一条のあつまりには
「 いやあ、わたしはあの、《一条の集まり》とは、目指すものもちがうので、かかわってはおりません。 あれは、・・・なんというか、まあ、金持ちが暇をもてあましてつくった集まりですからね。ですからあんな『百物語会』などというのを思いついたのでしょう。ああ、ひょっとして、ダイキチさんがこのお屋敷でめざす百物語会のことをきいてから、それをさも、自分たちが思いついたようにしたのかもしれないなあ。・・・なにしろ、創造性のないやつらの集まりですよ。 今日のこの集まりにしたって、わたしが本をだす、という《噂》を耳にして、自分たちのつまらない『百物語』に自信がなくなったから、来られない、などと言い出したのでしょう」
「まあ、そんな。一条のぼっちゃまがおきらいなのですか?」
この問いに男は座布団の座り心地をなおすようにからだをゆらした。
「 ―― いやじつはね、・・・むかしわたしが初めて会ったときに、こちらが『いれてくれ』とも言ってないのに、彼に、『きみは、ぼくの会にはいれたくない』などと言われましてね。まったく なんというか、こちらをじろじろとみてきて、あの時はたまたますこし、酒がはいって道で転んでしまったあとだったせいもあって・・・とにかく、金持ちは人をすぐ見た目で判断する。人をはかる度量がたりないからイヤなのですよ」
ははは、と笑う声を耳にして、ヒコイチはぼっちゃまをほめたくなった。
街中でぶつかったあの男が、ぼっちゃまとその仲間をあしざまにののしっているのをきいていると、なんだか腹がたってきて、寒気もおさまらない。




