表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮池の白い煙のはなし  作者: ぽすしち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/73

『こわい』はなし

しばらく、イヤなはなし、つづきます。


 その日からは、ただ、会えて、いっしょにいることが嬉しくて、『先生』にいわれるまま、金をとどけ、世話をやき、―― どなられてもなぐられても、そばを離れなかった。




「『先生』のほうは、はじめのころはそれこそ連れ歩いてお友達に、《故郷を捨てて自分をおいかけてきた女だ》などと、どこかじまんげに話しておられたそうですが、それにも飽きると、ヤエちゃんにここまでの道中のはなしを無理にききだし、《それをおれが書いて世におくりだしてやる》などと言い出したそうでございます」



「 おくがた、」

 なにかに耐えかねたように、力と怒りがこもったような声を、男は発した。



 なんでございましょうか、と女がそのままの声でききかえす。



「・・それは、・・・奥さまがじかに耳になさったお話なのでしょうか?」


「ええ。―― ああ、ちっとも『こわくてふしぎな』はなしにならないとお思いなのでございますね。・・・でも『先生』、ここまででもじゅうぶん、わたくしには《こわい》はなしでございます。―― 自分を追ってきた若い娘の不幸を文字にして世におくりだすなど、『こわい』いがいのなにでございましょうか?」



 ―― 《おまえがどれほどのことを耐えぬいておれのもとへ来たのかを知りたい》



「 などと、すべてを受け入れるかのようにみせかけて聞きだして、きいたあとに 」



 ―― 《おまえはそんときから男をあいてに商売するのがむいてたんだな》



「 手のひらをかえしたようにさげすんでつきはなし、親にもいえないような話を世にひろめるなぞ、人のすることでございましょうか? ・・・あの、おとなしいヤエちゃんが、 ―― 刃物をにぎってきりつけようとしたのも当然で・・・、その刃をうけて『先生』は動かなくなり、われにかえったヤエちゃんは、―― そこから、正気には、 もどりませんでした・・・」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ