28話 火力馬鹿
「よっ、と」
身体強化を覚えてしまえばあとは簡単だった。
跳べば身体が紙の如く舞い上がり、片手で自分の体重を支える事も出来る。
ユウト達は五分とかからず機動要塞の脚を登り切った。
「ホントにここに住んでる人いるんだぁ」
活気のある人々の声。
ここには家などの建物以外にも色々あるようだ。道には露店が立ち並び、装備品から食べ物まで様々な物が売ってある。
露店の前で声を張り上げて客を呼び込む者から装備を買い揃える冒険者もいれば、普通の町にいるような平民も。
ユウトの横を、何人かの子供たちが駆け抜けていった。
町でよく光景もあれば、普段は見ないお祭りのような光景もある。ここはそんな場所だった。
「とりあえず、必要になる装備を買い揃えておきましょうか」
ロルビスの提案で露店を回ることに。
機動要塞を登ることを見越してユウトには装備を持たせていなかったので今の内ここで買っておく。
ロルビス達も、切らしてる物が無いか確認し、なければ買う。こういった細かい部分が意外と生死に関わってくるものだ。
強壮水薬。解毒薬。携帯食料。水袋。角灯。針や糸にピンセット。エトセトラ。そして、それらを入れるための術式が刻まれた背嚢。
ユウトは購入した物を背嚢にポイポイ投げ込む。そうすれば面白いくらい中に吸い込まれていく。魔法の道具ってスゴイ。
「これで……よしっ」
背嚢を背負えないので、聖剣は腰に佩びる。
「OK いつでもいいぞ!」
「それでは、行こう」
ユーミラを先頭に一行は進む。
いざ、迷宮攻略!
□ □ □ □ □
迷宮内に足を踏み入れても、すぐに魔物が襲ってくるわけでもない。だからといって油断が許されるわけでもない。
前衛にユーミラ、ヘルヴィア。中央にユウト。殿にロルビスが付き、警戒しながら進む。
迷宮内部は入り組んだ狭い道が続いていた。迷路のようになっているが、ユーミラとヘルヴィアは何回か来た事があるようで、その足取りには迷いがない。
材質は石造りのようになっていた。なぜ『ように』なのかと言うと、それが石なのかはわからないからである。
以前に調べようとした人が居るらしいが、硬すぎて削り取ることができない。それに現在は法律で迷宮などの古代の遺物を傷つけると犯罪にあたるらしい。
今ではすっかり研究する者はいなくなり、迷宮に来るのは隠されたお宝目当ての冒険者。
「へー、なるほど」
歩きながらヘルヴィアの説明を聞いていたユウトはなんとなく壁に触れてみた。
「なんだこれ、スベスベしてる」
見た目は石っぽいのに、滑らかでツルツルしていた。クイッ○ルワイパーをかけた床のように。
「あれ、そういえば」
ふと気になったロルビスは前方のユーミラとヘルヴィアに問いかける。
「ユーミラさんとヘルヴィアさんは今まで二人で活動してたんですよね? やっぱ斥候役はヘルヴィアさんなんですか?」
「いえ、私は罠とかの知識はありません」
「えっ!? でもユーミラさんは──」
ロルビスはユーミラに視線を送る。そこにはロルビス達の会話に気づかずにズンズンと突き進むユーミラが。
一応周囲の警戒はしているが、それはあくまでも魔物に対するもの。仕掛けられた罠などに対するものではない。
───カチリ。
示し合わせたようなタイミングで、何か嫌な予感がする音。
その発生源はユーミラの足元。
否が応でもわかる。わかってしまう。ユーミラがスイッチか何かを踏んだのだ。
続いて聞こえてきたのは「ガコンッ」という音。
「───ッ」
巨大な影がロルビス達の前に現れた。その下にはスイッチを踏んだ張本人のユーミラが。
影の正体。それは道の端から端まである巨大なギロチンだった。とても人間に使うような大きさではない。
「ユーミラさん!」
ロルビスは叫ぶ。このままではユーミラが頭から真っ二つにされてしまう──と、思ったが。
「ふん!」
ユーミラは止めてしまった。
巨人族に使うようなギロチンを、素手で両側から挟み込むように掴んだのだ。
「………………」
「すげぇ、ギロチンを真剣白刃取りする人初めて見た」
ロルビスは呆然とし、ユウトはよくわからないことを言う。
「ユーミラがいると斥候がいなくてもなんとかなるので困るんですよね………」
「うん、まあ、予想はできてたんですけど……。実際に見てみると……………」
やはり『格』が違う。
「ユーミラ。それ、壊さないでくださいよ」
「大丈夫だ。加減くらいできる」
「その台詞を百回くらい聞いて七十回くらい失敗したところを私は見ましたが?」
「……………………………………………………」
ユーミラはゆぅ〜っくり巨大ギロチンを押し返した。
ググググググッ、ガコッ。
という変な音を出しながらギロチンは元の位置に帰っていった。
怪力無双する女性が好きです。
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