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蓮池の白い煙のはなし  作者: ぽすしち


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テヅマかどうか


 この手合いの酔い客を商売先の料理屋で何度かめにしているヒコイチは、よけるように道の端を歩いて過ぎようとした。


 それなのに、ふらふらとした足取りの男はこちらに引き寄せられるように近づいた。



「っとっと、こりゃあ、もうしわけない、足がかってに動いてなあ」


 「いや、」と言おうとしたのに、いきなり、ぞぞっとおそわれた寒気に口がとまる。



 すぐそこで、先生すこし飲みすぎだ、と抱えられた男が、なぜだかいきなり水浸しになった。


 髪も着物も水を含み、おもそうに水をしたたらせている。



「いやいや、まだ飲むぞ。まだ酔ってなどいないぞ」

 その、赤黒い顔があがり、自分を囲む男たちをはらうようなしぐさをするが、とうてい一人ではたちあがれない。

 その場に胡坐をかき、酔っておらん!と大声をだす。




  あれ? もう、濡れてねえ・・・


 

 さわぐ男の髪も着物も乾いている。




 ヒコイチは災難をよけるように身を低くして、そこを離れた。



 ふりかえってみたが、とりまかれた男はまだ声を張り続けている。





 いやまてよ、もとから・・・足元は濡れていなかったような・・・

 


 仕事の元締めのところで、ときたま不思議な『テヅマ』をみせられることがあるが、そのひとつだろうか?



  

   「 次の店にゆくぞ、おれの本がでたらこんな街すぐに出て、都にゆくぞ 」



 先生たってください、とせっつかれる男の声だけが、どうでもいいいことをさわぎつづけていた。







 ―― ありゃ、なんだってんだ・・・。


 さわぎから遠ざかったヒコイチは毛がさかだった頭の後ろをごしごしなでた。



 『ただの金持ちの道楽』『ろくなはなしもかけぬようなやつらが、その金だけ目当てに集まって』『おれはどうだ?いよいよ本をだせるのだぞ』



 さわいでいた男の言葉が、どれもひっかかる。


 そういえばこのごろ、ぼっちゃまの『集まり』に、なんだかひどく文句をつけてきた男がいると耳にした。




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