魔法の存在
さて、転生してから約6年がたった。
今の俺は11歳、あと少しで12歳になる。
あれから少したって、俺は孤児院に保護された。
話を聞くに4年ほど前、当時8歳ほどの王女だか王子だかがこの街にお忍びで遊びに来た時に俺のようなストレートチルドレンを見つけて心を痛めたらしい。
それを親に訴えた結果、国の金で孤児院が作られ、この街だけじゃなく王都や近辺の大きな街にいたストレートチルドレンは全員お縄につき孤児院へ強制収容だ。
強制収容とは言ったが、孤児院のほうがストレートチルドレンの暮らしよりも環境が良い。
今までは寝る場所も、飯も、服も、文字通り何もなかったのが手に入り、人間として正しい、文化的と云うべき生活ができている。
始めは不正と天下りの温床だと思って逃げまわった労力を返してほしい。
捕まった時は孤児院での労働からの奴隷行きも覚悟したが、意外なことに細かな所まで管理が行き届いていた。
俺が暮らしている孤児院の院長は平民出身の元騎士(貴族?)らしい。
もう髭が生えて少しぽっちゃりとし、ガタイの良さが見え隠れするお爺ちゃん一歩手前のおじさん。
ただし、元騎士だからなのか俺が望んでいた魔法を使えるらしく、俺の年齢や誕生日を教えてくれた。
名前はやっぱりついてなかったので好きに呼んでもらうことにした。
そんなことよりもその魔法を教えてほしいな~?
…ダメ?…あっ、ダメですか…はい。
副院長は平民出身の元メイド。
院長と同じく中々いい歳のおばさんで、院長とは違いすげえ細い。
力入れたら折れそうだなーって思っていたら大量の本が入った重い箱を軽々と持ち上げる。
背が高いわけではないのに、高い場所まで掃除が行き届いていて不思議に思っていたら、掃除するときに杖を使って物を持ち上げたりしていた。
副院長も魔法が使える、というか院長よりもよく使っている。
もちろん、教えてはもらえない。
この2人は元から知り合いらしく、親しげに話しているところをよく見る。
どうやら王様たちは子供のおねだりの理由付けの一つとして歳で働くのが難しい使用人や騎士の天下り先に孤児院を使っているらしい。
元々メイドは接客もするし、騎士道精神が存在しているのか、この二人の個人的なことかもしれないが、元スラムの孤児を相手に働くことが苦ではないようだ。
そのついでなのか孤児院に属する孤児のみに対して文字を教えていた。
新聞が出回っているので識字率が高いと思っていたが、実際はそうでもないらしい。
都市部にある人間や商人などは理解できているが、田舎に住んでいる人間や下働きの人間などは正しく読めていないことが多いそうだ。
俺が新聞を拾えていたのは色町に行っていたお偉さまが適当に捨てて、それが流れてきていただけのようだ。
そんな文字を孤児院で教えるのは国に対して忠誠心を持たせ、下働きにでもしようとしているのだろう。
そんなことで文字を学んだり孤児院で手伝いをしたり、魔法について探りを入れたりとのびのび暮らして、12歳になった時に院長から魔力検査をする、と言われた。
ようやく魔法を学べるのか!と思ったら平民の6割は魔力を持たず、3割は魔力を持っていても魔法は使えず、残りの1割だけが魔法を扱える魔力を持つらしい。
そして、その1割を探すために10歳になった子供は一律で魔力検査を受ける。
どうやら孤児だった俺たちは他の10歳を超える子供を優先していたらしく、若干遅れてしまったらしい。
それが理由なのかまとめて王都で受けることになっていたらしい。
路地裏でスリや暴力におびえず暮らせて、魔力検査を受けられるだけで上々だ。
ところで院長?魔力ってなに?
院長曰く、魔力とはかつて人類が魔物に負け、窮地になった時に神様から与えられたものらしい。
魔力を与えられた中でも、優秀だった人間はハイヒューマンと呼ばれ、英雄視されるようになった。
その英雄たちが家を持ち、壁を立て、人々を守り、今の国の土台を作り上げた。
その英雄の血を引き、俺たち平民を導いているのが現王族。
さらに、王族の分家や別のハイヒューマンの血を引いているのが貴族、祖先にハイヒューマンが居た可能性があるのが平民である。
神から魔力を与えられたのは人族を含め5種族、それぞれの種族に1人のハイヒューマンが居て、全員が短命だったらしい。
そして5種族である人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、不死族のことを人類と呼ぶらしい。
ちなみに人口としては不死族が圧倒的1番少数で、エルフが2番目に少なく、3番目がドワーフ、獣人と人族が同じくらいだ。
なぜエルフや不死族が滅んでないのか聞いたところ、寿命が人族の10倍は長いらしく、出生率がどれだけ低くても死亡率との割合が取れているかららしい。
100年以上前のハイヒューマン揃っていた時代を実際に生きていた人もいるし、各種族のハイヒューマンの中でもっとも長く生きたのはエルフだった、とのこと。
院長と副院長はそのハイヒューマンを遠目に見たことがあるっていうからまたびっくり。
あの時は圧倒された、とは院長の言葉、副院長はこれぞまさしく英雄なのだと感じた、とのこと。
院長たちの話し方や希少性から簡単に会える人物でないのは言われなくともわかる。
そんなハイヒューマンを見たことがあるってことはもしかしなくても元王宮勤めだったりするのだろうか。
そんなちょっとした昔話で盛り上がった次の日、俺は魔力検査をするために同じ10歳以上の孤児'sと共に王都へ行くことになった。




