8 とりあえず情報収集。そして・・・
『で。何が起こった?』
と、俺は全身傷だらけの里美に問う。
「うん。朱莉が頭痛そうだったから、保健室に連れて行こうとしたの。で、正面玄関の前まで来たら・・・。」
『あの叫び声をあげたわけか。』
「うん。それで、あまりにびっくりして、そこに立ち尽くしてたら、朱莉がこっち向いてきたんだけど・・・」
『だけど・・・?』
「あの目。朱莉の目の色じゃなかった。それで、ナイフみたいなもので斬られたの。で、ここに走ってきたわけ。」
「それで朱莉はどこいったんだよ?」
石蟹が問う。
「朱莉は正面玄関のほうに走って行ったわ。」
『そうか・・・【ピーンポーンパーンポーン】ん?】
「みなさん。よく聞いてください。」
教頭先生の声だ。
「なんだ?」「どうした?」
次々に皆が声を上げる。
「・・・・え~・・・この学校は・・・・悪の組織と名乗るものに占領されました。」
「・・・・・え?」クラスの空気がまた凍る。
「ハハハハハハハッ!なんだよそれ!バッカじゃないの?」
と、朱莉の叫び声を聞いてなかったクラスが声を上げ、廊下中に響く。
「・・・・こんにちは。」
と、声の主が変わる。それはまさしく・・・
「朱莉・・・・」
朱莉だった。
「みなさん。この話は本当です。自己紹介が遅れました。私は教頭先生がおっしゃられた、悪の組織のリーダー・・・仮に[キル]と名乗っておきましょう。
私は今、ある女の子の体を操り、話をしています。これでも信じられないと言う人がいるかもしれませんので、先ほど教頭先生の話を笑ったクラスを消しましょう。」
そうキルと名乗るものが言った瞬間。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
「な・・・なんだ?」「なに?」
突然の爆音に耳をふさぐ俺たち。そして・・・・
「さて。消しましたので、誰か見に行ってあげてください。大丈夫です。このほかには消しません。」
俺たちは動かなかった。いや、動けなかった。
そのうち、廊下から声がした。
「あ・・・・ああ・・・きょ・・・・教室が消えてる・・・・!!」
見に行ったヤツだろう。大声で叫んだ。
「フフフ・・・どうですか?私の力を信用してもらえましたよね?
わかったのなら、今日は家に帰ってください。そして明日は絶対に学校に来てください。
あ、そうそう。私たちの目的も教えましょう。それは世界を破滅させること。そのために、まずはこの街から消す予定ですので。それでは。」
「・・・・・・・・・・・・」
放送が途切れた後、皆は時が止まったように立ち尽くしたり、座ったまま動かなかった。
3分ぐらい経っただろうか。萩先生が口を開いた。
「皆・・・今日は帰ろう。あいつの言ったとおり帰ろう。あいつは・・・私たちにはどうすることも出来ない・・・」
皆は、無言のまま帰る支度を始めた。
その中で俺は考えていた。あいつのいろいろなことを。
そしてそのまま帰った。
後でわかったことだが消されたクラスは教室全体が跡形もなく消えていたらしい。
俺は、このままあいつに好き勝手させるのが嫌だった。俺は、あいつをこの世界から追い出したい。
だから俺は、今こそ粛清屋の能力を使う。
人を消す力で世界を救う。