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秘密の特訓

 その夜、舞の部屋では秘密の会議が行われていた。

「ね、リン。アルフレッドがどうして私の位置を正確に知ることができるのかわかる?」

 昼間アルフレッドに聞いても教えてくれなかった方法も、聖獣であるリントヴルムならわかるのではないかと思って聞いてみる。

 するとリントヴルムから『簡単なことだ』と答えが返ってくる。

「え、どうやってるの?」

 舞の問いかけにリントヴルムが『窓の外だ』と答える。そう言われて窓の外を見てみたものの、夜の闇が見えるだけで変わった事はない。


『…おそらくイトアの街を出たあたりからだろう、後をつけられているぞ』


「え…それって誰に?」

 姿が見えない相手とか怖すぎるんですけど!と思わず叫びそうになるのを我慢して指輪に隠れたままのリントヴルムに問いかける。

 本当は外に出してあげたいが、いつどこでアルフレッド達に見つかるかわからないため、ずっと隠れてもらっている。


『おそらくあの男の使い魔だろう。あれほどの魔力があるなら、自然界の動物を従わせるなど簡単なはずだ』


 つまり、その辺にいる動物がアルフレッドの目となって舞を追ってきているということらしい。それは流石に気づけない。

 最初の街であるイトアの街を出た時に聖女の魔力で見つけられたあと、ずっとつけられていたのだとすれば、使い魔の主であるアルフレッドが正確に自分の位置を把握できるのもわかる。

「それってリンがなんとかできたりする?」


『基本は単純な主従関係だからな。我が干渉することはできぬ』


 一度見つかってしまえば、ずっと自分の居場所を把握されてしまうという状況に舞が頭を抱えた。

「GPSよりたちが悪いじゃない…。そこまでして聖女が必要なの?」

 この街の問題同様、聖女などいなくても、いくらでも国を栄えさせる事はできるのではないだろうか。それまであったものを失うのは怖いかもしれないが、毎回こんな事をしていては万が一聖女がいなくなった時どうするのか。


『マイの言い分もわかるが、この国の者達に急に聖女のいない世界に慣れろというのは少し酷かもしれぬな』


 まぁ、確かに。人間、便利な物に慣れてしまうと無かった頃に戻るのは難しいだろう。だからといって、そのために自分の人生を差し出す気もないのだけど。

「でも転移魔法を使った先まで追ってくるなんて凄すぎない?」


『…あいつのことだから、マイが転移魔法を使うと分かった時点で、国中の街に使い魔を放っているのではないか?』


「怖い事言わないで…」

 本当にやりそうで怖い、とソファに置いてあったクッションを抱きしめながら、舞が顔を引き攣らせる。

「そうなるとこっちも対抗手段を考えないといけないかな…というか、最初の予定通り他国に出てしまえば流石に追ってこられないわよね…?」

 そう簡単に王太子が他国を歩き回るなどできるはずがない…はずだ。多分。


『さあな。あの男がマイと同じ姿変えの魔法を習得して冒険者を装って追ってくることならできそうだぞ?』


 そんな対策方法知りたくなかった…。

 リントヴルムの言う事が可能なら、自分は一生アルフレッドと追いかけっこをしなければならないのか…。それでは定住してのんびり暮らすなど夢物語だ。

「どうしたものかしらねぇ…」

 ぼんやりと天井を見つめながら呟いてみても、すぐに解決策が浮かぶわけでもない。

「ねぇ、リン」


『どうした?』


 ソファから身体を起こした舞が何かを思いついたようにリントヴルムに声を掛ける。

「私、自分の魔法のスキルをもっと上げたいんだけど、付き合ってくれる?」

 聖女としての務めを果たすための魔法とそれらを制御する術は城で学んだが、それ以外の魔法は本で読んで学んだだけの独学だ。

 例えば転移魔法も移動先を正確に指定することはできないし、自分の魔力が大きすぎて怖くて試せないものもある。特に攻撃魔法などはその最たるものだ。

 しかしこれから旅を続けるなら、ある程度の自衛ができないと困る。

 何より、舞ほどの魔力を持つ聖女は過去にいなかったため、この巨大な魔力を制御する方法を教えられる人物は城にいなかったのだ。

 その点、リントヴルムならばそれができるのではないだろうか、と思ったのだ。


『もちろんだ。確かにそれだけの魔力、もう少し制御を覚えた方がいいだろう』


 しかもリントヴルムは舞と同じく光属性も持っている。魔法を教えてもらう相手としては最適だろう。

 ただ問題が1つあるとすれば…。

「…どこで練習しようか」

 アルフレッドに手の内を見せるようなことはしたくないが、彼の使い魔がそこら中にいるかもしれないと思うと安心して魔法の練習などできやしない。

 だがそんな舞の心配をリントヴルムがあっさり解決する。


『心配せずとも練習する場所を決めたら、周囲をマイの結界で覆ってしまえばよかろう?』


 結界内に使い魔が入ってこないようにできる上に、マイの結界の内側からリントヴルムが結界を強化すれば、多少の無茶をしても他に被害が及ぶ事もないという。

 願ってもない提案に、もちろん舞が飛びついた。

 結界の張り方なら、聖女の研修で基本は習っている。

「早速お願いしてもいい?」


『あぁ、場所を選定するから少し待て』


 暫くすると、リントヴルムがこの街の外れにある森の中なら大丈夫だと伝えてくる。舞は指定された場所に魔法で転移する。今回は場所がわかっているリントヴルムがサポートしてくれたので、目的の場所に転移することができた。

「なるほど…、こういう方法もあるのね」


『あぁ、我が知っている場所ならば、正確な場所に転移させてやれる。…というかそもそも我も転移はできる。何かあれば言うといい』


 それは考えてなかった…。もう聖獣たるリントヴルムがいれば自分は何もしなくてもいいのでは?と遠い目をした舞にリントヴルムの呆れた声が聞こえてくる。


『聖女にしかできぬ事もある。それに自分でできた方が色々とやりやすい筈だ』


 確かに何かするために毎回リントヴルムを呼び出したり頼ったりするわけにはいかない。

「よし!」

 舞は気合を入れるように声を出すと、周囲に結界を張る。どれくらいの広さが必要かは事前にリントヴルムから聞いている。

 広さにしてサッカーコート1面くらいを意識しながら、上空まで覆う結界を張る。

 数分後、今の自分にとって最高強度の結界を張ったところで、リントヴルムに「どう?」と聞いてみる。


『…ふむ。結界内に使い魔もいないな。マイ、この結界内を外から見えなくする事はできるか?』


 今はまだ侵入できないというだけで、何をしているかは結界の外から丸見えである。確かにそれではやっている事を隠すことはできない。

「やってみる」

 マイは結界の表面に僅かな魔力のゆらぎを作ることで、認識阻害のような効果を結界に付加していく。当然、警戒のために結界の内側からは見えるようにしている。

「どうかな?」


『問題ないな。では内側に我の結界を張っておこうか。指輪から出るぞ?』


「いいよ」

 舞の許可を得てリントヴルムが姿を表すと、同時に結界を展開した。舞とリントヴルムの魔力の色は同じだから、色だけではどちらのものかは判別できないはずだ。


『これくらいで良かろう。では始めるか』


「お願いします!」

 真剣な表情で自分を見た舞を微笑ましく見ながら、リントヴルムは魔法を使う上で一番重要な魔力制御から訓練することにした。

 もちろん城での訓練でも教えられている。だが舞の場合それだけでは足りない。


『魔法を使う時、使う魔力の量は把握しているか?』


「えーと、大体?何となくこの魔法は魔力使いそうだな、とかは意識するけど…」

 予想通りの答えが返ってくる。なまじ魔力量が多いから、魔力の減少を気にせず使えてしまうのだ。だが、それでは本当に危機に陥った時に魔力が枯渇してしまう危険がある。


『それではいざという時に困るだろう。これからは常に自分が使う魔法で減少する自分の中の魔力量を把握しておくのだ』


 だがそんな数値化されてもいないものを、どうやって把握するというのか。


『そこは感覚で覚えていくしかないだろう』


「まさかの体育会系な答え!」

 がっくり膝を付く舞を楽しそうに眺めながらリントヴルムが訓練方法を告げる。


『ついでに簡単な攻撃魔法も訓練しておくか。折角持っている全属性だ。使わねばもったいなかろう?』


 そうしてこの日は全属性の攻撃魔法のうち一番威力の小さいものを何度も行使しながら、それに使われる魔力量を身体で覚えるまで鍛えられたのだった。

リンは意外と体育会系でスパルタ。

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