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みておくれ
戻ってから、ここでもあちこちで水の事故があったのを聞き、ひどい雨だった、とあらためて思ったものだ。
「 ―― あのどしゃぶりの中を? 煙がずっとただようって?」
そりゃ無理だ。
ようやく、年寄がいいたいことがわかったように、眉をしかめてお茶をのみほす。
―― で?
庭へ目をむけたセイベイに、ヒコイチは体をむけた。
うん、とようやくこちらに顔をもどした年寄は、手にした湯飲みを茶托におくと、「だから、おまえがみておくれ」と、そこにある掛け軸をみろというようにそっけなく命じた。
「・・・・じいさん、・・・おれはべつに、坊主でも祓い屋でもねえぜ」
「しってるさ」
「みて、どうしろって?」
「おまえが、どう感じるか、ききたいのさ」
「はあ?」
とにかく行ってみろと命じ慣れたものの口調でいいわたした年寄は、「それで、旅はどうだった?」とわざと膝までこちらへむけてききたがり、どうにも居心地の悪くなった男は、さっさとそこを後にした。