表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蓮池の白い煙のはなし  作者: ぽすしち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/73

ひどくはない



 ああ、いつのまにか・・・

 


 気づけば、さきほどまで庭を照らしていた陽の明るさがなくなっている。

 

ああこれは、と庭に面した廊下へと立ち上がったダイキチが空をみあげ、「ふりますな」とうれし気な声をだす。


 みあげた空にはいつのまにやら低い雲が厚くひろがりはじめている。



 

 ぽさ ぽさ




 枯れた蓮の葉をたたく大粒な水が落ちてきた。



 ぽさぽさ、という音は、しばらくすると、ばたばた、という激しい音になり、庭の草木はもとより池に立つハスをたたいてふるわせた。


 音は大きく数を増し、白い筋をひくように水は天から落ちてくる。


 池にいくつも波紋がひろがり重なって、水面がわきたつような激しい降りになったとき、年寄りがするどく 「でる」 と言った。




 やさしいものになであげられるような寒気が、ヒコイチの背をぬけると、むこうの池の隅にある枯れた《蜂の巣》から、煙草の煙が吐き出されるように、しろいもやが、ふうと広がった。



  ―― それほど、ひどくはねぇ。



 いつものような、ひどくいやな寒気が襲ってこない。

 すこしひょうしぬけしたように、ゆっくりと広がる煙をながめた。



 まだ、ざああ、と音をたててふる雨の中、煙はすこしかたまって濃くなり、ゆるゆると流れるようにただよい、ハスからハスへとまとわりつく。


 よくよくみれば、まとわりついたハスの《蜂の巣》から、また、少しばかりの煙がもれるようにでてきている。

 それをおのれにくわえ、また濃さを増した煙が、ながれだす。


 


  たしかに、動きが ―― 。





 『まよっているのかさがしているのか』


 そうつぶやいた年寄をみれば、弱った鳥でもみるような顔をして、けむの動きを追っている。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ