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58話 工夫



「まず、魔法陣は言葉ではなく『字』です」

ロルビスは魔法陣を一つだけ虚空に描いた。

特段、何かが変わっているわけではない。至って普通の、ロルビスがよく使う魔法陣だ。


そこから放たれる一発の火球。

アウロラは警戒することなく、詠唱をして防いだ。

「それで〜? 一体これがなんだと──」


そしてすぐに、もう一発の火球が飛来する。

トヌラユ(水よ)!」

アウロラは咄嗟に魔法で防ぐ。しかし、三発目がもう既に迫っていた。

「──ッッ!?」

アウロラは魔力で身体強化。火球を回避した。

だが、四発目が。

「くッ!」

すぐに五発目。

そして、またすぐに六発目。七発目。八発目。九発目。十発目。十一発目。十二発目────


「なんッ、なの!? これは!?」

「魔法ですよ。あなたが何度も見てきた」

ロルビスは一つの魔法陣から火球を何度も放ちながら応える。

「これが魔法陣の利点。詠唱は一度しか魔法を発動できませんが、魔法陣は何度でも魔法を打てる。字は詠唱(ことば)違ってその場に在り続けますから」

この使い方は魔力を垂れ流しにしているのと同じだ。ロルビスの魔力はどんどん削られていく。


それでもロルビスは攻撃の手は緩めない。

なぜなら、千年間 鍛えてきた才能を凌駕し得る莫大な魔力量があるから。

そのおかげで、火球が絶えず、攻撃を続けられる。

まったく工夫を凝らさない。

ゴリ押しもいいところの、ロルビスらしくない(つか)い方だ。


ヴリクセ(地面よ)ベクタス(隆起せよ)!」

魔法を一発一発対処するのは効率が悪いと考えたのか、アウロラは地面を隆起させて防壁を作る。


「その判断は正しいですが、この状況でそれは悪手ですよ」


壁越しに伝わる声。まずい、とアウロラは思った。

防壁を作れば連続で来る火球は防げるが、ロルビスを視界から外すことになる。

防壁が水や氷だったら向こう側が透けて見えただろうが、あまりにも速い連続攻撃にそこの判断を誤った。


アウロラは急いで防壁から離れる。

壁でロルビスがどの方向から来るのかわからない。

右か、左か、上か、どこから来ても対処できるように視野を広くし、杖を構える。

しかし数秒経ってもロルビスは来ない。


「俺の魔法陣はいくつ撃とうとあなたの魔法一発に敵わない。ですが、射程や速度を捨てれば十分あなたに(ダメージ)を負わせられる」

再び壁の向こうから声が聞こえる。しかし、言った意味がわからない。

気づいた時にはもう遅い。アウロラの立っていた地面が爆発した。

これは多少の工夫を凝らした使い方。言葉で注意を引き、魔法で地面に魔法陣を描く。

射程、速度を捨てた任意発動の地雷型魔法陣。

爆発によって破片や砂埃が飛び散るがロルビスはアウロラが作った壁の後ろに隠れてそれらは当たらなかった。


ロルビスは魔法陣を描き、風魔法で砂埃を巻き上げた。

「随分とセクシーな格好ですね。そのほうがお似合いですのよ」

視界が晴れて目に入ったのは、ドレスが無惨に破けてボロボロになったアウロラだった。

右肩を負傷したらしく、右腕では杖はもう持てないようだ。

「どうです? 降参しますか?」

「…………るさい」

「もう右腕は使い物にはならないでしょう。俺としても、必要以上に女性を痛めつけたくありません」


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさ〜〜〜いィッ!」


アウロラが試合開始前のあの顔になった

「ウザいウザいウザいウザいウザい! 生意気だよぉ〜、弱者のクセにさぁ〜」

「降伏はしない、ということでよろしいですか?」

「あったりまえだよ〜。お前みたいなやつに降参なんてできないししたくない〜 ───よッ!」

大きく踏み込むアウロラの左手が閃く。

どこからともなく現れた短剣がアウロラの左手に逆手で握られていた。

ロルビスはそれを咄嗟に躱すが、切っ先が僅かにロルビスの頬を掠めた。

「──痛ッ」

ビリッと切り傷に痺れるような痛みが走った。

「…………雷の魔剣か?」

「正確には『雷』と『加速』の魔剣よ〜」

そう言いながらアウロラは再び魔剣を振るう。先程よりも速く、そして雷もより強くなっている。


振るう度に強くなる魔剣。

この種類(タイプ)の魔剣はいくつか知っているが、二つの効果を併せ持つ魔剣を見るのは初めてだ。

二つの効果を持つ魔剣、そしてアウロラが以外にも武闘派だったことに驚きつつ、ロルビスは先程からずっと行使していた魔法を再び使う。


アウロラの視界が砂埃で覆われた。突如として現れた砂埃にアウロラの行動は鈍る。

それを見切ったロルビスはアウロラの無防備な腹を、先程のお返しと言わんばかりに蹴りつける。


砂埃はロルビスが巻き上げたやつだった。それを魔法でずっと上空にキープしていたらしい。

だが、それには目もくれず──否、そんなものは些細なことでしかなかった。

アウロラは自分を取り囲むそれらから目を離せない。見張った目が、その現実を受け入れなくなっている。



「121個。それが今の俺が同時に発動できる魔法の最大数です」



アウロラの周りをドーム状に取り囲むそれは、ロルビスが今日使う もう一つの工夫無き魔法だった。

全てが同じ射程、速度、魔法の、ロルビスらしくない使(たたか)い方。


「もう一度訊きましょう。降参しますか? それとも、まだ抗いますか?」




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