


「……やってみる」


四恩しおんは、この男に連れてもらって皇都でってろ。かならもどる」


四恩しおんは頷きながら二人ふたりにぎった。


-----


倉庫街そうこがいかうと、そこには巨大きょだいたこ用意よういされていた。


たけ骨組ほねぐみに和紙わしった、ひと二人ふたりれるほどの巨大なおおきさだった。


「これにるのか……」


神楽かぐら不安ふあんそうにる。


ほか方法ほうほうはない」


イチハはたこかつぎ、ひらけた場所ばしょはこんだ。


れ」


イチハが中心に膝をついた態勢で乗り

神楽かぐらも隣に座ってイチハの服を軽くつまんだ。


「離すなよ」


イチハはふかいきんだ。


そして、両手りょうてひろげて凧に付ける。


かぜこった。


最初さいしょやさしいかぜ

たこがふわりとがる。


次第しだいかぜつよくなる。

たこ高度こうどはじめた。


「うわっ……」


神楽かぐらたこ骨組ほねぐみにつかまる。


地面じめんがどんどんとおざかっていく。


家々《いえいえ》がちいさくえ、ひと豆粒まめつぶのようになっていく。


イチハはかぜ制御せいぎょつづけ、飛翔船ひしょうせんへとちかづいていく。


やがて、巨大きょだい黒鉄くろがね船体せんたいまえせまった。


「あそこだ!」


イチハはたこふね上部じょうぶ誘導ゆうどうする。


ゴツンというおとともに、たこ船体せんたい激突げきとつした。


二人ふたり素早すばやり、ふね上部じょうぶいた。


神楽かぐらたのむ!」


「わかった!」


神楽かぐら両手りょうててんかかげた。


そのに、雷光らいこうあつまりはじめる。


い!」


そらひかる。


くも渦巻うずまき、雷鳴らいめいとどろく。


そして──


ガシャアアアアン!


てんから巨大きょだい稲妻いなずまちた。


それは神楽かぐらとおり、船体せんたいへとながむ。


船体せんたいきしむ。

歯車はぐるま火花ひばならし、蒸気管じょうきかん破裂はれつする。


「もう一発いっぱつ!」


神楽かぐらふたたかみなりんだ。


二度目にどめ稲妻いなずまふねつらぬく。


船内せんないから爆発音ばくはつおんひびいた。


何者なにものだ!」


甲板かんぱんから、兵士へいしたちがあらわれる。


その中心ちゅうしんに、奥平おくだいらがいた。


貴様きさまら……しぶといな!」


奥平おくだいらとなりには、巨大きょだいおとこっていた。


身長しんちょうメートルをえ、はがねのような筋肉きんにくおおわれている。

には、イチハの山刀やまがたな三倍さんばいはある長大ちょうだいなブレードをっていた。


「ガイアス、片付かたづけろ」


了解りょうかい


おとこ──ガイアスは、その巨体きょたい似合にあわぬはやさでイチハにせまった。


はやい!」


イチハは咄嗟とっさ山刀やまがたなける。


ガキィン!


金属音きんぞくおんひびき、イチハの身体からだ後方こうほうすべる。


ちからが、桁違けたちがいだ。


ガイアスは追撃ついげきする。

ブレードが横薙よこなぎにるわれる。


イチハはかぜまとって跳躍ちょうやくし、回避かいひする。


ブレードがとおった場所ばしょで、船体せんたいすりが両断りょうだんされていた。


「力比べじゃ勝てそうにも無いか」


ガイアスは無表情むひょうじょうのまま、ふたたせまる。


上段じょうだんからの一撃いちげき


イチハはよこころがって回避かいひ


着地ちゃくち同時どうじ反撃はんげきしようとするが、ガイアスはすでつぎ攻撃こうげきうつっていた。


きがはなたれる。


イチハはかぜかべ軌道きどうらすが、それでもかたかすめた。


「っ!」


にじむ。


「イチハ!」


神楽かぐら雷撃らいげきはなつ。


ガイアスはブレードをたてのようにかまえ、かみなりながした。

やいば青白あおじろひかり、甲板かんぱん稲妻いなずま残滓ざんしる。


無駄むだだ」


ガイアスは神楽かぐらにもおそいかかる。


神楽かぐらけんけるが、その衝撃しょうげき後方こうほうはじばされる。


「くっ……」


神楽かぐら!」


イチハはかぜまとい、ガイアスの背後はいごまわんだ。


山刀やまがたなるう。


だが、ガイアスはきざまにブレードではじく。


小賢こざかしい」


ガイアスのりがイチハの脇腹わきばらたたまれる。


「ぐっ!」


イチハは甲板かんぱんころがる。


呼吸こきゅうみだれる。

肋骨ろっこつにひびがはいったかもしれない。


このままじゃてない。


「おいお前!ねえさんを……かせるなぁぁぁ!」


神楽かぐらさけんだ。


そのに、これまでにないりょう雷光らいこうあつまる。


らえ!」


神楽かぐら全身全霊ぜんしんぜんれいめて、雷撃らいげきはなった。


青白あおじろひかり奔流ほんりゅうが、ガイアスをむ。


ガイアスはブレードで防御ぼうぎょしようとするが、雷撃らいげきいきおいにされる。


「ぬうっ!」


ガイアスの巨体きょたい後退こうたいし、船体せんたいかべ激突げきとつした。


かべくだけ、ガイアスは半身はんしんかべめた状態じょうたいまる。


いまだ!」


イチハはがり、かぜ全身ぜんしんまとって突進とっしんした。


全力ぜんりょく一撃いちげき


山刀やまがたながガイアスの胸部きょうぶねらう。


だが──


ガイアスは片手かたてでブレードをるい、イチハのやいばはじいた。


「まだだ」


ガイアスはかべからき、がる。


その身体からだにはきずひとつない。

いや、よろいした無数むすうきずがあるのかもしれないが、うごきに支障ししょうはない。


つよい……」


イチハは歯噛はがみした。


そのときふねおおきくれた。


神楽かぐら雷撃らいげき損傷そんしょうした船体せんたいが、推力すいりょくうしなはじめている。


奥平おくだいら、このふねはもうたない」


ガイアスが冷静れいせいげる。


「くっ……仕方しかたない、撤退てったいだ」


奥平おくだいらあわててふねはしかう。


ガイアスは奥平おくだいら襟首えりくび片手かたてつかみ、軽々《かるがる》とげた。


「ひいっ!」


したむなよ」


そして──ガイアスは奥平おくだいらかかえてふねからりた。


メートルをえる巨体きょたいが、奥平おくだいらかかえたまま、何十なんじゅうメートルものたかさから落下らっかしていく。


だが、ガイアスは着地ちゃくち瞬間しゅんかんひざげて衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうし、何事なにごともなかったようにはしっていった。


げた!」


神楽かぐらさけぶ。


うか?」


「いや、いまはそれどころじゃない」


イチハは船体せんたいた。


ふねかたむき、落下らっかはじめている。


神楽かぐらつかまれ!」


イチハは神楽かぐらかかえ、かぜ全身ぜんしんまとった。


「これを……みなとふねにぶつける!」


なんですって!?」


「成功すれば最大の奇襲攻撃きしゅうこうげきになる」


イチハはかぜあやつり、落下らっかするふね軌道きどうはじめた。


神楽かぐらも、船体せんたい一部いちぶかみなりみ、爆発ばくはつこして推力すいりょくす。


二人ふたり神能しんのうが、巨大きょだいふねみちびいていく。


けええええ!」


飛翔船ひしょうせんは、みなと停泊ていはくしていた帝国ていこく軍船ぐんせん目掛めがけてちていった。


ドガァァァァァン!


すさまじい爆発ばくはつ

飛翔船ひしょうせん帝国船ていこくせん二隻ふたせきんで炎上えんじょうした。 


爆風ばくふうみなと全体ぜんたいおそう。


帝国兵ていこくへいたちが悲鳴ひめいげてまどう。


「やった……」


イチハと神楽かぐらは、たこって地上ちじょうった。


-----


飛翔船ひしょうせん撃墜げきつい帝国軍ていこくぐんは、動揺どうようした。


指揮系統しきけいとうみだれ、撤退命令てったいめいれいされる。


のこった軍船ぐんせんは、次々《つぎつぎ》とみなとはなれていく。


イチハと神楽かぐらは、みなとのこった帝国兵ていこくへい一掃いっそうしていった。


やがて、みなとから帝国兵ていこくへい姿すがたえた。


わった……のか?」


神楽かぐらつぶやく。


「ああ、わった」


イチハはそら見上みあげた。


よるけようとしていた。


-----


数日後すうじつご皇都こうと


皇居こうきょ謁見えっけんに、イチハはっていた。


皇主こうしゅが、玉座ぎょくざからしずかにかたりかける。


「イチハ、そなたのはたらき、まこと見事みごとであった。帝国ていこく侵攻しんこう退しりぞけ、皇国こうこくすくった功績こうせきはかれぬ」


正人まさとがり、イチハにちかづいた。


「よって、そなたに『かぜ守護者しゅごしゃ』の称号しょうごうと、このけんさずける」


されたのは、うつくしい装飾そうしょくほどこされたかたなだった。


「ありがたく頂戴ちょうだいします」


イチハは深々《ふかぶか》とあたまげた。


謁見えっけんはしで、四恩しおん拍手はくしゅをしていた。


そのかおは、なみだ笑顔えがおでぐちゃぐちゃだった。


そして、小林こばやし優雅ゆうがあるる。


「イチハ、あらためておねがいします。わたしの、いえ──このくにたてとして、これからもたたかってください」


イチハはうなずいた。


「ああ、約束する」


-----

その後、イチハは皇国の守護者として活躍し、四恩は皇都で小さな診療所を開き、人々を癒す日々を送った。


ー完ー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ