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13話 決闘

翌日。太陽がもう少しで顔を出すだろうという時間帯。

肺は朝一番の新鮮な空気で満たされ、鳥がチチチ、と鳴いている。

気持ちの良い朝が到来した。しかしやる事は決闘と物騒な事だ。まだ眠っている動物などからしたら迷惑以外の何者でもない。

だがロルビスとユーミラからしたそんなもの知ったもんじゃない。

決闘が楽しみで楽しみで仕方ないのだ。

ロルビスとユーミラの戦い方はかなり違う。

ユーミラは力任せのパワーファイター。ロルビスは身体強化と魔法を組み合わせた近距離から中距離の魔法戦闘。

どっちが強いのかと訊かれてもその場の状況次第としか言いようがない。

魔力操作にはロルビスに分があり、身体強化ならユーミラに分がある。

だが、ロルビスには魔法詠唱を省略するという強力な手札がある。十分に勝てるはずだ。

「それじゃあ、位置についてください」

ロルビスはアヴウェノシアを片手にユーミラと対峙する。

審判役としてヘルヴィアがその間に立つ。

「勝利条件は相手に降伏させるか、もしくは戦闘不能にするまで。それでいいですね?」

「はい」

「うむ、問題ない」

ロルビスはアヴウェノシアにいつでも魔力を流せるようにする。

魔力操作において重要なのは自然体であること。変に構えたりせず、落ち着いて魔力を操る。

ユーミラは大剣を構えた。彼女はおそらく、開幕速攻で真っ直ぐ飛び込んでくるつもりだ。

あの大剣の重量と速度が足されればロルビスは止められないだろう。

「それでは……開始!」

ヘルヴィアが合図を出した。

ロルビスの予想通り、ユーミラは真っ直ぐ突っ込んで来た。

巨大な大剣を振りかぶる。

ロルビスは身体強化、ユーミラの大剣を受け止めることなく後方に下がって躱す。ゴォッ、と風圧がロルビスの頬を撫でた。

ユーミラは止まらない。身体強化によって超人以上の力を得た脚は地面を穿つ。

ロルビスはアヴウェノシアに魔力を走らせた。

刀身が変形し、五本の槍となってユーミラに殺到する。

必中の攻撃。しかしユーミラがとった行動は回避でも防御でもなく、前進。さらに力強く踏み込んだ。

ズンッ、と足が地面を踏み締める。

同時に大剣で、魔力放出も利用してアヴウェノシアを薙ぎ払う。

それだけで風が渦巻き、突風が分身刀を迎え撃つ。

『攻撃は最大の防御』をユーミラは見事に体現してみせた。

ユーミラとの距離が縮まる。ユーミラがあと数歩踏み込めばあの大剣の間合いになる。

それを防ぐため、ロルビスは虚空に魔法陣を描いた。

数は三つ、紅蓮の炎がユーミラに強襲する。

だが、それでもユーミラは止まらない。

ユーミラは大剣を振り抜いた体勢のまま魔法攻撃に体当たりした。

ごうごうと燃える炎を物ともせず突破する。

間合いに、入った。

「ふっ」

ユーミラは大剣を一閃した。

大剣がロルビスの身体に届く、寸前で大剣の軌道がズレた。

原因はロルビスの横で淡く光る魔法陣。

ロルビスは風の障壁を張ることでユーミラの大剣を逸らしたのだ。

大剣を振り抜いたまま無防備なユーミラの胴体にアヴウェノシアを叩き込む。

弾き返されたアヴウェノシアの刀身が、蛇のように鎌首をもたげてユーミラに襲いかかった。

その時、ドンッ! と何かが吹き飛ぶような音がした。砂埃が舞い、ロルビスの視界を覆う。

ロルビスは風で砂埃を上空に押し上げる。

ユーミラが後退していた。先程の音はユーミラが地面を蹴る音だったのだ。

「やはりロル殿は敵に回したくないな、厄介だ」

「それは俺も同じですよ」

ユーミラのような力で押すタイプはロルビスが最も苦手とするところだ。

技術や小細工を真正面から叩き潰す。圧倒的な力の前では、あらゆるものが意味を成さなくなる。

相手が『圧倒的』でなくてもただでさえ苦戦するのだから尚更だ。

「もう限界か? ロル殿」

あからさまな挑発。ロルビスは笑顔で返す。

「まさか、まだまだ魔力量には余裕がありますよ」

ロルビスは全身に魔力を巡らせる。

「それじゃ、行きますよ?」

ユーミラがいつでも対応できるように大剣を構えた。

ロルビスはユーミラに向かって走り出した。身体強化を使っての走りだ、常人なら目で追うことすら敵わない。

だがユーミラが常人な訳がない。碧眼は確かにロルビスの姿を捉えていた。

でも、それでいい。

ユーミラとの距離が縮まる。ユーミラが大剣を振りかぶる。

その瞬間、ロルビスは加速した。

十メートルはあった距離を、一瞬で詰める。

アヴウェノシアの刀身を伸ばさなくても届く位置になる。

キィンッ、と音を立ててアヴウェノシアとユーミラの大剣が交わった。

ユーミラは突然の加速に驚いていた。一体何をしたのか。

しかし、ユーミラは思考を途中で中断されることになる。アヴウェノシアの刀身が変形し、剣先がユーミラに襲いかかったからだ。

ユーミラはすぐさま全力でバックステップ。ロルビスから距離を取った──はずだった。

ロルビスは変わらず目の前にいた。

当然、アヴウェノシアもそこにある。おかげでユーミラは身体を後ろに反らして無理矢理避ける必要があった。

さらに追撃されては敵わないので右足を一閃、反撃を図る。

「ブオン!」空を切る音がした。空振りだ。

ロルビスはユーミラと同じようにバックステップして後退していた。

(なんだ? あの速さは……)

異様なほど速い。何か魔法を使った気配もなかった。

おそらく身体強化を使っているはずだが、先程まではあそこまで速くなかった。

何をした? 何が起きている?

だがユーミラは再び思考を中断されることになる。

「───ッ!」

ロルビスが、すぐ目の前に現れたからだ。

現れた、と言っても瞬間移動したわけではない。ロルビスは、ただ速く、一切の予備動作もなく接近しただけなのだ。

その『だけ』に、ものすごく苦戦させられる。



動きには予備動作がある。

走る時、高くジャンプする時など、様々な場面で見受けられる。

その予備動作から次の行動を予測することもまた可能。ならば当然、予備動作をなくし、敵に次の行動を予測させないようにするだろう。

縮地法。誰が考えたのかわからない。何の目的で編み出されたのかもわからない。

ロルビスがわかるのは、予備動作を減らし、距離が縮んたように錯覚させる走法だということ。

まったくもって同感だった。

ロルビスは魔法使いだ。だが近接戦闘が不可能という訳ではない。

とはいえある程度距離を取った戦闘が最もロルビスの得意とするところ。

完全なる近接戦闘では不利になりやすい。

予備動作をなくして素早く動く縮地法というのはロルビスにとって強力な手札になる。

しかし、ロルビスは体術や剣術などの武術を知らなかった。それは縮地法も同じだ。

そこでロルビスが使ったのが魔力放出だ。足裏から魔力を放出し、推進力として利用する。

魔力放出によって得た推進力で、予備動作を減らし、縮地法を強引に成立させる技だった。



(なるほど、これが戦慄というものか)

ユーミラはロルビスの攻撃を防ぎながら昔の事を思い出した。

こんなふうに翻弄されたのはいつ以来だろうか。

父親に稽古をつけてもらった時。新米冒険者だった頃、思わぬ敵と出くわした時。

どれもが苦い思い出だ。思い返すだけで恥ずかしい。

でも、今は違う。今は、そう、楽しいのだ。自分は今、楽しんでいる。笑っている。

自然とユーミラの口の端が吊り上がっていく。

何度目の交錯だろうか。キィンッ、と金属音が鳴る。

反撃を試みるもロルビスはすぐバックステップ。大剣の届かない位置に離れる。そしてまた強襲する。そのくり返し。

さらに合間に魔法を打ち込んでくるのだからユーミラは大きく回避せざるを得ない。そこに襲いかかるアヴウェノシアの刀身。

見事な連続攻撃だ。追い詰められる、という状況に久しぶりに直面した。

(ああ、やはり……)

やはり、本気を出さないと勝てない。

ユーミラは左手に括りつけていた円盾を外す。

本気を出すには大剣も邪魔だ、一旦捨てよう。

つまり、投擲(とうてき)

ユーミラはロルビスが離れたタイミングを見計らって大剣を投げる。

ロルビスは急停止、飛んできた大剣を躱す。

目の前を通り過ぎた大剣は真っ直ぐ飛んでいき、木を薙ぎ倒す。大剣は木を何本か倒してようやく突き刺さった。

ロルビスは意図がわからなかった。なぜこの状況で強力な武器を捨てるのか。

「ロル殿、少し本気を出そう」

その答えはすぐにわかった。

ユーミラの魔力が高まっていく。

ロルビスはユーミラの魔力量を感じて、悟った。

これはまずい、と。

ロルビスが回避行動に移った。その瞬間、


地面が、()ぜた。


轟音、そして暴風。さらに衝撃がロルビスを襲った。

この時、ロルビスが咄嗟に防御態勢に入ったのはただの直感だった。だがその直感に救われた。

ユーミラがロルビスのすぐ目の前に現れた。先程のユーミラと同じ感覚に陥る。

もちろん、ユーミラが瞬間移動したわけではない。しかしロルビスのように魔力放出を使ったわけでもない。

純粋に、速い。

魔力量はロルビスの方が多い、圧倒的と言っていい。ただユーミラは己の肉体に注ぎ込める魔力の量が、『器』が違うのだ。

武器を捨てたのもこれが理由。ユーミラの強化が強すぎて武器が耐えられないのだ。

ユーミラの拳が繰り出される。ロルビスはそれをアヴウェノシアで防ぐ。

「がっ…………!」

防御は意味をなさなかった。拳を受け止めたアヴウェノシアの刀身が折れ曲がる。

剣が拳に負ける。ユーミラの拳は刀身ごとロルビスの腹に叩き込まれた。

ロルビスは後方に吹き飛ばされる。

衝撃、後に浮遊感。空中で一回転して体制を立て直し、着地。

ロルビスはアヴウェノシアに魔力を流し、元の形に戻した。

腕がビリビリと痺れる。腹がズキズキと痛む。とても人間の攻撃を喰らったとは思えなかった。

ユーミラが本当に人間なのか疑いたくなる。

だが、ユーミラを相手にロルビスが思考に耽る時間などない。

ドンッ! と。

今度はユーミラではなく、衝撃そのものが飛んできた。

「うっ、おおおおお!」

ロルビスは自ら後ろに下がることで衝撃を減らす。

ユーミラを見ると拳を振り抜いた体制だった。常識で考えれば届かない距離。

だが、今自分が相対している規格外(ユーミラ)に常識など通用するだろうか?

否。断じて否。

常識など、通用するはずもない。

「ハッ」

ユーミラが裂帛の気合いとともに拳を振り抜く。

それに合わせてロルビスは右に回避した。その直後、ロルビスが居た位置を衝撃波が通り抜けた。

思った通りだ。ユーミラが使ったのは、魔力放出。

ただしロルビスが使った縮地法の魔力放出と違い、放出する前に圧縮をする。圧縮した魔力で大気を弾き、衝撃として飛ばしているのだ。

ロルビスが縮地の魔力放出の際に圧縮をしなかったのは、負担がかかるからだ。

ロルビスとしては足を失うのは避けたい。控えざるを得なかった。

しかし、圧縮放出の負担に耐えられるのなら話は別。

ユーミラは、人の形をした化け物だ。

負担に耐えられる肉体を持っているユーミラなら、いくらでも使うことが出来る。

「ハァアアアアアアアアア!」

ユーミラが拳を振るう。今度は一発ではなく、何発も。

幾本もの衝撃が並んで壁となって迫る。

ロルビスは全速力で駆けた。あれに当たったら無事では済まないのは明白。

駆ける。駆ける。駆ける。ユーミラの周囲をひたすらに駆ける。

走りながらロルビスは虚空に魔法陣を描く。

魔法陣から風刃が出現する。生み出された風刃は空を切ってユーミラへ飛んでいき、

「ハァ!」

かき消された。

拳から放たれた衝撃波が風刃を飲み込んでロルビスに飛びかかる。

まさか相殺すらさせてもらえないとは。だがそれはあらかじめ予想していたこと。ユーミラには十分ありえることだ。

ロルビスは魔法攻撃をやめてユーミラの周囲を再びぐるぐる回る。

途中、誰かが吹き飛ばされるような音と悲鳴が聞こえた気がするが、きっと気のせいだ。今はあの攻撃を避けることに専念する。

「どうしたロル殿! 避けてばかりではないか!」

挑発にも乗らない。焦らず、冷静に。

ユーミラの周りを何周も走り、衝撃波のリズムも掴めた。そろそろ頃合いか。

ロルビスはユーミラが衝撃波を放とうとしたところで急ブレーキ、停止する。

むっ、とユーミラの動きが一瞬止まった。

その隙に逆方向へと駆け出した。魔力放出も利用して急発進する。

フェイントをかけた。ロルビスがようやく動きに変化を見せる。

ユーミラが拳を引き、反対方向に走り始めたロルビスに狙いを定めた──その次の刹那。

ドンッという音が鳴り、ロルビスが直角に曲がるとユーミラに向かって走り出した。

二重のフェイント。それがロルビスの狙いだった。

地面が軽く抉れている。魔力の圧縮放出を使った証拠だ。

だがロルビスにかかる負担は足が少し痛むくらいだった。

ロルビスは圧縮放出を使う・使わないのどちらかなどと極端ではない。

圧縮放出を“軽く”使うことだって出来るのだ。つまりロルビスは魔力の圧縮度を制御した。

そうすることで魔力の圧縮放出を可能としたのだ。

不意を突いた攻撃だ。だが不意を突いたとはいえユーミラが対応するには十分な距離がある。

拳を引き、迎撃の体制に入る。

魔法を発動してもかき消される。アヴウェノシアを伸ばしても大した威力はない。

ロルビスに、打つ手はなかった。


ユーミラはこの時、気づくべきであった。

ロルビスがアヴウェノシアを右手ではなく、左手に持っていたことに。


何かが飛び出した。

太陽の光を反射し、どこまでも伸びていきそうな銀色の刀身。アヴウェノシアだった。

アヴウェノシアの刀身が今まさに振り抜こうとしたユーミラの拳に絡みつき、固定する。

ユーミラがアヴウェノシアに気を取られている内にロルビスは右手に魔力を込めた。

人間には利き手がある。それはエルフのロルビスも同様だ。

そして、魔力にも身体の流しやすい部位というものがある。そういった部分は大抵、利き手や利き足だ。それはロルビスも例外ではない。

ロルビスの場合は右手。つまり、魔力の圧縮放出をした時に最も威力を発揮する場所。

ロルビスの拳がユーミラの腹に打ち込まれる。

同時に、ロルビスは右手の魔力を圧縮、そして開放する。

ドンッ!

衝撃を、直接叩き込む。

どんなに身体が頑丈だろうと、中身までを守ることはできない。

ロルビスの放った衝撃は、ユーミラの内蔵を正確に穿った。

「かはっ」とユーミラの肺から空気が押し出される。

「ぐっ、あぁぁぁぁ……!」

一方、ロルビスは右腕に激痛が走る。

熱い。まるで溶岩を直接かけられたかのように熱い。

ロルビスは腕を治すために回復魔法を使おうとした、その時。

──ガシッ。

右手を掴まれた。

「は? え?」

ロルビスは驚いて顔を上げる。

ユーミラだった。あの衝撃を受けてなお、倒れることなく立っている。

もう身体も限界に近いだろう。足が震えている。

それでも、ユーミラの不屈の精神が身体を支えているのだ。

「なっ、んの、これしきいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

ごっちーん! と、ユーミラの頭突きがロルビスの頭に打ち下ろされた。

頭突きを受けたロルビスはフラフラと数歩後ろに歩いた後、倒れた。



  □ □ □ □ □



ムギュウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜。

「……………んぐっ………んん?」

ロルビスは息苦しさを感じて目を覚ました。

何かが身体に絡みついている。凄く強い力だ、引っ剥がせない。

瞼が重い。体はまだ睡眠を求めている。

寝ぼけた眼を擦って首だけ動かして周りの状況を確認する。

ここは簡易テントの中のようだ。誰かが気を利かせてくれたのだろう、毛布がかけられている。

入口の隙間から光が漏れている。時刻はおそらく昼前。かなり寝ていたらしい。

「……ふぅん…………んっ」

「ん?」

隣から妙に艶めかしい声が聞こえてきた。毛布に膨らみがある。その中からだ。

恐る恐る、毛布を取ってみる。

パサリ、とプラチナブロンドの髪がこぼれ落ちた。

ユーミラだった。あどけない顔で寝ている。

「え、あの、ユーミラさん? なぜここで寝ているんです? 俺はあれからどうなったんです?」

呼びかけてもユーミラは起きない。

ロルビスはユーミラの肩を揺さぶろうとして、

「──ッ!」

右手に鋭い痛みが走った。

先程のような激しい痛みはもうないが、完全に直ったわけではなかった。

しばらく開いたり閉じたりして様子を見る。

使えなくなったわけではなさそうだ。

「ロルビスさん、起きましたかってまたですかユーミラ!」

と、その時。ヘルヴィアが入ってきた。

そしてロルビスとユーミラの体制を見て声を荒げる。

「あーもう! あなたはいつもそうやってー!」

ズカズカと歩み寄るとユーミラを揺さぶる。

「ヘルヴィアさん、俺はどれくらい寝てたんですか?」

「んー、だいたい七時間くらいですよ」

結構な時間寝ていたようだ。

「あと、なんでユーミラさんは俺に抱きついてるんです?」

「抱き枕代わりです。よく私もされます」

「はあ、そうなんですか」

ユーミラはまだロルビスに抱きついている。その様子だとしばらく離れてくれなそうだ。

「ヘルヴィアさん、決闘はどうなったんですか?」

ヘルヴィアはピタリと動きを止めるとロルビスに向き直った。

「あー、やっぱり、俺は負けたんですね」

「いえ、違います。引き分けです」

「引き分け?」

コクッとヘルヴィアは頷く。

「実はロルビスさんが気絶した時にはすでにユーミラは魔力が枯渇状態で、ロルビスさんが気絶すると同時にユーミラも気を失ったんです」

「魔力切れを?」

「はい、ユーミラの身体強化はすごく強いんですけど、魔力消費量が多すぎてすぐ魔力切れを起こすんです。おかげでどれほど私が迷惑したことか!」

ムキーッ! とヘルヴィアが怒る。

おそらく、依頼先でユーミラが魔力切れを起こすたびにヘルヴィアが担いで帰ったのだろう。

「じゃあ、俺がユーミラさんと結婚するっていうのはどうなるんです?」

「ロルビスさんが起きてから決めようって話だったんですが、ユーミラが起きてからですね」

ヘルヴィアはすやすやと気持ち良さそうに眠るユーミラの頭を軽く小突く。

「ふぅ……にぃ……」

ユーミラはロルビスから毛布を奪い取ると寝返りを打った。少し寒い。

「あのー、ところでヘルヴィアさんはなんでそんなにボロボロなんですか?」

ロルビスの言う通り、ヘルヴィアはボロボロで体中傷だらけだった。

「………………が」

「はい?」

「誰かさんが誰かさんの周りを走り回った時に衝撃波が飛んできたからですよ?」

「あー、なんかすみません」

とりあえず回復魔法でヘルヴィアの傷を癒すロルビスだった。


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