42話 露呈
「やっほー」
「またかよ」
もう見慣れた真っ白な空間。雲の上に居座る女神。目のやり場に困る際どい衣装。
そして、その存在を主張する巨大な双丘。
「……まあ、相変わらずデカいこと」
「心の声が出てるわよ」
ユウトは目をそらす。アレは目の毒だ。
しかし、女神は何を思ったのか自分のソレを持ち上げると、ユウトの顔に目の毒を押し付けてきた。
「うぉふ」
「ホレホレ、どうだい? 初めてのパフパフの感想は? 童貞くん」
女神はそう言ってユウトの顔を抱きかかえるようにして、さらに目の毒を押し付ける。
ふよふよ ぱふぱふ
「………………」
ここは夢の中。そう、夢の中だ。
自分は魔力切れで寝ている。そして自分は夢を見ている。
いわゆる『レム睡眠』だ。そしてレム睡眠中はアレが起きるのだ。
だから仕方ない。現実の生理現象はきっと夢の中でも反映されるのだ。
「………………………………愚息がッ」
「童貞感丸出しね」
「うるせぃやい!」
ユウトは吼えた。真っ白な空間に虚しく木霊する。
「…………………それで、なんの用だよ」
「や〜ん、ユウトくん冷たーい」
「ウゼェ」
でも可愛い。だから許す。
「ねぇ、女神サマ」
「ん?」
「あの時さぁ、オレ何したの?」
あの時。
それはまだ辛うじて機能していた緑体の怪物がロルビスに襲いかかった時だ。
ユウトのあの瞬間、自分が何をしたのか理解していない。
「時間の概念を斬ったのよ」
「ふぁ?」
「気づいたらゴーレムを斬ってたでしょ? あの時、時間の概念を斬ったから『剣を抜いて振った』っていう過程を吹き飛ばしたのよ」
「キ○グ・クリムゾン?」
「そゆこと」
ユウトは今の言葉を頭の中で反芻した。
概念を斬る。とりあえずこれを『概念斬り』と呼称しよう。
「そのままね」
「心を読むな」
そうなると、さっきの概念斬りの他にもそれっぽいことをした記憶がある。
二階層、無数の甲殻装虫に囲まれた時だ。ユウトはがむしゃらで魔法を使ったので、山を斬ったということ以外よく覚えていない。
だが、もし、あのときに何らかの概念を斬っていたとしたら。あの山崩れにも納得がいく。
「で、どうする? 概念斬りを固有魔法として認定するかい?」
「え、なにそれ」
なんか知らん設定が増えてる。
「最初に言ったでしょ? 自分が開発した魔法を固有魔法として認定すれば魔力を消費せず、聖剣も使わずに行使できるようになるって」
「言ったっけ?」
「…………………言ってないかも」
この駄女神がッ。
「…………………まぁ、いいか。それとオレ以外の勇者がどんな固有魔法にしたのか教えてくれ。参考にする」
「あいあいさー」
□ □ □ □ □
「──てな感じ。どう?」
「んー、それもなんかあれだな。パッとしない」
魔法威力上昇。魔法障壁常時展開。身体強化。身体変化。思考加速。反射神経強化。高速再生。無限再生。
それ以外にも多々あるようだが、どれもパッとしない。
なんとなく合わない気がするのだ。
他にも『かめはめ波』とか『領域展開』を固有魔法に認定した勇者もいるらしい。
「それだと丸パクだよなぁ……」
固有魔法の『オリジナル』ってなんだよ、って話になる。
「うーん、まぁいいや! 保留!」
「それでいいならいいけど」
女神も特に言うことはないようだ。
「ところで女神様よぉ」
「なに?」
「アンタちょくちょくオレの夢に出てきてるけど、それ良いの? オレは別にスマホを持って異世界に行った主人公じゃなければ無職ニートで異世界転生した主人公でもないんだぜ?」
「他所は他所、うちはうち」
それで済ましてしまった。いいのか、それで。
「じゃあ、どうしてオレの夢に出てきたんだ? 神託とかないわけ?」
「…………………なんでだっけ」
「オレに訊くなよ」
そこでユウトの夢は終わった。ホント、何の為に出てきたんだあの女神は。
目を覚ましたユウトはまず未だ立ったままの愚息を睨みつけた。
速く収まれ〜、と念じる。一度この光景をヘルヴィアに見られた。また見られたら、ユウトはもうお嫁に行けない。
「…………………ふぅ。ん?」
愚息が収まり、顔を上げたところでその異様な光景が目に入った。
広い部屋。天蓋付きベッド。ベッドの横に備え付けられた机には様々な果物まで置いてある。
外にはバルコニー。どうやらここは大きな屋敷の二階のようだ。そのバルコニーからは、
「おおおおおぉぉぉ!」
黄金の草原──視界いっぱいまで広がる陸稲が。
ユウトは魔力を両足に込めて身体強化。バルコニーから飛び降りた。スタンッ、と着地。
「米ーーーーー! ライィィィーーーーース! 卵かけご飯ンンンーーーーー!!」
ユウトは叫んだ。卵と醤油はこの場にないが叫んだ。
干し肉や乾パンは悪くない。工夫すれば普通に食える。
だが、米を喰いたい。そんな欲望が日毎に増えていくのだ。
「だ、大丈夫ですか!? 頭がおかしくなったんですか、ユウト!?」
「ああ、ロルビス!」
後ろを振り向けば健在そうな戦友の姿が。
「ユーミラさん と ヘルヴィアさんは?」
「肩の骨を折ったのでヘルヴィアさんは治療中。でも命に別条はありません。ユーミラさんは寝てます」
「そっかー」
仲間の無事も確認した。そもそもユウトはこの三人が死ぬとは到底思えないのだ。特にユーミラは。
「なぁロルビス。ここは何なんだ?」
「機動要塞の最終階層、ですかね。たぶん」
おそらくこの機動要塞の製作者が住んでいたのだろう。
ロルビスもこの穏やかすぎる非現実的な光景をイマイチ受け入れられてない。
「それと、あの屋敷を散策してみたところこんなものが見つかりました」
そう言ってロルビスが取り出したのは二冊の日記帳だ。
一冊目には、崎平 翔平と日本語で名前が書いてある。
二冊目には、ショウヘイ=サキヒラとこの世界の言語で書かれている。
「これを読んでたら、何やら気になることが書いてありましてね」
「気になること?」
「ええ──」
次の言葉に、ユウトは思わず呆けた顔をした。
「──ユウトは、異世界から来たんですか?」
「え?」
いきなりバレた!?
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