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蓮池の白い煙のはなし  作者: ぽすしち


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黒猫には声をかけられた


「―― そのころから家は下駄屋をしておりましたので、両親は毎日いそがしく、わたくしは祖父とばかり、そんな集まりやら、あやしげな見世物やらに通って育ちました。―― 祖父は自分もこどものころにお坊様にそんなはなしをよく聞いていたらしく、こどもをそんな話にふれさせるな、という両親とは、いつも言い合いしておりました。 こどもはよく、そういう話をきいたあと寝小便する、とかありますが、わたくしは、いちどもありませんでした」


 どこかあごをあげるように言うのに、この若々しい年寄がどうにも好きになってきた。


「そいつアたいしたもんだ。おれなんか、布団に寝込んじまったことがある」


 つい、言ってしまい、笑われると思ったら神妙な顔で、「・・・カンジュウロウさんは、すこしばかり、まよっておられるようで」とうなずいた。


「・・・・カン、・・乾物屋の、大旦那、を、もしかして・・・」


「ああ、声をかけられましてね。―― 黒猫に」


 目をみてにっこりとされ、口をあけたままになる。



 『カンジュウロウ』という乾物屋の主人だった年寄は、死んだあと今度は黒猫になり、いまは西堀の隠居、セイベイの世話になっている。

 その『黒猫』が《しゃべる》のをしっているのは、自分とセイベイだけだと思っていたのに。

 


 まさか《猫》になっても商売仲間に声をかけているとは・・・。



 ヒコイチの、ぽかんとした顔をみた年寄が、くくく、とこらえうような笑い声をもらし、「ほんとうに、セイベイさんやカンジュウロウさんからきいたままだ」と、奥方をふりかえる。


 失礼をわびるように、主人より四十も若そうな奥方が、「ヒコイチさまは、まれにみるまっすぐで裏のない方だと、おふたりにきいておりましたもので」と、返事にこまるようなことを言う。



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