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飯と金銭、そして部屋

夕食を食べ終え、寮への帰路。

俺たちが行ったのはカジュアルな、下級貴族向けの場所だった。

それでも孤児院で食べていたご飯より豪華で、美味しかったがどうにも食べづらかった。

やはり貴族が主に使うからなのか、ある程度のテーブルマナーが必要になるらしい。

孤児院で院長や副院長から聞いた話だと、場所によってはドレスコードが必要な店や料理がコースメニューしかない店もあるらしい。

もちろん、値段も貴族向け。

間違っても入らないように、と言われたが他の孤児は羨ましがっていた。


どうやら、この学園の構造的に校門に近づけば近づくほど物価が安くなっているようだ。

上級貴族や王族なども利用する高級店は学園の奥、もしくは中央に固まっており、移動に時間がかからないようになっているようだ。

その分、貧乏貴族や平民はある程度苦労するのだろう。

俺たちのような孤児院出身者は国から手当てが出ているらしく、1年間の生活費として1人頭金貨50枚も貰っている。

前世換算だと大体150万円ほどだろうか。

家賃や光熱費、税金などを気にしないのならば、1年程度なら余裕ができる金額だ。

高額な金銭がかかる教科書などは配られる上、勉強のための図書館や筆記用具、ノートなども無償で使えるので孤児院の頃とは比べ物にならないくらい勉強がやりやすい。

孤児院では基本、聞いて覚えるか貴重な紙に書いてあることを覚えるかの二択だった。

しっかりと授業を聞いて、予習復習をしていれば成績に問題はないだろう。


美味かった美味かったと騒ぐハンスとそれをたしなめるフィラソピアを横目にそんなことを考えていたら、後ろから馬車が走ってきた。

その馬車は家紋こそ見えなかったものの、一目で貴族のものであるとわかる豪華さを誇っており、4人ほどの護衛が馬で連れ添っていた。

恐らくは相当な上級貴族、もしくは他国の貴族なのだろうか、少なくともこの時間に外から来るというのは中々珍しい。


フィラソピアが学園の外にも貴族向けの店がある、と言ったところ、ハンスが中にいたのは金髪の美少女とイケメン、あとおっさん2人で4人だった、と言った。

あの一瞬で馬車の中の人数とある程度の容姿が確認できていることに驚くが、それ以上におっさん2人ということに引っかかる。

とはいえ、豪華な馬車に乗っている人ならば中に誰が乗っていようと孤児である俺たちとは関係はない。

学園としても平民ならともかく、孤児と上級貴族を一緒のクラスにすることはないだろう。


そんな話をしながら部屋に戻り、風呂に入る。

なんと、この寮にはシャワーが部屋ごとについているのだ。

孤児院では水に濡らしたタオルで拭くだけだったのに比べ、温水が出るシャワーがある。

どうやら魔物から得られる魔原石とやらを加工して作ったものらしい。

本来ならば希少なもののはずだが、やはり迷宮都市、魔物由来の素材なら一般家庭にも流通しているらしい。

院長たちがいたころはまだなかったようで話には出てこなかったため、うれしいサプライズとなった。

シャンプーやリンスなんてものはないが、石鹸はあるので十分すぎる。

とはいえ、髪が長いと消費もバカにならないので少し短くすることを考えないといけない。


ゆっくりとシャワーを堪能し、全身をくまなく洗う。

さすがに鏡はついていない。

しかしながら何度も言うが十分すぎるのだ。

この世界で、温かい水を、シャワーを浴びる事自体初めてなのだから、それで十分幸せを感じられる。

ふと、2人部屋だったことを思い出した。

俺ともう一人、誰かが来ると思っていたが、いつ来るのかわかっていない。

とはいえ試験日までにはここに来て、荷解きをするはずだ。

さすがに今日中には来ることは無いだろうが、明日明後日辺りにくると考えれば、今のうちに自分の荷物を整理して、同室の誰かが荷解きしやすいようにしたほうがいいだろうか。

しかし、もう夜中だ。

ここは寮なので他の人もいることを考えるならば明日に回したほうがいいだろう。

考えをまとめたところで風呂を出て、体を拭く。


するとコンコン、と部屋の扉をノックする音が響いた。


始めは、ハンスだと思った。

前世の感覚的には9時過ぎぐらいの、現世の日の出と共に起き、夜はすぐに寝る庶民感覚では十分真夜中な時間帯。

普段なら絶対に訪ねて来ない時間に、何かトラブルか、いやシャワーがわからないのかもしれない、と安易な考えをしてしまった。

それどころか、ハンスはお湯を浴びること自体、初めてのはずだ。

たまに水を沸かしてそれで体をふくこともあったが、どうしても人数的に冷めてしまいぬるくなる。

それに比べるとシャワーはびっくりするだろう、そんなことを考えてしまった。

だからこそ、体を拭いている最中の、タオルを首からかけただけの、真っ裸ともいえる姿で扉を開けに行った。

行ってしまった。

考えなかったのだ。

想像も、想定も、可能性すらも考えていない。

そこに立っているのはハンスではなく、今日来ることはないと高を括っていた同室になる人類がいる、なんてことを。


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