まだいる
つぎにぼっちゃまに会ったときには、もう夕暮れどきの暑さはずいぶんとしのぎやすいものになっていた。
とっくに《流感》も治ったぼっちゃまは、『百物語会』の《名簿》だという台帳に目をはしらせながら、ダイキチの百物語にゆけなかったことをさんざん悔やみ、このつぎの『会』の準備をはじめているところだった。
「 ・・・あのお屋敷で、やるんですかい?」
あの、男とカエが《いっしょに》なったあの場所で?
「やりますよ。ぼくらが行けなかったダイキチさんのお屋敷の《百物語》は、けっきょく誰もこられなかったので、『先生』とダイキチさんだけで楽しんだらしいんですが、『先生』のおはなしがふるえるほど怖くて、ヒコさんに用意してもらったろうそくが、また、よかった、って、おっしゃってましたよ。 ―― だから、つぎの会でもぼくらは『先生』に参加していただきたいって思ってるんですが、たくさんの方にお会いするのは恥ずかしいのでそれはご勘弁願います、ってはっきり断られました」
「へ?ぼっちゃま、あの『先生』にあったんですかい?」
「ええ。会がながれてしまったお詫びと、次の百物語会のお願いで、あのお屋敷にいきましたから」
「・・・まだ、いた・・?」
間抜けな声がでた。
「そりゃいらっしゃいますよ。このまえぼくらが無粋なことを考えたくらい、おふたりとも仲がいいですし」
「・・・まあ、そりゃそうだろが・・・」
なんだか変なかんじだ。
あの屋敷では、『人』と『人ではない人』が、このさきもいっしょにいるのか・・・・。
そういう《場所》は、たいがいヒコイチにとっては《嫌な場所》になるのだが、どうにもそんな気がしない。




