あんたしかおらん
洋館におさめたろうそくは、そこですべて確認してから、お屋敷へ運ばれることになっていた。
おさめた四日後にまたぼっちゃまによばれたヒコイチが足をはこぶと、ときどき通いでぼっちゃまの世話をしにくるばあさんが、ぼっちゃまは流感にかかってふせっているので、代わりにこれを《お屋敷》に運んでほしいと、積みあがった箱をしめした。
「 なんだか、これをはこぶはずだったぼっちゃまのお友達もみなふせってられるようでな、あんたしか丈夫なのがおらなんだ」
かか、と歯のないくちで笑いながらお茶をわたす。
みやげに持ってきた大福をかわりにわたしながら、「みんなかい?」とききなおす。
みんなだよ、と大福の包みをあけたばあさんは包みをおしいただき、奥へともってきえる。
「それなのに、このろうそくはもってけって?」
ずず、とお茶をすすり木箱をにらんでいると、「おぼっちゃまのお友達のお友達あたりが、行けるそうだよ」とばあさんが奥からこたえる。
ならその『お友達のお友達あたり』が運べばいいだろう、という言葉はお茶といっしょにのみこんだ。
いくら文句をならべても、自分がこの箱を運ぶことはもう決まっている。
それに、なにしろ、どうしてダイキチが、この『百物語会』をやろうとしたのかが、気になって仕方ない。




