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52話 挨拶


『さぁさぁさぁ! いよいよこの時が訪れた! ガリュートル王国VSフェンバリック王国の対校試合。開幕だァーーーーーーーーー!!!』


わぁっ! と大きな歓声が上がる。


『えー、まずは開会の挨拶──なんてものは求めてない! 校長の長ったらしい演説も、選手宣誓も必要ない! オレはわかってるぜぇ! 君たちが求めているものを! 戦いだ争いだ! 血沸き肉踊る魔法使い(バケモノ)達の戦闘だァーーーーーー! という訳で校長の長いお話は飛ばして第一試合から!』

『いいわけあるか!』


バキッ、と魔導拡声器(マイク)の向こうから何かをぶん殴る音が聞こえてきた。

ドッと観客席から笑いが起こる。

どんなに小さな笑い声も その数が数百、数千、数万と集まれば騒がしい喧騒に変わる。



巨大な闘技場(コロシアム)型の試合会場。そこには観客席を埋め尽くすほどの人々が集まっていた。

最悪の場合、魔法が当たって死ぬ可能性があるというのに毎年凄まじい盛況だ。

一応観客席の前には防御結界が張ってあるのものの、人類の魔への適応速度に結界の防御力が追いついておらず、ほぼ毎回結界が壊れている。

魔法使い同士の戦いにおいて相手の攻撃は『防御』せず攻撃で『相殺』するのが基本だ。

なぜなら魔法は範囲や効果が高くなるほど魔力を消費する。

ほんの一瞬ならともかく常に張り続けるなど魔力の無駄遣い。

そのため広範囲で展開する必要がある結界は永続的に発動し続ける魔道具でしか使われず、そして魔法による防御壁は使われないのである。

需要が低い(使われない)ものほど得てして研究は遅れるもので、それは魔道具で有名なフェンバリック王国も例外ではない。

魔道具で有名なフェンバリック王国でも『防御』という分野だけは他国と同等であった。


にも関わらず、入場券(チケット)は完売。

入場客は魔法の流れ弾で 死んでもいい と書類に同意(サイン)した上で観戦を許された。

それだけ一般人にとって魔法戦を見れる機会は貴重なのである。


『えー、ウチの馬鹿が大変失礼しました。まずは各学校の校長先生の挨拶です』


ざわめきが止む。

少し間を空けて、ガサガサと魔導拡声器(マイク)を手に取る音が聞こえた。


『皆さんこんにちは。ガリュートル王国魔法学校校長 クレナ・クロスです』


凛とした声。マイク越しでも伝わる風格。

その気になればこの試合会場(コロシアム)にいる全員を皆殺しに出来るほどの実力者。

魔法使い(バケモノ)ですら恐れる魔素使い(バケモノ)

それがガリュートル王国魔法学校の校長のクロス・クロスだった。

しかし、風格に対して述べる言葉は平凡だった。何の変哲もない美麗字句。

「姉さんらしいな」とロルビスは内心で思う。

ロルビスは学校関係者用の観客席でクレナの挨拶を聞いていた。

ユーミラやユウト達はこの場にいないが、別の場所にある上質な観客席が当てられているはずだ。


つつがなく進むクレナの演説。

最後は、お互い切磋琢磨しましょう、みたいな軽い感じで終わった。

変に飾らず、素早く済ませる。

大衆はクレナという『最強』の存在の声を聞きたいだけで話す内容はさほど重要ではない。

まるで今日の主役は自分(クレナ)ではないと言っているようだった。


『続いて、フェンバリック王国魔法学校の校長の挨拶です』


マイクが手渡される音。

そして聞こえてきたのはどこか飄々(ひょうひょう)とした声だった。


『どうもどうも。フェンバリック王国魔法学校の校長をやらせてもらってるカワード・エーオースじゃ』


(しゃが)れた老人の声。クレナの様な威厳、風格といった覇気は感じられない。

ロルビスの頭の中に好々爺(こうこうや)がイメージされた。だが、

「…………エーオース」

その名には聞き覚えがある。

ついこの間、ロルビスに啖呵を切ってきたあのアウロラとかいう女だ。

ロルビスこイメージが好々爺から一気に狸爺(タヌキジジイ)へと変わる。


『えー、本校はここ三年負け続きだが、今年こそ勝つじゃろう』


いきなりの、勝利宣言。

会場からどよめきが広がった。ロルビスも動揺している。

(断言しやがった……)

妙な確信があった。カワード・エーオースの言葉には、妙な確信と、自信が。

ロルビスは不安に包まれる。

大丈夫だ、ロルビスは見てきたからわかる。あの生徒達は勝てる。

そう自分を落ち着かせても、どこか心に引っかかった。



  □ □ □ □ □



『それでは、気を取り直していきましょう。 まずは皆さん戦場(フィールド)をご覧ください』


実況者が言い、観客全員が闘技場(コロシアム)中心にある立体の長方形を見た。

一見、なんの変哲もないただの真っ白な四角い物体(ブロック)に見えるが、この場においてそんなはずはない。


次の瞬間、長方形の物体が動き始めた。

ロルビスの思った通り、アレはただの物体(オブジェ)じゃない。そう、あれは──


『我がフェンバリック王国が誇る巨大戦場(フィールド)(タイプ)至高魔具(レガリア)気分屋な戦場(ムーディ・フィールド)》だァーーーーーッ!!!』


魔道具なのだ。しかも、至高魔具(レガリア)

さすがは魔道具で成り上がった国。魔道具の規模が違う。


『さぁ、《気分屋な戦場(ムーディ・フィールド)》よ! 今回(いま)戦場(きぶん)を教えてくれーーーーー!!』


実況者の叫びに呼応するかのように《気分屋な戦場(ムーディ・フィールド)》が変形する。

最初は長方形だったが、円形になり。最初は真っ白だったが、地に変わり、緑が生え、木の実が宿る。

ほんの数秒で、ただの長方形が緑豊かな森林へと変わった。

それを見て実況が再び叫ぶ。


『今回の戦場(フィールド)は森林エリア! ここでは森林で起こるありとあらゆる状況が再現されます! 

それでは早速、第1試合行ってみよう!』


そして、試合が始まる。



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