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14話 王国


「おお、ここがガリュートルの王都かぁ……」

ロルビス達はガリュートル王国の王都に来ていた。巨大な城壁の門をくぐって入国する。

門番によって規制されて並んでいた人々は中にに入った瞬間、瓦解。

各々が方向を変え、目的地へと向かう。ロルビスもその一人だ。


「賑やかですね」

ロルビスは隣に声をかける。

「うむ、そうだな。やはりこの国は活気があって良い」

返ってきたのは肯定。ユーミラは頷く。

ユーミラが頷くのに合わせてプラチナブロンドの髪がサラサラと揺れる。

「しかし、先程から注目されている気がするのだが」

「いや、それはまあ……」

ユーミラが美人というのもあるが、やはり背負っている物騒な大剣が原因だろう。

その格好では否が応でも目立つ。

「あ、あの、恥ずかしいんで早く冒険者ギルドに行きませんか?」

ヘルヴィアがおずおずと言ってきた。目立つのは得意じゃないらしい。

「そうだな、ロル殿の冒険者登録も済ませよう」

「………………」

なぜロルビスがユーミラ達と一緒にいるのか。

それはつい昨日の事に遡る。


「ではあいだを取ってロルビスさんは我々のパーティメンバーになるということで」

「うむ、異論はない」

───なんでそうなった!

ロルビスは頭を抱えるという状態に初めてなった。

そして後ろからは異論しかなさそうな目がロルビスを睨んでいる。もちろん、視線の主は男性冒険者達だ。

だがそれよりも言うべきことがあった。

「何が『間を取って』そうなるんですか?」

「ユーミラの希望です。決闘は引き分けだったわけですし、結婚とまでは行かずとも冒険者仲間として一緒にやっていきたいと」

「同じパーティなら一緒にいれるからな。いずれ落としてやるから覚悟しとくんだぞ、ロル殿」

「はぁ……」


という感じでロルビスがパーティに入ることになった。

もともと冒険者になるつもりだったがそれには許可証が必要だった。だがユーミラが推薦をくれるそうだ。

なんでも、四級以上の冒険者から貰った推薦があれば年齢に関係なく冒険者になれるらしい。

おかげでロルビスが家族から許可証を貰う必要がなくなった。

ユーミラとヘルヴィアは上級冒険者だ。そんな二人から推薦がもらえるならツァルティが言った荒くれ者に絡まれるような事はないだろう。



  □ □ □ □ □



「こ、ここが冒険者ギルド…?」

ロルビスは自分の考えが間違いであることに気づく。

たとえユーミラとヘルヴィアがそばに居ても絡まれる時は絡まれる。

今も明らかに挑発するような視線がビシビシとロルビスに向けられている。

「どうしたロル殿?」

「いえ、なんでもありません……」


視線から逃れるようにカウンターへ。可愛い受付嬢さんに話しかける。

「すみません、冒険者登録したいんですが」

「はい、登録には身分証明書か許可証が必要になりますが」

「あ、えっと持ってないんですけど──」

「私が推薦する」

「え?」

ユーミラの推薦に受付嬢が困惑する。

それもそうだろう、上級冒険者のユーミラが推薦したとなればそれ相応の実力を持っていることになる。

だが受付嬢から見ればロルビスは細身の弱そうな青年にしか見えないだろう。

当然、困惑もする。

「ロル殿の魔法の腕は見事なものだ。実力は私が保証しよう」

ズイッとユーミラが出てくる。

「は、はぁ……ユーミラさんがそう言うなら」

訝しみながらも受付嬢は了承してくれた。

ひとまず冒険者登録が出来る事に安堵するロルビス。

「それじゃあここに名前、年齢、種族を書いてください。ああ、それと──」

──ドンッ。

「え?」

目の前に人の頭ほどある大きさの水晶玉が置かれた。

「これはなんですか?」

「これは魔法の適性を測るものです。触れれば適性が高ければ高いほど強く振動します」

「………………」


まずい。非常にまずい事態だ。

触れればロルビスにまったく魔法の適性がないことがバレてしまう。

そうなればユーミラは嘘つきのレッテルを貼られてしまう。そして絶対にあの見るからに野蛮そうな冒険者達に絡まれる。

ツァルティの言った通りの展開になってしまう!

「? どうかしましたか?」

「い、いえ………なんでもないです……」

諦めて水晶に手をのばす。

ユーミラが推薦したロルビスがどれほどの適性を持ってるのかと自然と注目される。


手が水晶に、触れた。


「あれ?」と受付嬢。

「ん?」とユーミラ。

水晶はビクともしていなかった。いや、正確には少しだけブルブルと振るえている。

それでも魔法の適性がまったくないことには変わりなかった。

「えっと、あれ? 魔法が得意なんじゃ………」

受付嬢さんは戸惑っていた。

と、そこへ高笑いが響く。

「あははははははっ、なんだぁ? 凄腕の魔法使いがいるというから来てみればまったく適性のない能無しじゃないか! 一体どういうことかな?」

見れば金の刺繍入りの無駄にキラッキラなローブを着たイケメンがいた。後ろに四人も美女を侍らせている。

「ルーク……」

そうユーミラが呟く。それがこの男の名前のようだ。

「ユーミラさん、この人は?」

ユーミラはしかめっ面で言った。

「私と同じ等級(クラス)の冒険者だ」

「おいおいユーミラ、いくら魔法使いの仲間がいないからってそんな無能を引き入れるのか? 素直に僕のパーティに入ればいいじゃないか」

「それは前にも断ったはずだ。貴殿との交際の件もな」

ピクッ、とルークの顔が引き攣った。頭に怒りマークも浮かんでいる。

「ほぉ…………じゃあ僕よりその男の方が強いと?」

「もちろんだ」

ルークの笑みが完全に消えて無表情になった。

そしてロルビスを睨み付けると先端に緑色の宝石が埋め込まれた杖を取り出した。

「では試してやろうではないか! その男がどれほどの実力なのかを!」

叫ぶと同時、杖を掲げて詠唱を始める。

「《クライ(風よ) 切り裂(カラサ)───」

だがルークの詠唱が終わる前にロルビスが描いた魔法陣が火を吹いた。

キメ顔で魔法を放とうとしていたルークが炎に包まれる。

「うぁああああああああああああああ!? 熱い! 熱いぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

実際はローブに火がついただけでルーク自身は燃えていないのにドッタンバッタンとのたうち回る。

このままにしておいてもいいのだが、うるさいので水を生み出してかけてやった。

上に描かれた魔法陣から出現した水がルークをずぶ濡れにする。

しばらくルークは死体のように動かなかったが、いきなりガバッと起き上がると、

「はっはっはっはっはっは、今日は少ししくじってしまったが、次は容赦しないぞ! 覚悟しておけ! はーっはっはっはっはっはっ」

と言いながら無駄にキザっぽく黒焦げのローブを翻しながら去っていった。

「適性検査はこれでいいですか?」

「え? あ、はい、確かに魔法が使えるようですね……」

受付嬢は机の下から分厚い紙の束を取り出した。

「えー? 魔法適性がないのに魔法が使える? なにこれどういうことなのよーっ、こんなのマニュアルに書いてないのにー………」

完全に戸惑う受付嬢。それもそうだろう。

なにしろロルビスが使ったのは魔法ではなく『魔術』なのだから。

名付けられるのは後の時代なのでロルビスもそれが魔術だとは知らないが。

「えーっと、大丈夫ですか?」

「あっ、はい! 大丈夫です! もう大丈夫です! 登録済ませちゃいますね!」

受付嬢は、この人良い人そうだし問題ないよね! と登録を済ませた。

「なんか、アッサリ出来ちゃいましたね」

「仮にも三級冒険者を倒したのだから当然だろう」

しばらく待つと銀色のプレートがついた首飾りが渡された。

冒険者の(あかし)を首にかける。これでロルビスも冒険者の仲間入りだ。

冒険者の等級は十、九、八、七、六、五、四、三、ニ、一、と数字が少なくなるほど上の冒険者ということになる。

ロルビスは十級だから新米も新米だ。

ユーミラとヘルヴィアは三級なので同じ等級になるにはしばらくかかるだろう。

「よし、登録も済ませたことだし、早速依頼を受けるか」

「依頼を受けてさっき帰ってきたのにもう行くんですか、人の予定も聞かずに、この体力バカ」

「誰かが体力バカだ、バカ」

口論が始まってしまった。ロルビスは「まぁまぁ」となだめる。

「ロルビスさんも何か言ってください」

「そうですね、俺も少し用があるのでまた今度でいいですか?」

「む、ロル殿がそう言うなら仕方ないか」

ユーミラは残念そうにしながらも引き下がった。

「ところでロルビスさんの用事ってなんですか?」

「ちょっと家族に会いに」


変な名前の王国ですよね。

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