32話 暗闇
「これは…………転送装置?」
ロルビス達の前に、黒塗りの円形があった。形は他の同じだが、明らかに色が違う。
これは先程ユウトが探索の魔法で見つけたものだ。まるで隠されているように、岩の下にあった。
普通の転送装置とは見た目が少し違うため、触っていいのか迷う。
「とりあえず……調べてみる?」
ユウトはロルビスに訊く。
「調べるって…………どうします?」
ロルビスはヘルヴィアに訊く。
「え、ええと…………どうしましょう?」
ヘルヴィアはユーミラに訊く。
「調べたいなら調べればいいのではないか?」
「じゃ、言い出しっぺのユウトが」
「オレかい……」
という訳で、ユウトが調べることになった。
試しに上に乗ってみた。反応ナシ。
魔力を送り込んでみた。反応ナシ。
「ひらけー、ゴマ!」
あの合言葉を叫んでみた。反応ナシ。
ちなみにロルビス達には変な目で見られた。
10分後。
「ダメだ。反応しない」
ユウトは諦めた。
そもそもユウトは魔法の道具とかわかりやしない。こういうのは専門家に任せるべきなのだ。
「という訳でロルビス、任せた」
「やっぱりそうなりますか」
この中で一番魔法に詳しいロルビスに丸投げしたユウトは転送装置から下りた。
そして、入れ替わりにロルビスが転送装置に乗る。
ユウトと同じように、魔力を流し込んだり、叩いてみたり、色々とやってみるが反応はない。
今度はロルビスは目に魔力を込めた。魔力の流れや魔道具に刻まれた魔力回路を見るための『魔視』だ。
「あー、これは古代魔法ですか……」
「何かわかったのか?」
ユーミラが訊ねてきたのでロルビスはそっちに目を向けてから説明した。
「古代魔法。まあ、そのまま古代の魔法です。使用方法や製造方法は同じなんですが、術式が複雑過ぎて意味が理解出来ないのが多いですね」
「『理解出来ないのが多い』ということは、理解できるのもあるのか?」
珍しくユーミラが魔法に興味を持っていた。ロルビスも嬉しくて少し饒舌になる。
「古代魔法作られた魔道具が至高魔具として王族貴族が独占してるのは知ってますよね? その至高魔具の術式を簡略化して量産したのが俺たちの普段から使っている量産型魔具なんです。大抵の至高魔具は術式の理解が出来ないし使用法もわからない上、中には宮廷の魔法使いが全員で何日もかけて作るような大規模なモノもあるので基本的には宝の持ち腐れなんですが、簡略化によって量産が成功したやつを量産型魔具として売り出しているんです。これはクレナに聞いたんですが、隣国のファンバリック王国は簡略化に成功した術式の開示に積極的で随分発展してるそうですね」
その後もつらつらと説明を続けるロルビス。
「はぁ、なるほど……」
目キラキラ。表情ウキウキ。
とても楽しそうに話すロルビスはまるで親に新しい玩具を買ってもらった子供のようだった。ユーミラは話しに一応付いていけてるようだ。
「ロル殿、それで何かわかったのか?」
「………………………あ」
転送装置の事をすっかり忘れていたのかロルビスは間抜けな声を漏らした。
「あー、えっと、わかんないです」
視線を戻すが、十秒足らずで音を上げた。
完全にお手上げらしい。
「そうか……」
何を思ったのか、ユーミラが転送装置の上に乗った。
「ふむ」
何をするのかわからないが、何かをするのは確かだった。
思案顔をしているが、きっと複雑なことは考えていない。
「───ふんっ!」
ユーミラは拳を振りかぶり、転送装置のど真ん中に叩き込んだ。魔力圧縮放出も使ったのだろう。もの凄い風圧がロルビスの頬を撫でた。
───バキッ。
ユーミラの拳に耐えかねて転送装置が割れる。
ヒビが放射状に広がり、歪む。
「ちょ、ユーミラさん! 壊しちゃダメですって!」
しかし、時すでに遅し。壊れた転送装置は元に戻らない。
「ああ、そんな───」
と、その時。転送装置が輝き出した。
「───え?」
「ふぁ?」
「へ?」
三者三様の声を漏らしながら、四人は光に包まれる。やがて光が収まる頃には四人の姿はこの階層から消えていた。
□ □ □ □ □
落ちていく。
薄い、暗い、闇の中を落ちていく。
やがて、地面が見えてくる。この落下に終わりが見えてきた。
「うぉぉぉぉおぉおおおおぉぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアァァァァァァァァァーーーーー!!??」
同時に、ユウトの命の終わりも見えてきた。
魔法の能力で減速し、停止する───それができれば良いのだが、ユウトにそんな冷静になれなかった。
ユウトは地面に真っ逆さま。加速状態を強制的に維持させられながら地面に激突する、はずだった。
ガシッと強い力に掴まれ、引っ張られる。
「おぇ───ろっ!?」
ズダァァァン!
暗闇に響いたそれは、着地の音だった。
力強い着地。これだけの怪力だ。ユウトはユーミラが助けてくれたと思った。が、
「あれ? ロルビス?」
そこにいたのはロルビスだった。
背中にはユーミラがおんぶする形で掴まっていた。右腕はヘルヴィアを抱えている。ユウトは左腕だ。
「あれ? ロルビスってこんな力あったっけ?」
「うん、俺も驚いてます」
これは何よりロルビス自身は自分が三人を抱えて着地できたことに驚きを隠せない。
ユーミラとヘルヴィアがロルビスから下りる。ユウトもロルビスの腕から抜け出すと周囲を見回した。
辺り一面薄暗い。下はとても滑らかでツヤツヤした石のようなもので、できている。これは『地面』というより『床』と表現した方がいいだろう。
ユウト達のすぐ近くには壁があった。それはどこまであるのかわからない程長かった。
しかし、それ以外は何もない。ただただ、薄い暗闇が続いていた。
「……………ユウト、気づいてますか?」
「なにが?」
「俺たち、魔力が使えないんですよ」
「──え?」
言われて、ユウトは自分の内側に意識を向けた。
「………………ホントだ」
だが、それは明らかにおかしい。
もしそうだとしたら、ロルビスは身体強化を使わずに、落ちたら即死するような高度から、しかも人を三人抱えて落下したのにピンピンしていることになる。
ロルビスの身体に───否、この空間内にはユウトも、ユーミラも、ヘルヴィアもいるのだ。
おそらく、この場にいる全員が何らかの影響を受けているはずだ。
「とりあえず、安全な場所を探しましょう」
そう言ってロルビスが歩き出した時。
────カツン。
足音がした。
ロルビス達は一斉にそちらを振り向く。そこには、
「おお………………………新しい、冒険者………か?」
無精髭が生えたみすぼらしい男が一人、角灯を持って立っていた。
『ここは一体どこだ!?』展開。
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