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19/21

予想外の展開

今年のGWは読書三昧してました(^^)

色々気分転換できたところで、更新再開です。またお付き合いいただけると嬉しいです♪

 その夜、アルフレッドが昼間の男達について説明をしたいというので舞が彼の部屋を訪れると、そこにはマティアスとイリスはもちろん、オスカーの姿もあった。

 オスカーと面識の無い舞がアルフレッドを見ると、アルフレッドが二人を紹介する。

「マイ、彼はセントクライスの宰相を務めているオスカーだ。今回の件について王都側の手配を色々と頼んでいる」

 アルフレッドに紹介されたオスカーは舞に向かって一歩踏み出すと、綺麗な所作で王家に対するものと同じ礼を取る。

「聖女様、初めてお目にかかります。オスカー・ルストと申します」

「初めまして、水沢舞です。今回の件、王都側の手配をしてくださってありがとうございます」

 アルフレッドから王都側の手配については問題ないと聞いていたが、この国の宰相が関わっていたなら、確かに安心だ。

(それに…若く見えるけど、相当な切れ者ね)

 元の世界でも経済界で話題になるような若手社長のような雰囲気を感じるな、なんて思っているとアルフレッドが全員に席に着くよう促す。

 イリスが全員分の紅茶を入れてから席に着くと、アルフレッドが昼間のトラブルについて話し始める。

「舞が捕らえた男達は予想通りディルライン王国の者達だった。どうやらセントクライス側の規制が厳しくなるという通達を受けた男達が、その通達を行った担当者を襲ったということらしい」

「…単細胞すぎない?」

 あくどい商売のための知恵は回るクセに、と呆れた声で呟いた舞にアルフレッドも苦笑する。オスカーはそのトラブル自体を今聞いたのか、難しい顔をしながら手元の調書らしき書類を見ている。

「何か気になる事でもあったか?」

 アルフレッドが会話の矛先を向けると、オスカーが「大した事ではないのですが…」と前置きした上で口を開く。

「我が国から輸出をする、という点においてはこのまま対策を進めて問題ないでしょう。しかし今後他国から持ち込まれる物資の検閲の方法についてはもう少し配慮が必要かもしれません。そうでないと、現場で検閲をする担当官が今回のように標的になってしまいます」

 オスカーの最もな指摘にアルフレッドが「確かにな」と呟く。

(確かに…まさかこんな直接担当官に暴力が向けられるなんて思わなかったわ…)

 制度として考えるばかりで、今の世界に合わせる注意が足りなかったかもしれない。ここは元の世界のように法制度がきっちり整った世界ではないのだ。

「ねぇ、アルフレッド」

 少し考え込んでいた舞の言葉に全員の視線が舞に集中する。

「1つ、提案があるのだけど…」

「何でも言ってみて欲しい」

 無条件で自分の話に耳を傾けてくれる彼に舞が少しだけ笑みを見せる。そしてアルフレッドとオスカーに一度視線を向けた後、自分の考えを話し始める。

「相手国にも保証とまではいかなくても、ある程度の品質を担保した商品を受け入れたい、と伝える必要はあると思うの。ただ、伝えたからといって相手がその通りにしてくれるとは限らないでしょう?」

「確かにな」

「だったら、相手国にも利があると思わせればいいのよ。例えば、検閲には相手国に係員にも入ってもらって、相手国の商品を検閲してもらうの。彼らの検閲で『本物』または『良品』であると判断されたものは、手数料という名目とかで一定の金額を払うの。その代わり、それが後に偽物だと判明したら倍の金額の罰金を支払ってもらうとか。加えて、彼らの仕事を見ながらこちらの担当者も真贋を見極められるようになれば今後のためにもなるでしょう?」

 舞の提案を聞いたアルフレッドが少し考え込む。

「良い案だと思うが、それではこちらが払う手数料の負担が大きくなっていく可能性がある。無限に手数料を払うわけにはいかない」

「うーん…それもそうね…」

 アルフレッドの指摘に舞が同意すると、オスカーが「いえ、それでいきましょう」と言った。

「オスカー?」

 怪訝そうに自分を見たアルフレッドにオスカーが良い笑顔を見せる。

「相手国だけでなく、我が国にも適用すればいいのですよ」

 オスカーの説明は次のようなものだった。


 お互い、検閲の担当者が品質保証をした商品を輸入する時には一定の手数料を支払う。だが検閲後の商品が偽物または不良品をわかった場合は罰金を支払う。

 支払う手数料については導入時の期間限定で相手国の方が多く受け取る設定にするが、その後は同率にする。


「こちらから一方的に支払えというわけにはいきませんからね。そこは導入時の期間限定で相手国に利があるように設定しましょう。それに導入当初は一定数偽物や不良品が出回るでしょうから、ある程度罰金と相殺される事を考慮すれば、莫大な支払い金額にはならないはずです」

 その辺の細かい調整は、これから外交関係の部署と連携して相手国と折衝してく必要があるだろう。

「…なるほど。確かに相手に有利な条件を導入時の期間限定とすれば、無条件に支払い続ける必要もないか」

 オスカーの提案を吟味するように考え込むアルフレッドを見ながら、舞は彼らの頭の良さに舌を巻いた。

(流石というか何というか…)

「そこで殿下、お仕事です」

 唐突なオスカーの声に不穏な物を感じたのか、アルフレッドが嫌そうな表情を見せる。経験上、オスカーの笑顔と面倒事はセットだと分かっているのだ。

「…なんだ?」

「相手国との折衝のための細かい条件等は私の方で外交担当者と纏めましょう。殿下はそれを持ってディルライン王国に行き、条約を交わしてきてください。あぁ、もちろんこの案を出してくださった聖女様もご同行いただきたく」

 後半の言葉に今度は舞が驚きの表情でオスカーを見る。

「えっ、何で私も!?」

「今回の件は最初から聖女様の提案だと伺っております。そして今回の検閲関連の取り決めについても聖女様のご提案ですから、是非殿下の補佐として一緒に行っていただければ安心というものです」

 オスカーの言葉を聞いたアルフレッドがちらりと彼を見ると、彼がほんの僅か自分に向かって頷いた。

(そういうことか)

 オスカーは舞の提案に乗る形で、これ幸いと舞がアルフレッドと一緒に行くしかない状況を作り出したのだ。

(やはりあいつは敵に回したくないな…)

 内心で苦笑しながら、アルフレッドはありがたくその話に乗る事にする。

「確かに、この計画を進めている俺が直接訪問して話を取りまとめてくるのが一番早いだろう。オスカー、条約の内容が決まり次第知らせてくれ。舞、そういうわけだからもうしばらくこの計画の為に付き合ってくれないか?」

 舞ならば自分が言い出した事について途中で放り出すような事はしない。だからこそ自分たちの提案に頷くだろうという確信があった。

 そしてそれは間違いなかった。

「…わかりました。同行させていただきます」

 がっくりと肩を落とした舞に苦笑しながら、アルフレッドは舞との追いかけっこが回避できた事に安堵する。

 そうして今後の方針が決まったところで、オスカーが舞の前に小さな懐中時計のようなものを差し出した。それは、以前アルフレッド達に渡したものと同じものだった。

「これは?」

 不思議そうに渡された物を見た舞に、オスカーが機能を説明する。

「これに魔力を流すと、聖女様の居場所が私とクレメンス長官に分かるようになっています。万が一のためにお持ち下さい。殿下達にも同じものをお渡ししております」

 オスカーの言葉にアルフレッド達が小さく頷く。

 城に戻るつもりはないし、この先どうするかも決めていない。しかし自分を心配してくれているのは確か。その気持ちを無碍にするのも躊躇われて、舞は「わかったわ、ありがとう」と言って受け取った。少なくとも今回の件が全て終わるまでは彼らと連絡が取れなくなる状況になるのは好ましくないだろう。

「では、国内のスケジュールについては大きな変更はないが、ディルライン王国との折衝についてのスケジュールはオスカーに任せる。決まり次第知らせて欲しい」

「かしこまりました」

「マイ、よろしく頼む」

 ほんの少し申し訳なさそうな表情でそう言ったアルフレッドに舞は苦笑しながら「わかったわ」とだけ答えた。

「では、もう夜も遅い。今日はこれで解散にしよう。オスカー、すまないがもう少しだけ残ってくれ。別件で相談がある」

「承知しました」

 そうして全員が自室に引き上げると、アルフレッドとオスカーだけが部屋に残った。

「オスカー、助かった。礼を言う」

 舞を引き留める事に成功した事を言っているのだろう。それを聞いたオスカーが「我が国にとっても大切な御方ですから」と笑みを見せる。

「今回は思わぬ提案が聖女様からされたおかげで、ディルラインを公式訪問していただく事になりそうですが、念のためこちらもお渡ししておきます」

 そう言ってオスカーがテーブルの上に置いたのは、アルフレッドの身分を偽るための書類などだった。

「身分を隠して動く必要がある場合にお使いください。ただし、くれぐれも私が言った事をお忘れなきよう」


『どこにいようとも必ず連絡が取れる状態でいてください』


 この国の王族として当然の事ではあったが、身分を隠して他国で動くとなると色々と不都合が起きやすい。

 十分に注意するよう言い含めるように言うオスカーにアルフレッドは大人しく頷く。

「それでは殿下、私は城に戻ります。申し訳ありませんが送っていただけますでしょうか?」

「わかった、色々とすまないが、よろしく頼む」

「お任せください」

 アルフレッドはオスカーを城に転移させると、自分以外の気配がなくなった部屋で安心したように溜息をついた。

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