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蓮池の白い煙のはなし  作者: ぽすしち


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54/73

こわい



 すると、―― 。



  「 『 ・・せんせい?ああ、せんせい? そうでしょう? 』 」


 おさえこんで男の口から、うれしげな女の、《かわいらしい》声がもれでた。




「ち、ちがう!なんだこれは!」


 男はおのれの両頬をおもいきりたたきはじめる。



 その姿に、ヒコイチはぞっとする。

こらえきれなくなり、おのれの腕を右と左の手でかばうようにおさえ、男から数歩はなれる。




  「 『 せんせい、たすけてください、 ここは くるしくて、 それに 』  やめろお!!


 女と男の声を一人で演じる『先生』は、もはや口をふさごうとはせず、怒りで染まった顔をあたりにむける。




「どこだ!なんのまやかしだ!あの女はどこにいる!」


 どうやら、さきほどまで『こわいはなし』をしていた女をさがしているようだ。




    「 『 いやだ、せんせい、わたしはここに、

            ずうううううううっと おりますよ 』 」


 男の口からこたえた、わらいをふくんだ女のかわいい声が、

 

  ―― こわい。





 おのれの頬を叩く男が立ち上がり、せかせかと部屋の中をまわる。


「どこだ!どこにかくれた!ここは、どうやって出るのだ?」


 おかしなことをいいながら、ついには部屋の中を走りはじめた。



 すると、むこうの池の上にたまっていた《白い煙》が、みるまに寄って細長くなり、蛇のように頭をもたげると、まっすぐに、こちらめざして流れてきた。


 ヒコイチのみている目の前で、部屋を走りまわる男の口へと、ながい煙はどんどんと吸い込まれてゆく。




 とん と、ヒコイチの背中がどこかの壁についた。



 ここを出たい。



 こわくって、これいじょうこの部屋の中にいたくなかった。




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