女の先生と出会う
だが、それに困っているわけではない。
煙は悪さもしないし、ただ、雨がふると『さまよう』だけなのだ。
しかしこのまま、ほうっておいてよいとも思えない。
さてもどうしたものか、と歩いていたら、その『女』がめにはいった。
「地味な着物なのに、ひどく目がいきましてな。たしかにお顔はきれいだが、はて見覚えはない、と思うたら、頭をさげられましたので、こちらもさげかえしました」
すると、とたんに女が、おねがいがございます、と寄ってきた。
さても、これは ―― 。
人として影もあるが、どうにも人の気配とはちがうものがある。
女は居心地悪そうにあたりをみまわしている。
まあとにかく、はなしをききましょう、と、ダイキチは、その女をともない、料理屋でもお茶屋でもなく、《屋敷》へとむかった。
「今考えると、あれは『先生』にしむけられたのかもしれませんが、それはいいとしましょう。 ともかく、この屋敷にいっしょにくるまでの間も、『先生』はずいぶんとおちつきがありませんでした」
つくなり、ひさしく人の多いところはよけておりまして、と女はわらい、お気づきでございましょうが、わたくしは人ではございませぬ、と話し始めた。




