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共存とは

次の日、今は大体午前5時30分ほど。

夏が近くなって来たため日の出が早く、この時間にはもう窓の外に見える空が茜色を帯びている。

この世界の時計は前世のものと違う。

24時間の区切りではないのだ。

30分を1時間とする48時間、それが今の生活なのだ。

慣れないうちは相当混乱したが、10年も経てば十分になれる。

その為、この世界基準で言うなら今は11時になったばかりだ。


カーテンを開け、水を飲んでから改めて部屋を見渡す。

昨日来たアクトはまだ寝ているようで、メイドはいない。

おそらく昨日が初日だったため、荷物を運び入れるためのメイドだったのだろう。

朝食の下準備だけして、着替えてからランニングに出かける。

これから暑くなっていく時期ではあるが、まだまだ冬の気配は残っており、この時間帯だと肌寒いくらいの体感温度。

天気も雲がちらつくほどで、雨は降りそうにない、いい天気といえるだろう。

大体45分ほどランニングをしてから寮に戻り、軽くシャワーで汗を流す。

孤児院では井戸の水を頭からかぶるだけで、この時期はまだ寒かったのだが、シャワーがあれば関係ない。

ここまで手軽にお湯が浴びられて、使えなくなってもすぐに交換できるなんて、孤児院では考えられないくらいの贅沢だ。

シャワー中、物音がした気がするがシャワーから出た後もアクトは寝ていた。


6時30分を少し過ぎて、朝食を作る。

ランニングの帰りに寮の冷蔵室から取り出した卵とベーコンを焼きながらパンを軽く焼き、トーストにしておく。

卵はスクランブルエッグに、ベーコンはカリカリにして、真ん中に軽い切れ目を入れたトーストを二つに折る。

折ったトーストの真ん中にスクランブルエッグとべ―コンを挟み、皿がなくとも食べられるようにして食べる。

二口コンロのため、パンを焼きながら卵やベーコンの調理ができる。

その上、火を起こさずとも良くて、薪もくべなくていい。

魔道具のおかげで調理が楽で、とても楽しい。


匂いに釣られたのか、アクトももぞもぞと起き始める。

俺が食べているのをみたからなのか、僕の分も作ってくれ、とリクエストされた。

やはり貴族だからなのか、自分で料理をしたことは無いようだ。

初めから2人分用意していたのでサクッと作ってアクトに渡す。

顔を洗ってきたのか、しっかりと目が覚めている様子のアクトが礼を告げながらパンをほおばる。


こう言っては何だが、アクトは女にしか見えないような美貌を持っている。

特に寝ているときの油断した顔は女性にしか見えない。

俺の中身がいい歳でなかったら手を出していたかもしれないと思うほどに美人だ。

政治的なごたごたになったのは、そこらへんも関係があるのだろうと考える。

ラインを超えるような話をして地雷を踏みに行くようなことはしないが、下手に部屋から出すと危ういかもしれない。

同室の俺の責任にされても困るため、寮の中だけでも警戒はしておこうと思う。


これは前世ではなく、孤児院の経験から学んだことだが、他人と暮らすにはコツがある。

相手を気にかけながら、構いすぎないことが大切なのだ。

気を使うのではない、気にかけるのだ。

相手のことで行動を変えるのではなく、相手の状態を見て行動する。

自分がやりたいこと、したいことをしながら、相手に干渉しないようにする。

下手に気を使って干渉するよりも、適度な距離感でお互いにくつろいでいるほうが居心地がよかったりする。

お互いが居心地のいい空間にするために、関わりすぎない。

これこそ共存というべき暮らし方だと思っている。


朝食を食べ終わり、お茶を飲みながらアクトと軽い雑談をする。

今日の予定はほぼなく、部屋の整理と試験勉強だけしてあとは図書館にでも出てのんびりするつもりだと伝えると、アクトは試験の内容についてある程度教えようか、と提案してくれた。

実技はもちろん、座学も少し不安があったのでその提案に飛びつき、取引として言われたお昼と夕飯の提供を快く受け入れる。

部屋の整理をしながらアクトに好きな食べ物や、食べたい物があるかを聞く。

匂いや癖が強くなければなんでもいいと言われたので何にしようか悩む。

この国ではパンや麺類が主食で、日本のような米は少ない。

一度だけ孤児院に居たときに市場で見つけて衝動買いして食べたが、どうにも質がよろしくなかった。

どうやら北にある不死族の国、ザンジウグが米主体の食文化になっているらしくステイアイズに入ってくる米はどうしても品質が悪くなるとか。

どうにか質のいい米が売っていないか、街に買い出しに行くときに探すことにする。


部屋の整理が終わり、簡単な昼食を食べ、いよいよ試験に向けての勉強。

子供の体での勉強は苦ではないが、適度に休憩をはさむ。

覚えようと思えば覚えられるし、長時間座っていても体に痛みが来ない。

ある程度年を重ねると徐々に体がつらくなっていくのだ。

健康を意識していって損はない。

そんなことを思いながら、アクトに言われた例題を解いていく。

解き終わってわかったことだが、勉学に関してはアクトに学ぶことはほぼなかった。

細かな間違いやミスはあったが学力的にはアクトと俺はあまり変わらなかったらしい。

そんなわけで実技、魔法と体力の話になった。

体力には自信があるが、魔法に関しては簡単なものを少しだけ使ったことがある程度。

だと思ったら魔法に関しては魔力測定をするだけだと言われた。

つまり、試験に向けてやることはほぼないらしい。

予定は狂ったが、買い出しに行ったあと、フィラソピアやハンスを紹介し、のんびりと貴重品である本を読み、夕飯を作り、早めに床についた。


前世では勉強をするのは受験時くらいだったが今世では積極的に学んで行く。

魔法を覚え、功績を作り、金を手に入れ、引きこもって悠々自適に暮らす。

地位や名声もおまけ程度についてくれば御の字。

この学園で俺の夢への二歩目を作る。

今のすべてはそれでいい。


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