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20/21

変化するもの

ちょっと本業の仕事が忙しくなってきたため、更新を週1回(火)のみに変更させていただきました。すいません…。

 当事者として砦への同行を求められた舞はアルフレッドと共に砦へと向かう。先に到着していたマティアスとイリス、加えて舞に助けられた担当官が入口で二人を迎えた。

「あいつらはどうしてる?」

 舞が捕らえた男達は5名だったが、全員を別々の牢に入れてあるというマティアスにアルフレッドが少し考えるように黙り込む。

「アルフレッド?」

 どうしたのかと舞が声を掛ければ、アルフレッドが「ひとまず部屋に入ろう」と言う。確かに立ち話で済ませる話ではない。

 5人が砦の中の応接室に入ると、アルフレッドが人払いをする。

「マティアス、彼らの国籍はディルラインで間違いないか?」

「はい、名前と出身地を確認しましたところ、ディルラインの国民で間違いありません」

「マイ、彼らを見つけた時の状況を教えてくれないか?」

 そう言われたマイが彼らを見つけた時の事を説明する。その後、舞の説明を補足するように担当官があの状況について説明をする。

「つまり、奴らが商品を持ち込もうとした時に今後の対応について説明したところ、言いがかりをつけられたという事か?」

 まだ実際に検閲が始まっていないとはいえ、周知のために砦の関連部署には今後の対応変更についての説明書が壁に張られ、担当官も口頭で説明を初めていたのだ。

 それを聞いた彼らが自分達の商売が邪魔されると思い、偶然砦の外を歩いていた担当官に絡んできたということらしい。

「そんな事してもどうにもならないでしょうに…。頭が悪いにもほどがあるわね」

 舞が厳しい声でそう言うと、その場にいる全員が同意するように頷く。

「とにかく今回の件についてはディルラインに正式に抗議するが、彼らの処分については担当部署に任せよう。その際、今と同じ説明をしてもらうかもしれないが、よろしく頼む」

 王太子殿下に直接言われた担当官が緊張した面持ちで「かしこまりました」と答えると、アルフレッドの指示で自分の部署へと戻っていった。

「それで?正式に抗議ってどうするの?」

 舞が首を傾げながらアルフレッドに尋ねると、彼は当然と言った表情で彼らの処遇について答えた。

「国外追放の上、今後セントクライスでの商いは許可しない。もちろん入国させるつもりもない」

 相手が王侯貴族ではないにしても、自国民でない以上は勝手に処分するわけにはいかない。だが彼らの言い分と態度から、セントクライス国内で随分とあくどい方法で稼いでいたに違いない。それならばセントクライス内で商売をさせないのが一番だろう。他の仲間が同じ事をするかもしれないが、少なくとも今後同じ事をしたら許さないという意思表示にはなるはずだ。

「そうね、こういった事は完全に無くすのは難しいもの。その都度対応するしかないわよね」

 それでもアルフレッドが王族としてディルラインに正式抗議するなら、多少の抑止にはなるだろう。

 上手くいけば、今回の件の抗議と一緒に今後のセントクライスの対応について説明することで、ディルライン向けの周知が進むかもしれない。

(まぁ、そんなに上手くいかないとは思うけど…)

 そんな事を思いながらアルフレッドを見れば、3日後に舞から説明をする内容について関連部署に通達を出すよう指示をしていた。

「マイ、ここはもう大丈夫だ。協力してくれて礼を言う」

「そう?大した事はしていないけど…じゃあ、もう少し街を見て回ってから帰るわね」

「良かったら一緒に行ってもいいかな?」

 どうやらアルフレッドの方も必要な連絡等が終わったらしい。舞がマティアスとイリスを見ると、二人共いい笑顔で頷く。

(いや、その笑顔怖いんですけど…)

 だからと言って特に断る理由もない。ただ…アルフレッドの態度に慣れなくて、舞が勝手に気まずくなっているだけだ。

「…いいけど」

 断る理由が見つけられない舞が了承すると、椅子から立ち上がったアルフレッドが舞をエスコートするように手を差し出した。

「お手をどうぞ?」

 楽しそうに自分を見つめ、差し出された手に舞の頬が僅かに赤くなる。

「街を歩くだけなのに大袈裟よ」

 そう言って手を取る事なく扉の方に向かって歩き出してしまった舞に苦笑しながら、アルフレッドは彼女の後を追ったのだった。




 そろそろ夕飯の支度を始める時間帯に入って来たのか、道行く人々の足取りが少し早い。食材を売る露店の前には人々が集まり、酒を提供する店からは賑やかな声が聞こえてくる。

「いい街ね」

 周囲の喧噪を楽しそうに見ていた舞がぽつりと呟く。それを聞いたアルフレッドも口元に笑みを浮かべながら、「そうだな」と答える。

「…元の世界でね、いろんな国へ行ったの。行く先々で素敵な物や風景を沢山見たし、そこでしか食べられない美味しい物も沢山食べたわ。でも、一番楽しかったのはね…そこに住む人々の笑顔を見てる時だった」

 突然語られる舞の言葉にアルフレッドは黙って耳を傾ける。

「…それだけは…この世界でも見られるのね」

 どこか遠いところを見るように目を細めた舞の表情に、思わずアルフレッドは舞の手を掴んだ。

「アルフレッド?」

 突然手を掴まれた彼女が驚いた表情で振り返る。その瞳の中に確かに自分の姿が映っている事に安堵したアルフレッドが深い、溜息を吐いた。

「…すまない…マイが…どこかに行ってしまうような気がして…思わず…」

 俯いて言葉を濁したアルフレッドに舞が苦笑する。

「ねぇ、アルフレッド」

 名前を呼ばれ、はじかれたように顔を上げたアルフレッドを舞が少し困ったような表情で見ていた。

「3日後、私の仕事が終わったら…少し時間を貰える?」

 そう言った舞の手がほんの少しだけ、自分の手を握り返してくれたような気がしたアルフレッドはそれに力を貰ったように頷く。

「もちろん、マイの為ならいくらでも。その時には俺達の仕事も終わっているはずだから、一緒に夕飯を取ろう。その後で時間を作るよ。いいかな?」

 本当は仕事が終わった時点で、すぐにこの国から離れるつもりだった。だが、何故か今はそうする気が起きなかった。だからアルフレッドの提案にそのまま「いいわ」と答えると、舞はそっとアルフレッドの手から逃れるように掴まれた手をそっと振り解いた。

「そろそろ帰りましょうか?」

「そうだな」

 いつの間にか大分空が暗くなってきたのに気づいた二人は、ゆっくりと宿に向かって歩き出したのだった。

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