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?????


「ありがとうございました〜」

自動ドアが開く際に鳴る音を言葉で表現するなら「ピンポンピンポン」だろうか。まぁそれがピンポンだろうがポンピンだろうが俺にとってはどうでもいい。

今、オレの頭の中にあるのは早くこのレジ袋に入っているアイスを食すことだけだ。


季節は夏。コンビニから一歩でも出ればそこは地獄。

ミーンミーンと(セミ)のせせらぎでも聞こえてくれば多少の気は紛れるだろうが、あいにくと聞こえてくるのは車のエンジン音やガヤガヤとした人の喧騒だ。

この灼熱地獄の中、海だ川だと叫ぶ奴らの気がしれない。

オレは歩道を歩きながら「今度、海行こーぜー」的な事を話しているリア充共をを睨みつけた。

決して、妬んでいるわけではない。

オレはレジ袋からアイスを取り出してパッケージを破いた。ひんやりとした冷気が手を伝わってくる。

アイスを口に運んでしゃくりと噛む。途端、アイスはボロボロと崩れ、口内に爽やかな味と香りが広がった。

「やっぱ夏はアイスだよなぁ」

独り言を呟きながらシャクシャクとアイスを噛み砕く。

やはり暑い夏といえばアイスだな。大事なことなのでもう一度言いました。


…………………………………………………………………………………。


虚しい!

はいはい、妬んでいますよ! 年齢=彼女いない歴なんですよ! オレは! 彼女欲しいよ!

せっかく田舎から上京してきたのに未だ彼女できません!

せっかくの夏なのに誰かと遊びに行く予定もありません!

彼女作ってキャッキャウフフしたい!

悲しさ誤魔化すようにムシャムシャとアイスを咀嚼する。

「うっ、くぅ……」

早食いをしたせいで頭がキーンとする。

「はぁ……どっかに美少女でも落ちてないかな…………………いるわけ無いか」

バカな考えを振り払ってアイスの棒を捨てる。今まで当たり棒を引いたことないけど、本当にあるのかな?

そんなことを思いながらポケットから原付バイクの(キー)を取り出してエンジンをかけた。

ブルルンッ、と音がしてバイクが排気ガスを吐き出し始める。

オレはヘルメットを被り、バイクに跨がるとアクセルを捻った。

バイクが発進し、公道を走る。顔に当たる風がなんとも心地良かった。

このままスピードを上げて爽快に走ってやる、と考えていると信号が赤に変わった。なんとも出鼻を折られるような気分だ。

が、バイクを止めたその時、誰かが「あぶねえ!」と叫ぶ声が聞こえた。

「え?」

目の前に巨大な影が現れる。

だがその正体を知る前に、オレの意識は闇に引き込まれた。



  □ □ □ □ □



そこは一面真っ白の空間だった。

どこまで行っても、白、白、白、白。白色以外何もなかった。

そんな場所でオレは──神崎(かんざき)優斗(ゆうと)は目覚めた。

「………ここは?」

頭がボーッとしている。オレはさっきまでなにをしてたっけ?

「あなたは死んだのよ」

「え?」

突然、どこからともなく声が聞こえてきた。

鈴を転がすような、でも大人っぽく、それでいてどこか儚い、不思議な声だった。

「オレが、死んだ?」

「そう、あなたは死んだの」

普通ならば夢を見てるのではないか、と疑うような状況だが、なぜか理解できた。

いや、それよりもオレが死んだ? まだ彼女できてないのに?

「そ、そんな………」

「なんか落ち込むところ違う気がするけど……本題に入るわよ。まずあなたは──」

「あ、いや、ちょっと待って」

「………なによ?」

途中で言葉を遮られたからか、不機嫌そうな声音になる。

「あの、姿見せてくれない? なんか声が頭に直接声が響いてきてるみたいで気持ち悪いんだ」

「はいはい、わかりましたー」

パァッと、白光が視界を覆い尽くす。

あまりの眩しさに目をつぶっていると、

「ジャジャーン! 女神シャーロットちゃんでぇーす!」

金髪の美女が出てきた。

腰まで伸びた美しい金髪。何故か頭に乗っけられている花の冠。豊満な身体。薄い白布でその豊満な身体を隠している。目鼻立ちの整った顔は大人っぽくもあり、子供っぽくもあり、愛嬌があった。

その格好だと『体にバスタオルを巻いただけ』に見えるので目のやり場に困る。なんともまあ、大きいこと。具体的にどこかとは言わないが。

「いや、誰だよ。女神シャーロットちゃんって」

なんかキャラからして駄女神くさい。ただ髪の色が金髪なので水を司ってはいないだろう。

「ねぇ、今何か失礼なこと考えなかった? ねぇ?」

「気のせいですよ」

ヤッベ、気づかれた。

「………まぁ、いいわ。初めまして神崎優斗くん。私は女神シャーロットよ」

にしても、ここはどこだろう。天界とかそのあたりかな?

「残念ながら、あなたは死んでしまいました」

あ、この流れは転生かな。

「ではあなたを異世界に転生させます」

「いやちょっと待てや!」

「なによ?」

「なによじゃねえだろ!?」

おかしい。絶対におかしい。何だそのテーマパークの「いってらっしゃ~い」ぐらいの感覚は! 夢見た異世界転生がこんなテキトーでいいのか!?

いや、よくない! オレはそんなの許さない!

「何言ってるのよアナタは。異世界転生よ? そこは『マジっすか、ヤッター!』って喜ぶところでしょう」

「いや喜びたいよ! 喜びたい、けど! いきなり異世界いってらっしゃ~いとか言われても不安になるわ! 食べ物とか文化とか、あと言語とかはどうするんだよ!」

「アンタ結構しっかりしてるのね」

「結構は余計じゃ」

「まあそう慌てなさんな。1からゆっくり説明してくから」

…………こいつッ。


かくかくしかじか。


「はぁ、なるほど。その世界には魔王がいて、人類が驚異に晒されてるからオレが勇者になって魔王を倒して欲しいと。そして食事や文化レベルは違うけどそこまで不便じゃないと」

「うん、見事簡潔にまとめてくれたね」

「はぁ、しかし異世界転生か……」

「なに? どうかしたの?」

「いや、その……」

オレは少し間を置いてから言った。

「まさか大学生で異世界転生するとは思わなくて」

現在、十九歳。平凡に大学生です。

「異世界転生って言えば、高校生だものねぇ」

女神も呟く。

憧れの異世界転生。高校を卒業してから諦めていた。けど捨てきれなかった、オレの夢。

「でもオレに魔王倒せるの? 魔法とか何も使えないけど」

「その辺は大丈夫」

パッ、と女神様の手にマジックのように真っ白な刀身の剣が現れた。

「それは?」

「勇者に託される。聖剣よ!」

その剣は、聖剣という名に違わず神々しい輝きを放っていた。

「名はシェリュイルガル!」

名前は少し変だった。

「この聖剣はアナタを所有者として認定させれば完全にアナタのもの。肉体の一部になると言っていいわ」

「へぇ、肉体の一部に……」

「もちろんそれだけじゃないわ。これはアナタのイメージした魔法を具現化できる、つまりアナタだけの固有魔法(オリジナル)を創ることも出来るわ。簡単に言えば、あなたはチート主人公になるのよ!」

ちょっと簡単にまとめ過ぎではなかろうか。まあ別にいいか。

「俺がチート主人公に………」

勇者となり、魔王を倒し、英雄として歴史に名が刻まれる。

なんと甘美な響きだろうか!

「と、言いたいところだけど」

………………………………………ん?

「実はさー、もう魔王倒されちゃってるのよね」

「………………誰に?」

「剣聖に」

「……………………………ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

オレの叫びが真っ白の空間にこだました。

一体なんのためにオレは異世界転生するのだ。


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