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蓮池の白い煙のはなし  作者: ぽすしち


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17/73

蓮(ハチス)


 

 あしをふみいれた続き間は、いやに細長い座敷だった。

 さっさと部屋をよこぎった年寄が、またつぎのふすまをひらくと、同じような部屋が続く。


「こちらは、まあ、 中にある庭をながめることのできる客間、というところですかな」

 

 そういって、部屋の真ん中で立ち止まると、右手にある障子をひらいた。

 

 部屋にそった幅のせまい廊下の向こう側には、ほお、とヒコイチが声をもらしてしまうほどの、立派な庭があった。



「広さだけならば、このあたりで一番でしょう」



 手前には、おおきな池があり、奥には山を模したであろう築山つきやまが、池を《ふもと》にいだくようにつくられている。

 池には橋も、小島もない。


 ただ、季節をすぎて枯れはじめたハスの葉と立ち上がった茎が、水面をうめつくしている。



「盛りのときは、あおい大きな葉と薄紅色の花が、それはきれいなもので」



 その、あおかった葉はほとんどが力をなくし垂れさがり、すでに茶色く堅い茎だけとなった場所もある。



「 ―― ヒコイチさんは、ハチスの花をごぞんじで?」


「へい。そりゃみたことは何度も」

 だが、さかりをすぎたハスをこんなにじっくりみたことはあっただろうか?


 高さをきそうようにのびあがったそれらを、端から端までながめる。


 まだあおさをのこす葉がいくつかあるにはあるが、ほとんどが力つきたように垂れ下がり、うつむくそれらから、《さかり》の美しさをを想像するのはむずかしいかもしれない。



「では、 花がおわったあとをごぞんじで?」


「ああ、そういやぁ、なんだか蜂の巣みてえな穴のあいたやつが」


「そうです。 ―― 花が終わるとほんとうは、あの穴ひとつひとつに、実がはいるのですが・・・」


 年寄がうすくわらいながら言葉をとぎれさせたとき、 ぞぞぞ 、とヒコイチの首にさむけがはしった。




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