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異世界昔話

ここは本編に関係ないので読まなくても結構です。

(じゃ)(えん)



昔々あるところに、二人の兄弟がいました。

長男は日頃から行ないが悪く、粗暴な人物でした。

逆に次男は日頃の行ないが良い、心優しい人物でした。

二人は成長し、独り立ちするとそれぞれ居を構えてのんびりと暮らし始めました。


ある日の事です。ゴロゴロと雷がなり、大雨が降る中、一人の醜いドワーフの娘が長男の家に訪ねてきて、一晩だけ泊めてほしいと頼みました。

しかし、長男はそれを拒み、ドワーフの娘を追い返しました。

しばらくした後、長男の家にまた誰かが訪ねてきました。

まだドワーフの娘が来たと思った長男は再び追い返してやろうと戸を開けると、そこには白い(ころも)に身を包んだ見目麗しい女が立っていました。

女は先程のドワーフの娘と同じく、一晩泊めてほしいと頼んできました。

長男はそれを快く受け入れ、女を家に招き入れました。すると、女は突然、真っ白な鱗の巨大な蛇になって長男をペロリと飲み込んでしまいました。

その大蛇は、なんと人間の女に化けた悪しきを食らう神の使いだったのです。

長男を飲み込んだ蛇は、先程の醜いドワーフの娘に化けると、今度は次男の家を訪ねて、一晩泊めてほしいと頼みました。

心優しい次男は、それを快く受け入れました。次男は家に招き入れると湯を沸かし、飯を与え、温かい寝床を用意してやりました。

次男の優しさに触れた大蛇は、すっかり気を良くしました。


翌日、次男が目を覚ますと、ドワーフの娘はいなくなっていました。

そして次男の枕元には金銀財宝が詰まった袋が置いてありました。

裕福になった次男は、その後も穏やかに暮らしました。



  □ □ □ □ □



人狼の恋歌



──ワオーン。ワオーン。


狼の鳴き声が聞こえてきた。

その遠吠えを聞いて、彼は今日も(とこ)に就く。


彼は貴族でした。身分の高い彼は毎日のように会食、縁談、政務といった日常が続き、飽き飽きとしていました。そんな彼にとって唯一の癒やしは、夜に月を眺めることでした。

夜空に浮かぶ月を気の済むまで眺めて、眠りにつくのです。


ある日、いつものように屋敷の窓から月を眺めていると、庭に黒い影がいることの気づきました。

彼は窓を開け、誰かそこにいるのか、と暗闇に叫びました。すると、影はのっそりと身体を動かし、彼を見上げました。

漆黒の体毛。

凶悪な牙と爪。

なびく尾。

瞳は満月のような黄金。

彼は一目見て、それが『人狼』だと気づきました。

ですが、不思議と恐怖は沸いてきません。なぜなら人狼の瞳には理性の光があり、彼に恐れを与えませんでした。


数秒ほど視線が交錯した後、人狼は背を向けて闇に包まれた山林の中へ消えていきました。

その日以来、彼は毎日のように夜になると庭を見るようになりました。

屋敷の窓から、あの黄金色の瞳を探して。

そして、その瞳を見つける度に彼の心は踊るのです。


そんな日を何度かくり返したある日。たまらなくなり、ついに彼は人狼を追って屋敷を飛び出してしまいました。

ですが、強靭な肉体を持つ人狼に追いつくことは出来ません。

それでも彼は走りました。人狼を追って。


やがて、木や植物が少ない開けた場所に付きました。

そこに人狼はいました。

彼は人狼に近づき、話しかけました。

まずは名を名乗り、毎日君を探していた、とても会いたかった、と言います。

それに対し人狼は、自分も同じだ、と少女のようは声で答えました。

彼はその時初めて人狼が少女だと気づきました。


二人は語らいました。

彼は人狼に、満月のような瞳が好きだと。人狼は彼に、一目惚れして以来、毎日のように屋敷へ来ていたと。

ひとしきり語り合った後、彼は人狼の少女に、これからも一緒のいたいと言いました。ですが人狼は、それは出来ないと言いました。


──なぜなら彼は人間で、彼女は人狼。


異なる者は、添い遂げることは出来ない。

そして彼女は姿を消しました。


その日以来、人狼が彼の屋敷に来ることはありませんでした。

ですが、毎日聞こえてくるのです。

ワオーンという遠吠えが。悲しみの混じった、歌のような声が。



  □ □ □ □ □



竜殺しの剣(ドラゴンスレイヤー)



昔々のお話です。

とある小さな村の近くにある洞窟に、真紅の鱗を持った赤竜が住み着きました。

そのせいで森から獣は逃げ、手に入る食料が少なくなってしまいました。

それを見兼ねた村長が、赤竜の討伐を提案しました。村のある場所は町からは遠く、冒険者が来ることは出来ないと判断したのです。

それに三人の男が名乗りを上げました。


一人目は身体が大きく、筋肉隆々の腕自慢の大男。

二人目は中肉中背の、村長の息子。

三人目は村の端に住む、小さな少年。


誰もが三人目の少年には無理だと嘲笑い、一人目の大男と二人目の村長の息子に期待しました。

大男と村長の息子は、それぞれ鉄の剣を持つとロクな作戦も立てずに意気揚揚と赤竜の住む洞窟へと向かって行きました。


洞窟の前に着くと大男は村長の息子に、先に入って様子を見てくるからここで待っていろ、と提案しました。

しかし目的は偵察のためでなく、一人で竜を倒して手柄を独り占めするためです。

しかし、竜相手にはまったく歯が立たず、大男は竜に飲み込まれてしまいました。

やがて、しばらくしても大男が戻ってこないことに腹を立てた村長の息子が洞窟に入ります。

そして大男同様、竜に飲み込まれてしまいました。


一方その頃、少年は山に登っていました。

山頂にあるという、村に伝わる伝説の剣を取りに行くためです。

約半日かけて、少年は山頂にたどり着きました。

そこには噂どおり、一本の見事な剣が岩に刺さっていました。

少年は剣の柄に手をかけ、しっかりと握ります。グッ、と力を込めるとあっさり抜けました。

シャランと音を立て、刀身が太陽の光を反射させました。


少年はその剣を持って、赤竜の住む洞窟へと赴きました。

そして、中で呑気に寝こけている竜に「えいや」と剣を振り下ろしました。

少年の剣は見事、竜の首を断ち切り、討ち取りました。

こうして少年は『英雄』となったのです。


この物語はフィクションの中のフィクションです。

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