ここにて ようやく
ここで終わりとなります
「 ―― 記者が女の人の身元を調べて、いまも実家に帰ってなくて行方不明だっていうのがわかって・・・、ご両親が新聞社といっしょに、その男を調べるよう進言したら、警察につれていかれた男はすぐに、詐欺と殺人を認めたらしいです」
ぼっちゃまは嫌そうな顔をした。
「ほんとよかった。そんな人をぼくがダイキチさんのところへ送るようなことにならなくて。 ―― しかも捕まってからその男、殺した女にいま口をのっとられている、とか、ダイキチさんのお屋敷に化け物がいる、とか気がふれたふりしてるみたいなんですよ。 まったく、《百物語》に行ってないのだから、あのお屋敷にも行っていなのに、なんでそんなこと言うんだか・・・」
怒ったように、空になった皿と湯呑をもち、立ち上がった。
「こんなはなし、ダイキチさんの耳にはいらないといいんですけど」
「・・・はいったって、―― 気にとめねえでしょう」
「ああ、そうですよね。あのお二人なら、そんな世迷言、聞き流すだけか。 ―― なにしろ、ひとつも、かかわりがないんですから」
安心したような声が奥の台所の方へ移動するのをききながら、ヒコイチは羊羹の甘さが残る指先をなめとった。
庭をながめていた年寄の声がよみがえる。
『 ながい茶飲み話につきあわせてしまい、もうしわけございませんなあ・・・ 』
きっと、いま、ここにてようやく、
ダイキチの《おはなし》は『しまい』になったのだろう。
「 ・・・こりゃぁ、ほんと、こえぇ、はなしだ 」
あの座敷のろうそくが、いまひとつ消える音が、したようだ。
おつきあいくださった方、ありがとうございました!
ひとつきほどかけてのせおわりました。
『西堀の 』も、ほんとはこれぐらい小分けのほうがよかったか・・・と反省しております。。。。




