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夏詩の旅人

それぞれの夏(前篇)「夏詩の旅人新章1」

作者: Tanaka-KOZO

 1993年5月。

サニー・ミュージック 赤坂ツインタワービル本社。

僕はこの日、ここで行われる大規模なオーディションに参加していた。


大学を卒業後、大手アパレルメーカーに勤務していた僕は、当時悶々としていた。


だって、同僚たちとカラオケに行けば、そこで女子社員が歌う曲は、櫻井ジュンの歌ばかり…。

有名アーティストのCDアルバムを購入し、参加ミュージシャンのクレジットを確認すると、そこにはいつもギタリスト「Kazz」の名がある。


そう、2人はかつて、僕が大学時代に一緒にバンドを組んでいた仲間たちだった。


彼らはプロミュージシャンとして、着々と実績を積んでいた。

だが僕は大学卒業後、普通に企業へと就職した。


もし僕があの時、音楽の世界に飛び込んでいたら、どうなっていたのだろう?

そんな事を考え出していた僕は、彼らの活躍を見る度に、悶々としていたのだった。



 そんな時に、大手レコード会社のサニーが募集した大規模なオーディション。


エントリーしたら、あとはオリジナル曲の入ったテープさえ持参すれば、ダイレクトに音楽プロデューサーが、応募者全員と面談してくれるというオーディションだ。


そのオーディションは2日間かけて行われ、1日の参加者は1500人を超えた。

僕は自分が作詞作曲した曲を4曲持って、そのオーディションへエントリーしてみる事にした。



 だけど実は、その参加は、ほんの軽い気持ち。

単なる腕試しというやつだった。


なぜなら、僕が持参した録音は、自分で全てバッキング演奏も録音したものだったからだ。

こんなお粗末な演奏で、大手サニーのオーディションが通る訳がないからね。


その演奏は、僕が20歳の頃に宅録したものだ。

20歳の頃までまったく楽器が弾けなかった僕は、大学3年の春休み、一念発起してエレキギターを購入した。


既に、大学1年の時にはベースを挫折していた僕だったが、作曲の為にベースは多少利用していた。

その甲斐あってか、エレキギターは購入後、猛練習の甲斐もあってか、一ヶ月半程で、なんとか簡単なギターソロまでは弾ける様にはなった。


そして僕は自分の曲を記録として残す為に、MTRとドラムマシンを購入して、全16曲を録音した。

ドラムをプログラミングし、ベースを弾いて、ギターを被せて、歌やコーラスパートを1人で入れた。


そんな、素人丸出しで、7年前の録音状態の曲を持って、僕はオーディションへと参加したのだった。


でも仕方ない…。

だって僕の手元には、ちゃんと録音されたものは、それしか無かったんだ。


どうせダメで、けちょんけちょん言われるであろうと分かっていたのだが、それよりも大手サニーのプロデューサーの反応を、とにかく僕は聞いてみたかったのだ。

学生時代の僕が、あの当時に、果たしてプロに通用したのかどうかと…。




 2日目の最終日に参加した僕は、ツインタワービルに着くとエレベーターに乗って、オーディション会場へと向かった。

オーディション会場がある階層に着くと、僕は受付で番号札を貰い、広い部屋へと通されたのだった。


そこには、大勢のミュージシャンたちが既に待機していた。


髪をツンツンに立て、ビスが飛び出たパンク風の革ジャンを着た男や、赤い髪に染めた女。

広い待合室には、そんな、いかにもミュージシャンという格好をした人たちが大勢詰め込まれていた。


そんな中、一般人の服装をしていた僕は、妙に浮いている感じだった。

ここでオーディションが行われていなければ、誰も僕の事をミュージシャンだとは分からない恰好で僕はいた。


前日同様、この日の参加者も大人数過ぎて、僕らはイスに座らされる事もなく、その広い空間に立ちすくんで待たされた。

そしてサニーの女性スタッフから次々と呼ばれる番号。


そして、僕の番号が呼ばれた。

僕は奥の部屋へと通される。


通されたその部屋も広かった。

対面で座れるテーブルがあちこちに設置してあり、その各テーブルの上にはラジカセが1台だけ置いてあった。


僕は辺りをチラチラと眺める。

先ほど待合室で見かけたパンク風の男や、赤い髪の女も、それぞれ別のテーブルに座っている姿が見えた。


彼らは先ほど待合室で見かけた態度とは打って変わって、おとなしい猫のように背中を丸めイスに座り、目の前のプロデューサーへ愛想笑いをしている。

一方プロデューサーは、笑顔1つ見せず、席に着く早々、彼らのテープをラジカセにセットし、イヤホンで聴いた。


そして20秒ほど聴くと、すぐにスイッチを停め、パンク男と何か話し出した。

2分ほど話すとパンクの男は、その場から帰えされて、次の参加者がその席へもう座らされた。


次々と入れ替わる、テーブルに座る参加者たち。

会場では、持参した曲をまともに聴いて貰えた者は誰もいない様だった。


そりゃそうだろう。

2日で3000人以上と面談しなきゃならないんだから、モノになりそうもない参加者は、どんどん帰えらせなきゃ、こなし切れないからね。



「座って…」

僕の担当になったメガネの男性が、素っ気なく僕に言う。


「宜しくお願いします…」

僕はそう言って軽くお辞儀をすると席に着いた。


僕は当日、カセットを2つ持って来ていた。

プロデューサーが効率よく聴ける様に、片面10分のテープのA面、B面にそれぞれ1曲ずつ録音したテープを用意した。


「この中で1番聴いて欲しいのを、1曲だけ聴かせて…」とプロデューサー。


僕は4曲持参していたが、1曲しか聴いて貰えないのか…と、少しがっかりした。


「じゃあ、これで…」

僕はそう言うと、相手男性にカセットを渡した。


男性が僕の曲をイヤホンで聴きだす。


「ん!」と、前のめりに反応を示す男性。


それから彼は、僕の曲を途中で停めずに最後まで聴いてくれたのであった。


1曲聴き終えたプロデューサーは、テープをひっくり返して2曲目も聴く。

そしてそれが聴き終えると、次のテープも手に取り、ラジカセにセットした。


結局プロデューサーは、1曲しか聴かないと言いつつも、僕が持参した4曲全てを聴いてくれたのであった。

曲を聴き終えたプロデューサーの表情は、先ほどとは打って変わって、穏やかで友好的な表情へと変わっていた。



「結構上手いじゃない?」とプロデューサー。


(上手い?)


僕は意外だった。

だってそのカセットテープは、僕がギターを始めてから一ヶ月で録音したものだったからだ。


大手サニーのプロデューサーが、僕の素人丸出しの演奏に、まさかそんな事を言うなんてと驚いた。


僕は録音したのはハタチの頃ものである事を、正直にプロデューサーへ話した。



「なら今の君の作品が聴きたい」

今度はプロデューサーが僕にそう言った。


「これは7年前の作品なんだよね?」

「今回のオーディションは、人材を確保して育ててからデビューさせるものじゃなく、すぐプロとしてデビューさせる実力のある人…、つまり、現在プロ並みに完成された人だけが対象のオーディションなんだよ」


「はぁ…」と僕。


「だから今、君がどれだけやれるのか分からないから、このテープじゃ判断できない。いつでも構わないから、現在のモノを録音して、また聴かせてくれないか?」


「後日、新曲を持ってくれば良いんですか?」


「ああ…、そうだね。今回のオーディションには間に合わないが、いつでも構わないよ」


「アポなしでも?」


「ああ…、アポなしで構わない」


「君は今後、どういう風にやって行きたい?」

「歌手として?、それとも作曲家?、作詞家?」


僕はまさかこんな展開になるとは、夢にも思ってなかったので、びっくりした。


それから僕とプロデューサーは、いろいろと今後の方針を話し合い、気が付くと1時間半も話し込んでいたのだった。


帰り際、僕はあの広い待合室で、女性スタッフに番号札を返却する。

待合室では、まだ大勢の参加者が待機していた。


「一体、90分もどこに行ってたんですか!?、何度も呼んで探してたんですよぉ!」

番号札を返却した僕に、女性スタッフ数名が詰め寄って来てそう言った。


「今、終わったんです…」


僕がそう言うと、女性スタッフたちは驚き、一歩下がって僕を嘗め回すように眺めた。

そのやり取りを観ていた他の参加者たちも、僕の周りからサーッと引けて、その場に空間が出来た。


僕はモーゼの十戒のシーンみたいな感じで、開けたスペースをスタスタと歩いて待合室を出ていく。

僕の事をみんなが見つめていた。


僕は優越感を味わっていた。

だって、こんなに驚くって事は、この2日間、3000人もオーディションを受けたのに、誰もここまで話が進んでいなかったという事じゃないか!


僕は手応えを感じていた。

学生時代に僕の作った曲は、現在でも確実に通用するのだと…。


それから僕は、翌週末には渋谷のKEYで、更にトラック数が多いレコーディングミキサーを購入した。


 だが、それから間もなく仕事が忙しくなり、そのままそのミキサーを使う事なく数年が経過してしまった。

僕は、せっかくアポなしでも会ってくれると言ってくれた、サニーのプロデューサーの好意に応える事なく、その後、彼とは2度と会う事はなかったのであった。






 1998年

僕はアパレル業界から転職し、サーフ系雑誌“F”で働いていた。

年齢は32歳になっていた。


“F”での僕は、雑誌に載せる広告営業と、日本各地のサーフポイントの近くにある、宿や飲食店の取材をし、それを記事に書いていたりする仕事が中心であった。

他には月一くらいで、社が主催するDJイベントに駆り出されては、深夜の青山のBARで、集まって来た女性客たちの話相手などもさせられた。


その頃は、仕事が落ち着くと3ヶ月に1回程のペースで、僕は都内の小さなライブBARで弾き語りライブをやり始め出していた。


でもそのライブは、30人程の客の前でやる、小規模なライブであった。

プロを目指すとか、そんな事を意識した音楽活動では決してなかった。






7月


「アニキ、カミシャクの「ARROWS」にでも、これから行きますかぁッ!?」

新卒で後輩社員のグリオが、僕にノリ良く言う。


「サキのとこか?」と僕。


「そうです。サキちゃんのとこです」とグリオ。


 金曜の週末。

僕ら2人は新宿で飲んでいた。


カミシャクのARROWSとは、上石神井にあるBARの事だ。

ARROWSには、サキという19歳の女の子がバイトをしていた。


サキは新宿にある「EXP」という音楽専門学校に通っていた。


彼女は、高校卒業と同時に福岡から東京へ上京し、プロのドラマーを目指していた。

小柄で笑顔が可愛い女の子であった。


EXPの女子寮が上石神井にあったので、彼女は上石神井の駅前のBARで、深夜アルバイトをしていたのだ。

ちなみにそのBARは、ガールズ・バーではない(笑)


僕らが初めてARROWSに行ったのは、その年の4月に入ってすぐであった。


カウンター越しでサキと話しているうちに、僕らは仲良くなり、店が終わる深夜2時になると、いつも隣にある居酒屋「三男坊」で待ち合わせをし、始発まで一緒に飲んだりしていた。


「これ…、お土産…」

お座敷席の正面に座るサキがそう言って、僕に包みを渡した。


お土産は「博多通りもん」というお菓子だった。

サキは、GWに一旦実家へ帰っていたのだ。


「あっ、これ知ってるよ!、美味いんだよな」

僕は、当時姉が福岡に住んでいた関係で、その和菓子を食べたことがあった。


「なに?、なに?、アニキだけ?」とグリオ。


「だって…、この前ヤマダ電機に買い物付き合ってもらったりしたから…」

サキが少し困った顔で、グリオへそう言う。


 5月頃、グリオの企画で僕が車を出し、ARROWSの女の子たちと多摩川へBBQに行った事があった。

その頃から僕とサキは、2人で会う機会が増えていたのだった。


「ねぇ、グリオさんはどうして彼の事を“アニキ”なんて呼ぶの?」

サキが前々から聞きたかったであろう質問を、グリオにぶつけた。


「それはね…」

僕がグリオに変わって説明を始めた。


「俺が新卒のグリオと、初めて2人で飲んだ時の話だ」

「どこで飲もうかと、歌舞伎町をうろついてたら、突然客引きのニイチャンに声を掛けられたんだ」



以下、回想シーン。


「アニキィ~!、どこで飲むか決まってるんですかぁ~?、もしまだなら外国人BARはいかがっすかぁ~?」

若い客引きの男性が、僕に声を掛けて来た。


「外国人BAR~?」と僕ら。


「そうですよ!、ロシア、フランス、スペイン、ルーマニアと揃ってますよアニキィ~!」(客引き男性)


「いや…、いいよ俺らは…」(僕)


「そんな事言わないで下さいよアニキィ~!、ル~マニアッ!、ル~マニアはいかがっすか、アニキィ~ッ!」(客引き男性)


ははははは…。

客引き男性の、そのフレーズとノリがツボにハマったグリオが笑う。




「という訳で、以来こいつは俺の事を、あの客引き男のマネをして、“アニキ”と呼んでいるんだよ」

「だから別に、俺の事を敬って言ってるわけじゃないんだ」


僕がサキへ説明した。


「へぇ~、そうなんだ?」

大したオチもない話だが、サキは一応反応してくれた。



「あっ…、それから、今日は報告があるんだぁ♪」


思い出す様にサキが、僕らに笑顔で言う。


「デビューが決まりましたぁ~!」とサキ。


「ええっ!、ホントかよ!?」(僕)


「現役女子高生アイドルのバンドメンバーとして、デビューする事に決まりましたぁ~!」

きゃっきゃっとはしゃぐサキ。


「女子高生じゃね~じゃん」

グリオがサキにつっこむ。


「あたし以外は全員本物の女子高生なの!、あたしは童顔だから年齢サバ読んで参加する事になったの」

サキがグリオに言う。


「へぇ~…」

そういうのもアリなんだぁ…と僕ら。


「今度、NHKの歌番組に出演するから観てね!」(サキ)


「まじか?、ホントにデビューすんだな?」

「どこの事務所と契約したんだよ?」

僕がサキに聞く。


「エイマックス…」(サキ)


「すげぇッ!」(グリオ)


「でもね…、意外とそうでもないんだよ…」(サキ)


「と言うと…?」(僕)


「メンバー5人で活動資金は年間150万だけ貰えるの…、あとは自分たちでツアー費とかスタジオ練習代とか、なんとかしろって…」(サキ)


「あんな大手でも、そうなもんなんだ?」(僕)


「そう…。だから楽器代とかもあるから、結局バイトは辞められないよ…」(サキ)


「厳しい世界だな…」(僕)


「でもまだ女の子は良いよ。オミズとかで働けるから…」

「もっと大変なのは男子だよ。男子は肉体労働しながら活動しなきゃなんないんだから…」


サキは僕らにそう言うと、ドリンクに口をつけた。



「はい!、タコ串お待ちどう様でしたぁ~!」


そこへ三男坊のバイト店員が注文した料理を運んできた。

タコ串は、少し炙ったタコブツに、シソの葉を巻いて串に刺したものだ。



「これ!、これ!、これ美味いんだよなぁ~」

グリオが言う。


「おい、あの店員どっかで見た事ないか?」

僕がサキに耳打ちして言う。


「あ…、あの人ね。お笑いでTVにたまに出てるよ」

「ダンコ・ザ・カンクルーって名前で、ラップでギャグをやってるの」


サキが言う。


「ああ…、“学校に行こう”っていう、バラエティに出てたやつか?」

思い出した僕が、サキに言う。


「新宿のルミナとかでたまにライブをやってるみたいだけど、やっぱ大変らしくて夜はバイトしてるらしいよ…」

サキが言う。


「やっぱプロの世界は、どれも厳しいという事ですね…」

話を聞いていたグリオが言う。


「君は頑張れよ…」

僕がサキに向かって静かに言った。


「うん」

サキは笑顔で僕にそう応えた。





 月曜日

サーフ系雑誌“F”編集部。


「おはよう!」

編集部に入った僕がみんなに言う。


「あ、おはようございま~す!」

編集部のみんなが僕へ言う。


「ホンコン!、表4広告のバドワイザーのゲラ上がってるか?」

僕がデザイナーの女性にそう聞く。


ホンコン(本紺)は、その名の通り、お笑いタレントのほんこんさんが、おさげ髪をした様な顔をした女性だ。

気が強い女性なので、僕はちょっと苦手なタイプであった。


「ええ…、上がってるわよ」


そういうとホンコンは眉間にシワを寄せながら、僕にゲラを渡した。

別に怒ってるワケじゃないのだろうが、いつも彼女はそんな表情をしている。


「ありがとう…。じゃあ早速これを持って、BUDジャパンの本社に行って来るわ…」

受け取った表4広告を眺めながら、僕は言う。


「あっ!、グリオ」

僕は近くにいたグリオに声を掛けた。


「来月の鵠沼海岸での音楽イベント…、あれ、俺とお前で行く事になったからな…」


「分かりました」とグリオ。


「それで一緒に、ホンコンとタシロも連れて行く」


タシロとは、ホンコンの子分みたいな存在の、デザイナー担当の女性だ。


「えッ!、あの2人もですかぁ?」

グリオが嫌そうな反応をする。


「仕方ないだろ!、他に誰も動けないんだから…」

僕は小声で周りに聞かれない様に、グリオへ耳打ちした。


「ねぇ!、鵠沼のイベント終わったら、その後、みんなで飲みに行きましょうよ!」

遠くに座ってMacを操作していたホンコンが、僕らに向かって突然言い出した。


「いや…、俺はいいよ…。翌日も朝早くなると思うから…」

僕はホンコンにそう言って、彼女からの誘いをかわした。


「なんでよ~!、なんかいつもアタシたちの誘い断ってなぁ~い?」

ホンコンが憤慨した表情で、僕に言って来た。


「そうそう!、なんか私たちの事、いつも避けてるよねぇ~?」

ホンコンの隣で作業していたタシロも、それに同調して言い出した。


「そ…、そんな事ねぇって…」(だって楽しくないんだもん…)

僕はおどおどする。


そこへ編集部の電話が鳴った。


「おい!電話だ」

僕は(助かったぁ…)と、胸を撫でおろしながら思った。


ホンコンが電話に出る。


「海外からよ」

ホンコンが受話器を押さえて僕に言った。


「中出氏頼む!」

僕は英会話が出来る中出氏に対応を振った。


流暢な英語を話し出す中出氏。

それを僕とグリオは眺めていた。


「ナカデさんは、なんであんなに英語が喋れるんでしょうね?」

グリオが隣に立つ僕へそう聞いた。


「知らん…。あいつ留学経験とかも無いんだけどな…」

僕がグリオにそう応えた。



「おい、なんでお前は英会話が出来るんだ?」

電話が終わった中出氏に僕は聞いた。


「高3の時、大学受験で通っていた予備校で学びました」

中出氏が僕に言う。


「へぇ…、そんな予備校へ通っただけで喋れる様になるもんなんだ…?」

僕は感心して言った。


「どこの予備校に行ってたんですか?」(グリオ)


「みしゅじゅ学苑です」(中出氏)


「えっ!、みしゅじゅ学苑って、あのTVのCMでヤマトタケルノミコトみたいな恰好で宣伝してるあれか…?」(僕)


「はい!、怒涛の英語力です!」

中出氏はそう言うと、中指でメガネを押し上げてニヤッと笑った。


(やっぱこいつは、怪しいやっちゃなぁ~…)


僕は中出氏の顔を見ながら、そう思うのであった。






 8月某日。

鵠沼海岸での音楽イベントの開催の前日となった。


「お~悪い、悪い…」

車で現地に来た僕は、渋滞に巻き込まれてしまい、少し遅れて到着した。


「遅いですよアニキ!」

グリオが言う。


「ホントよね!」


「まったく!」


続いて、ホンコンとタシロも一緒になって言う。


「30分くらい大目に見てくれよ」

僕は先に到着していた3人にそう言った。


「ほら!、向こうの担当者はもう来てるわよッ!」

ホンコンがいつもの様に、眉間にシワを寄せて言う。


ホンコンが言ったその先には、20代半ばくらいの女性が、1人でせっせと会場設営の準備をしていた。


「彼女は?」

僕がホンコンに聞く。


「あの人が、今日のイベントを主催する会社、“Unseen Light”の社長の岬さんよ」とホンコン。


「彼女が…!?」

僕はその女性を見て、(ずいぶん若い社長さんだな…?)と思った。


彼女は長い髪をポニーテールにまとめ、ポロシャツにサブリナパンツという、動きやすい恰好をしていた。

暑い中、一人黙々と作業をする彼女を見て、(あんなに必死でやらなくても十分間に合うのに…)と、僕は思った。


「いいケツしてますね…」

僕の隣に近づいて来たグリオが、ボソッと言う。


彼女はこちらに背中を向け、しゃがんで作業をしていた。


「ああ…、そうだな…」

僕はそのことについて、特に否定する気もなかったので、グリオの言葉にそう応えた。


「いやらしい…」


後ろにホンコンがいるのを忘れていた。

彼女は眉間に、一層シワを寄せながら、嫌悪感丸出しで僕にそう言った。


「早く挨拶して来なさいよ!」


「ああ…」


ホンコンにせっつかれた僕は、設営準備をしている彼女の元へと歩いて行った。




「“Unseen Light”の岬です。今日は宜しくお願いします」


僕が彼女へ声を掛けると、彼女は深々と頭を下げて挨拶をした。


彼女から受け取った名刺には、「岬不二子」という名が書いてあった。

岬不二子はスラッとした体形で、綺麗な顔をした女性だった。


「そんなかしこまらないでくれよ。気楽にいこうぜ!」

僕は彼女をリラックスさせる為に、わざとフランクに彼女へそう言った。


岬不二子への挨拶が済んだ僕が、みんなのところへ戻ると、グリオが何やら柄の悪そうなオッサン2人に詰め寄られている姿が見えた。


「あれは…?」

僕がホンコンに聞く。


「なんかミシナ組っていう、地元のヤクザの親分さんみたい…?」

「誰の許可取って、ここでイベントやってるんだ!?って、イキナリ怒鳴り込んで来たの」


ホンコンが僕にそう言う。


「ふ~ん…」と僕。


そうか、この土地ではまだ昔ながらの風習が残ってたんだ…?

ちょっと前までは、何かお祭り事をやる時は、必ずその土地の親分さんに許可を貰って、ショバ代を払っていたからな…。


「岬さんに知らせる?」

ホンコンが僕に言った。


「いや…、いいよ」


「えっ?」


「彼女に余計な心配をかけさせたくない」

「俺があのオッサンと話して来る…」


僕はそう言うと、絡まれているグリオの方へ歩いて行った。




「おいあんたら!、今はそういう時代じゃねぇんだよ!」

僕がヤクザに近づいて言う。


「あッ!?、なんだテメ~は?、コラッ!」

ミシナ組の親分の隣にいた子分が、僕に凄んで言う。


「今じゃヤクザさんとはお付き合いしちゃイケねぇって言う、暴対法ていう法律が出来ちまったんだよッ!」(僕)


「んなこと知るか!、バカヤロウッ!」(子分)


「いいのか…?、あんたら警察に引っ張られても…?」(僕)


「何ッ!?」(子分)


「ここから今すぐ電話したら、アンタらは取っ掴まるという事だ」

携帯を手に僕が言う。


「この野郎ッ!」

子分がそう言うと隣の親分が、「待て!」と止めた。


「これだけ見物人が周りにいたんじゃ逃げおおせん…」

親分が子分に続けて言う。


「そういう事だ…」


僕は相手を見て、ニヤリとする。

だが額からは冷や汗が流れ落ちた。


「行くぞ!」

親分がそう言うと、子分も仕方なくその場から引き上げて行った。


「さすがですねアニキッ!」

グリオが、立ち去って行くヤクザの後姿を睨んでいる僕に向かって言った。


「怖えぇぇぇ…」

ヤクザが居なくなってホッとした僕は、グリオに苦笑いしながらそう言って安堵した。




「良いんですかい親分…?」

ミシナ親分に、子分のツチヤが砂浜を歩きながら言う。


「良いわけねぇだろうッ!」

ミシナが、小声で声を震わせながら、力強くツチヤにそう言った。


「ツチヤ…」(ミシナ)


「はい!」(ツチヤ)


「明日のイベントで最後に歌うグループは、今、茅ヶ崎にいる」(ミシナ)


「茅ヶ崎に…?」(ツチヤ)


「そうだ。隣の茅ヶ崎で、明日の昼過ぎまで他のイベントに出演し、それが終わったら、こっちに車で向かって来る予定の様だ」(ミシナ)


ミシナがそう言うと、勘の良いツチヤが、要領を得た顔をした。


「ツチヤ…。そのバンドが鵠沼に向かって出発したら、車で後ろから突っ込んで事故を起こしてやれ!」(ミシナ)


「そうすりゃ、イベントの最後は台無しとなる?、そういう訳ですね親分?」(ツチヤ)


「そうだ。俺たちを甘く見たらどうなるか、思い知らせてやれ!」(ミシナ)


「分かりました」

そういうとツチヤは、ニヤニヤと笑い出すのであった。





 それからイベント会場の設営準備は、思ったほど早く終わった。

時刻は昼になろうとしていた。


準備が済んだ僕は、遠巻きから岬不二子を眺めていた。


彼女は何で、あんな苦しそうな表情で頑張ってるんだ…?

それにどうして、彼女の会社のスタッフは、彼女1人しか来ていないんだ…?


僕は彼女を見つめながら、その理由を考えていた。


「ねぇ!、準備も終わった事だし、みんなでお昼ゴハンでも食べに行かない?」

ホンコンが僕の後ろから声を掛けて来た。


「悪ィ…、俺ちょっと彼女と打ち合わせを兼ねて、メシでも食って来るよ!」

僕はホンコンにそう言うと、岬不二子の方へと走って行った。


「まったく!、男って可愛いコがいると、すぐデレデレと尻尾振っちゃってさッ!」

ホンコンが眉間にシワを寄せ、腕を組みながらそう言った。


「仕方ないですよ…。彼女は良いケツしてますから…」

ホンコンの捨て台詞を聞いていたグリオが言う。


「何よッ!、お尻だったら私だってキレイなお尻してるわよッ!」

そう言って、グリオに尻を向けるホンコン。


「いや…、いくらお尻だけが良くても…他が…」

困ったグリオがホンコンに言う。


「なんだと!てめぇッ!」

怒ったホンコンが、グリオの首を締めあげた。


「うわあッ!、アニキ!助けてぇぇ…」

締め上げられるグリオが、死にそうな声でそう言った。






 翌日

鵠沼海岸の音楽イベントが始まった。


イベントは順調に進み、時刻は午後4時となった。

セミファイナルのバンド演奏も終わり、あとはトリのバンドが演奏するだけとなった。


その時、アクシデントが起こった。


「何ッ?、最後に出るバンドがこっちへ向かう途中で交通事故に巻き込まれたッ!?」

ケータイを手にした僕がそう言った。


なかなか始まらない最後の演奏に、しびれを切らした観客たちがブーイングをやり出した。


マズイな…。


僕は岬不二子の方をチラッと見た。

彼女はスポンサーに責められて、ペコペコ頭を下げていた。


僕は昨夜、岬不二子が何故たった1人で、あんなに頑張っているのか理由を聞いていた。

だからこのイベントだけは、なんとか成功させてあげたかった。


「グリオッ!」


「はいッ!」


「駐車場に行って、俺の車からギターを持って来てくれッ!」

車のキーを渡しながら、僕がグリオに言う。


「どうするつもりでッ?」


「俺がステージで歌うッ!」


「だッ…、大丈夫なんですかッ!?」


「ああ、大丈夫だ…、いつもより観客が多いだけだ」


「それにしても多すぎませんか…?」


「いいから!、早くギター取って来いッ!」


「分かりましたぁ~ッ!」

グリオはそう言うと、駐車場へと走り出した。





「はいッ!アニキッ!」

15分後、汗ダラダラの顔で、グリオが僕にギターを渡した。


「サンキュー!」

僕はそう言うと、ギターを持ってすぐさまステージへと向かった。



「おいッ!、君ッ!、何するつもりだ!?」

ステージへ上がろうとする僕の前に、スポンサーの1人が立ち塞がった。


「俺が歌って時間を稼ぐ」


「君が?、何考えてんだ正気か!?」


「もうこれ以上、客を待たす事はできない!」

僕は強引に行こうとするが、スポンサーが掴んで止めに入る。


それを見たグリオが、後ろからそのスポンサーを抱え込んだ。


「アニキッ!、早く行ってくださいッ!」


「バカッ!ヤメロッ!、イベントをぶち壊す気かぁ~ッ!」

グリオに抱え込まれたスポンサーが、身体を左右に振りながら怒って叫ぶ。


僕はそんなスポンサーを尻目に、ステージへと上がった。


ステージに立つ僕を、「何事だ?」と見つめる観客たち。


「ええ…、みなさん…。本日はご機嫌麗しゅう…」と僕。


クスクス笑い出す観客たち。


「ああ…」

もうお終いだと、両手で顔を覆うスポンサー。


そして僕の弾き語りが始まった。


僕が歌い出すと、観客の笑い声がピタリと止んだ。


「あ…、あれぇ~?、なんか良い感じなんじゃないのぉ~…?」

さっきまで邪魔してたスポンサーが、手で顔を隠した指の隙間から、僕のステージを観て言う。



大いに盛り上がる会場。



そして僕の演奏が終わった。

観客からは、歓声と口笛がいつまでも続いていた。




「やりましたね?アニキッ!」

ステージから降りた僕に、グリオが駆け寄って来た。


「ああ…、俺はもう疲れたよ…」

極度の緊張から解放された僕は、グリオへそう言った。


するとステージを観ていた岬不二子が、僕の方へ近づいて来るのが見えた。


「ありがとう…、本当に助かったわ」

安堵の表情で言う彼女。


「びっくりしたわ…、まさかあなたが歌えるなんて…」

「でも、どうして言ってくれなかったの?、ミュージシャンだって事」


続けて彼女は、僕にそう聞いた。


「俺はプロじゃないから…、言う必要もない…」

「でも、いつかはプロとしてやっていくつもりだ」


僕は少しはにかんで、彼女にそう言った。


すると岬不二子は突然、僕に向って力強く言うのだった。


「私も頑張る!、だからあなたも歌を続けて!」


「そしたらいつか一緒に仕事が出来たらいいな…」

僕は彼女にそう言うと、ニコッと笑った。


 夕暮れの鵠沼海岸。

僕と岬不二子は再会を誓い、握手をして別れた。







 東京への帰り道。

ハンドルを握る僕は、先程のステージでの興奮がまだ冷めやらない状態であった。


やっぱり俺の歌は通用するのか…?


僕は以前よりも、確かな手応えを身体に感じていた。


「グリオ、今夜サキのBARへ久々に行ってみるか?、今夜は出勤してるみたいだぜ」

助手席に座るグリオへ僕は言った。


「良いっすね~!、明日は休みだし、行きましょうか!?」

ノリ良く応えるグリオ。


サキはデビューしてからは忙しくなり、店にはあまり出なくなっていた。

僕らがARROWSに行くのも、久しぶりだった。



 東京へ着くと、僕は自宅に車を停め、それから電車でグリオと上石神井まで移動した。

駅に着き店に入ると、カウンターに立つサキの姿が見えた。


「オスッ!、キスッ!、メスッ!」

グリオが店に入るなり、元気よく手を振り上げながら、サキに訳の分からん挨拶をする。


「いらっしゃい」


僕らを見た笑顔のサキが、ホッした様な表情で言った。

彼女は、何か疲れている感じがした。


「久しぶりだな…」

席に着いた僕がサキに言う。


「うん…」


「仕事が忙しくなってきたのか?」


この場合の仕事とは、バンド活動の事だ。


「ぼちぼち…」


「そうか…」


僕らは、そんな短いやり取りを交わしていた。


すると何を思ったのか?、グリオが突然、サキに言い出した。


「今日、鵠沼の音楽イベントの担当者の女が、スッゲー可愛かったんだよ!」


「そんで、その女のケツを見たアニキが、いいケツしてるって俺に言うんだよ!」


グリオが笑いながらサキに言う。


その言葉を聞いたサキは、僕の方を見て、「うわぁ…」と思いっきり引く仕草をした。


「お前…、汚ねぇなぁ…」


グリオにまんまとハメられた僕は、やつに苦笑いでそう言った。






 月日が経ち、1999年になった。


 3月

サーフ系雑誌“F”編集部。


「アニキッ!、ホンコンさんとタシロさんが、3月いっぱいで会社辞めるって話し聞きましたぁ?」

グリオが僕の席に来て、小声で言った。


「ああ…、さっき編集長から聞いた」

僕が言う。


「そうなんですか…、じゃあデザイナーの人数減っちゃって大変ですね」(グリオ)


「うん…、でもなんか新しいデザイナーをもう採用したらしいぜ」(僕)


「女性ですか?」(グリオ)


「ああ…、今年、デザインの専門学校を卒業する若いコみたいだ」(僕)


すると突然、中出氏が大きな声で僕らの話に割り込んできた。



「今度こそ、可愛い女の子が入って来ると良いですねッ!?」



(お前…、なんて恐ろしい事を…ッ!)

僕とグリオはそういう表情をして、中出氏を見つめた。



「ん?」

状況が掴めない中出氏は、澄ました表情でそう言う。


僕とグリオが無言で、うつむいていると中出氏は自分の後ろを、そ~と振り返った。

そこには、怒り顔のホンコンとタシロが立っていた!


「うわぁああああ!、すいませんッ!、すいませんッ!」(中出氏)


俺、知~らねっと…。


関わりたくない僕とグリオは、中出氏を置き去りにして、その場から、そ~と立ち去った。





 4月

例の新しい女性デザイナーが入社して来た。


「野中涼子です。宜しくお願いします」


彼女が皆の前でそう挨拶を済ますと、編集部の男性連中が「イヤッホゥッ!」と叫び出した。

グリオはアクションが大き過ぎて、ジャンプまでしていた(笑)


新しいデザイナーは、美人だったのだ。




 リョウ(涼子)は新卒だったが、仕事の飲み込みが早く、すぐに即戦力として活躍し出した。

性格も明るく、彼女は編集部のマドンナ的存在になるのであった。







 5月


「久保木くん…、ちょっと良いかな?」

「この前言ってたロゴマークなんだけど、このブルー地をオレンジの文字でベタ抜きしてくれないか。文字のフォントは任せるけど筆記体が良いな…」



サーフ系雑誌“F”編集部。

僕は自分で描いたラフスケッチを、デザイナーの久保木に渡しながら言った。



「何やってんですかアニキ?、コソコソと…」

久保木と話している僕に、グリオが言ってくる。


「俺のロゴマークを作ってくれと頼んでたんだよ」


「アニキのロゴマーク?」


「ああ…、ロゴマークが出来たら、販促品を作ってライブ会場で売るつもりだ」


「プロみたいですね」


「今時は、ちょっとしたインディーズバンドの連中だったらそれくらいやってるよ」


「へぇ…。どんな販促品を作るんですか?」


「ステッカーと缶バッジとTシャツだな」


「本格的ですね」


「ロゴが完成したら、CDアルバムの盤面にもそれをクレジットする」


「アルバム作るんですかッ!?」


「そうだ…。サニーのプロデューサーに渡さなかった曲が8曲ある」


「シングルで良いんじゃないですか?」


「シングルなら、誰でも作れる。それじゃダメなんだ。フルアルバムだからこそ作る意味がある」


「金掛りそうですね?」


「そうだな。ディストリビューターも通すからな…」


「ディストリビューター…?」


「流通業者の事だ。ディストリビューターを通せば、インディーズでも、大手CDショップやamazonと取引できる。つまり世界中がマーケットの対象となる」


「手売りや委託販売中心の、自主製作盤を作るのかと思ってましたよ」


「それじゃあ金掛ける意味がない。だからレコーディングした音源も、その後、専門業者に渡し、マスタリングして音圧を上げる」


「まるでプロじゃないですか!?」


「ある程度、プロと同じ土俵に立たなければ戦えないからな…。だからディストリビューターを通すんだ」

「その為には、自分の音楽レーベルも立ち上げなきゃディストリビューターと取引できない、だからそれもやる」


「レコーディングするスタジオ代や、バックミュージシャンのギャラだけでも相当いきますね?」


「だから、レコーディングはカズに頼んだ」


「あの自宅にスタジオ持ってるギターの人ですか?」


「そうだ。あいつは元々ヘビメタ出身だから、エレキで速弾きやライトハンドもお手の物だ」

「あいつはその後、プリンスに傾倒してファンクに走っているから、カッティングも問題ない」


「更に俺の影響で、アコースティックギターでフィンガリング奏法も、スライドギター奏法もマスターしてる」

「だから俺があいつと組めば、バックを雇わなくても、ベースもドラムもコーラスも自分たちで全てまかなえるという訳さ」


「レコーディングは7月から始める。そうなったらお前とも当分飲みに行けないな(笑)」


「どのくらい掛るもんなんですか?」


「まぁ1年は掛るだろうな…」


「1年も!?」


「そりゃそうだろう、フルアルバムだぜ。カズの曲も4曲提供してもらうから、12曲を休日の合間に少しづつ録音する」

「録音も今日はドラムとベースだけ、翌週はリードギターとギターソロってな感じで、1曲録り終えるのに何日も掛る…」


「長丁場ですね?」


「ああ…、だが本当に忙しくなるのはCDが完成してからだ。プロモーションをしなければならない」


「プロモーションもですか?」


「そうだ。自分で全てやるんだからな。メディアや販売店にプロモ活動しなきゃ、在庫を抱えちゃうからな」

「お前、CDは作ったら勝手にCDショップが注文してくれて、お店に並ぶとでも思ってんのか?」」


「そうじゃないんですか?」


「あれは各CDショップへ営業して、店に置いてもらうんだ」

「新星堂なんかはまだ良いよ、本社を押さえれば取引が済むから…」

「問題はタワレコやHMV、ディスクユニオンとかだ。あれらは全部各店舗にいるバイヤーを、それぞれ捕まえて営業を掛けなきゃならいんだから…」


「ゲッ!、相当キツイっすね!?」


「そうだよ。せっかく営業しても、今食事に行っていませんとか、レジ打ちしててしばらく戻りませんとか、そんなのばっかりだ」

「やっと担当者捕まえてサンプル音源を渡しても、その後、いつ連絡しても、まだ聴いてません…。てな感じだしな」

「だって1日に、俺みたいなやつからのサンプルCDが100枚くらい届くらしいから、無理もないよ」


「これはラジオ局にCDサンプルを送っても、これと同じことが言えるんだ」

「つまりインディーズが店に置いてもらったり、ラジオで曲を掛けてもらうってのは、たまたまCDを聴いてくれて、たまたま聴いた担当者の好みだったという奇跡が続いて、初めて成立するんだよ」


「僕は手伝いませんよ!」


「分かってる…。こんな重要な仕事を他人に頼んで、いい加減にやられたら、それこそアウトだ」

「こういう事は、身銭切ってやっている本人しか、本気でやらないから自分だけでやるよ」


「ああ…、そうだ!、ところで来週から6月いっぱいまで、CDアルバム用の素材の撮影を始めるつもりなんだ」

「今なら海も空いてるからな。だからレコーディングは7月からにしたんだ」


「そーなんですか…。で…?、オチは…?」


「だからお前も付き合えよ。海で俺を写真撮影してくれよ」


「ヤですよ。なんでアニキと男同士で海に行かなくちゃなんないんですか?、どうせこの時期に海なんか行ったって、ナンパできる水着の女の子が海岸にいる訳でもないし…」


「そうかぁ…。弱ったな…、写真素材はレコーディング前に終わらせておかないとマズイんだよなぁ…」


「良かったら私、手伝いましょうか?」


「へっ!?」

そう言って僕が振り返ると、そこには新人デザイナーのリョウが立っていた。


「君がッ!?」


「私、写真が趣味でよく海とか撮影しに行くんです。一眼レフも持ってます」


「良いのかッ?」


「はい…。なんか面白そうじゃないですか!」


「よっしゃッ!」

小さくガッツポーズする僕。


「いやぁ~、君、良いやつだなぁ…」

僕がリョウの肩を軽くポンポン叩いて言うと、「行きますッ!」と、後ろから急にグリオの声。


「ん?」

後ろを振り返る僕。


「行きますッ!」

もう一度、僕の事をしっかりと見つめたグリオが言う。


「もういいよ!、お前には用はないから…」

僕は手首を振って、グリオを追い払う様な仕草をした。


「ダメですッ!、アニキとリョウちゃんを2人っきりで、海になんか行かせられません!」

「彼女は編集部の期待のホープです!、もしアニキが手を出したりでもして、辞められたら大変な損失になります!」


「お前、人の事ジロー・ラモみたいに言うなよ」


「飛びますッ!飛びますッ!ですか?」と、影絵の狐みたいな指の形を両手で作るグリオ。


「そりゃ二郎さんだろがッ!」(※坂上二郎)


「とにかくホンコンみたいに、アニキの犠牲になって辞める女性を、これ以上増やす訳にはいきませんッ!」


「えッ!、ホンコンさんってそうなんですかッ!?」

驚くリョウ。


「そうです!」

真顔で言うグリオ。


「いやッ…、ちがッ…、お前!、ホンコンが辞めたのは、俺とはカンケーねぇだろッ!」

グリオとリョウを交互に見つめながら、僕が慌てて言う。


「リョウ聞いてくれ!、それはありえないから…。君も実物のホンコンを見たら、それはありえ無いって分かるからッ!…」


「女性に対して酷いこと言いますね、アニキは…ッ」


「お前なぁ…」

僕は、わなわなと震えてグリオに言う。


「分かったよ…。だが遊びじゃないぞ。撮影の邪魔だけはすんな!分かったな?」


「イヤッホゥッ!」

グリオはそう言ってジャンプした。





 僕はその夜、平日だがARROWSへ久々に飲みに来ていた。

サキからメールが入り、今日は久しぶりにバイトへ入るから来て欲しいという連絡があったのだ。



「それベースじゃないのか?」

カウンターに立つサキの後ろに立て掛けてあったベースを見て、僕が言う。


「うん…、ドラムのキドー先生がリズムを学ぶ為には、他のリズム楽器の事も知っていないといけないって、それでベースも授業で習うんだぁ…」

サキが言った。


「へぇ…そうなんだ?」


キドー先生とはEXPの講師だ。


僕が20代前半頃までは、当時ヘビメタブームだった。

その時の立役者である、マーズシェイカーのドラマーだった人物である。


「ドラムも、ただロックのビートを習うんじゃなくて、レゲエとかR&Bとかいろいろ叩かされるんだよ」

僕のグラスに、ハーパーをつぎながらサキが言う。


「へぇ…そうなんだぁ…?」

「まぁそれで話は戻るんだけど、俺はしばらくレコーディングで忙しくなるから、ここにはあまり来れなくなるから」



グラスのバーボンロックに口をつけた僕が、さっきまで話していた事を再びサキに言う。



「グリオさんと海で撮影とか楽しそうだね?」

サキが少し沈んだ声で言う。


「そんな声出すなよ…。君がプロになったお陰で、俺だってもう一度挑戦してみる気になったんだぜ」


「東京に出て来たばかりの頃は楽しかったなぁ…」

懐かしむ様に、サキが天井を見上げて言った。


「でも、君はデビュー出来た。それが叶ったんだから良かったじゃないか?」


「おっと!、もうこんな時間だ…。じゃあ俺、明日も仕事だからそろそろ失礼するよ」

BARの時計を見た僕が言う。


「帰っちゃうの?」


「平日だぜ…。この後、三男坊には行けないよ」


「しばらく行ってないね?」


「仕方ないさ、君は週末と休日が主に忙しくなるんだから」


「それじゃあまた…」

僕はそう言うと、ARROWSを後にした。





 それから僕は、5月、6月とグリオとリョウを引き連れて、伊豆や湘南にCDアルバムの素材を撮影しに出かけていた。


夕暮れの稲村ガ崎海岸。


「走れッ!走れッ!」 


グリオが僕に笑いながら指示を出す。


僕は青春ドラマの1シーンみたいに、夕暮れの海岸を全速力で走らされた。


カシャシャシャシャシャシャ……。


それをリョウが、カメラで連写する。


「あのさぁ…。このシーン、CDジャケのどこで使えるんだよ?」

息をハァハァさせた僕がグリオに聞く。


ははははは…。

それを聞いて笑う、グリオとリョウ。


「俺はお前と言う人間が、よう分からんよ…」


僕がグリオにそう言うと、僕のケータイがブルブルと震えた。


ポケットをガサゴソしている間に、電話を取り損ねてしまった僕。


着歴を見るとサキからだった。

僕は折り返し電話を掛けてみる。


(お掛けになった番号は、電波の届かない場所におられるか、電源が入っていない為、掛りません…)

僕のケータイから、そう聞こえるアナウンス。


(TV収録の合間に掛けてて、忙しいんだな…)

僕はそう思うと電話を切った。


「カノジョさん?」

隣にいたリョウが、僕にそう聞いた。


「いや…、そんなんじゃないよ…」

僕はリョウへそう応えた。




 その日、海での撮影を終えた僕は、グリオとリョウとで、近くの海鮮居酒屋で飲んでから家に帰った。

だから自宅に到着した時刻は、深夜12時を回っていた。


あの後、何回かサキから電話があったが、タイミングが悪く電話に出る事が僕は出来なかった。

その度に折り返してみるが、彼女も電話には出なかった。


僕は家からサキに電話を掛けてみる事にした。


「はい…」

すれ違っていたサキが、やっと電話に出た。


「起きてたか…?」


「うん…、まだ寝る時間じゃないよ」


「そうか…。で、どうしたんだ?」


「別に…」


「なんだよ?、なんかあるから電話して来たんだろ?」


「何かないと電話しちゃダメなの?」


「そんな事ないけど…、でも気になるじゃないか…」


「なんか忙しい割には、パッとしなくてさぁ…」


「バンドの事か?」


「うん。なんか全然楽しくないよ」


「仕事とはそういうものさ」


「朝は早起きして、近所のスタジオで個人練習してから学校行ってさ…」


「ほう…」


「エイマックスからは、もっともっと痩せろって言われて、夜にはジョギングも始めたよ」


「別に今だって痩せてるじゃないか!?」


「でも、アイドルグループなんだから、もっともっと華奢にならないとダメだって…」


「そんなヒョロヒョロに痩せて、ドラムなんか叩けるのかよ?」


「だから毎日すごい疲れる…」


「君が弱音吐くなんて珍しいな…?、まぁそれだけ厳しい世界なんだろうな…」


「たまには、パ~と飲みにでも行きたいよ!」


「仕方ないさ。お互いに生活環境が変わったんだ」

「それに君だって、一応アイドルという事なんだから、これからバンドが売れて来たら、深夜に俺と酒なんて飲んでる訳にもいかなくなるぞ」


「何で?」


「スキャンダルになるだろ?、もっと自覚しろよ」


「ねぇ…、プロって何なの?」


「プロってのは、金がいろいろと絡んでくるから、制約は付きものだ」


「それなら、人と会えないじゃない?」


「そういう事だ。そうやって段々と疎遠になって行き、やがて君も俺の事とかも忘れていくよ」


「そんな事ないよ…」


「まぁ、今のところは、君もまだそんなに売れてないから、顔も世間にゃ割れてないだろう…?」

「今度、寮まで車で迎えに行くから、そしたらまた関町のドンキーでも行って、ハンバーグでも食べに行こう」


「わ~い♪、いつ、いつッ!?」

電話越しでサキが言う。


「おとなしく良いコにしてたら連れて行く…」

僕が言う。


「おとなしく良いコ…?」


「そうだ…」


「ごろにゃん…」


「ふふ…、良いコだ…」

僕は電話越しでふざけてるサキに、思わず笑ってしまった。



こうしてサキと会う約束をした僕であったが、その後も互いにすれ違い、一緒に出掛ける事はなかったのであった。






7月


 アルバムのレコーディングが始まった。



レコーディングは、カズがプログラミングしたドラムに、まず僕がサイドギターを録音し、それにカズがベースとギターを録音した。

そしてそのオケに、僕がボーカルを入れて、最後に、コーラスやギターソロを入れる。


各パートをいっぺんに録れないので、2曲を仕上げるのにも、一ヶ月は掛る作業となった。

この頃になると、僕はARROWSにも、ほとんど行かなくなっていた。





 10月になった。

収録する楽曲は、半分近く録音が終了していた。


僕は、休日はレコーディング作業をし、平日の仕事が終わってからの夜は、ジャケットデザインをリョウに指示していた。

CDのジャケットや、中の歌詞カード、それと盤面のデザインは、リョウにお願いしていたからだ。


ジャケットや歌詞カードのデザインは、CDプレスする会社のセットサービスにも組み込まれていた。

だがそのデザインは、決まったテンプレートから選ばなければならないもので、あまりカッコよくないものばかりだった。


僕のような知られていないアーティストは、ジャケ買いする人たちも意識しなければならない。

そういうところも、手を抜くことが出来ないのである。


だから僕は、ジャケットのデザインもリョウに頼んだ。

彼女と毎日仕事をしているうちに、彼女のデザインセンスが良いと分かったからだ。


それと並行してレーベルも設立した。

そのレーベルのロゴも、僕はリョウにデザインしてもらうのだった。






 11月

レコーディング終了予定の日程まで、結構押して来た。

リリースは来年の5月と決めていたので、プロモ期間を考えると、3月までにプレスを済ませておきたかった。


この時期からは、ミックスダウンも並行して行われた。

ミックスダウンとは、録音された各パートの音源を、右や左へと振り分ける作業だ。


ミックスダウンをしないと、歌もギターも全部同じ場所から出てしまい、音がぶつかってしまう。

だから、各パートがかき消されない様に、このミックスダウンという作業はとても重要な作業となる。


このミックスダウンが、実はレコーディングで1番やっかいであり、時間も掛る作業なのだ。

何度やり直しても、納得がいかずに延々と作業がループしてしまう。


これを業者に発注すると、ミックスダウンの現場にずーと立ち会っていなければならなくなり、金も物凄く掛ってしまうのだ。


だから僕は、ミックスダウンは自分でやる事にした。

そしてそれが済んだら、その音源の音圧を上げるマスタリングだけを業者へ頼むことにしたのである。





 12月に入った。

楽曲のレコーディングは全て終わり、あとは各楽曲のミックスダウン作業を残すだけとなっていた。

僕はレコーディングに夢中になっており、サキとの連絡もまったく取る事はなかったのであった。




 サーフ系雑誌“F”編集部。


「今夜合コン?、良いなぁ~、俺もたまには誘えよ」

僕がグリオに言う。


「ダメですよアニキは。今回の合コンはリョウちゃんの友達とやる合コンですから、男性は20代の若者じゃなきゃダメなんです!」


「サッカーだって、オーバーエイジ枠あるじゃん」


「ダメです!、相手女性が全員21歳なのに、32歳のアニキがいたらおかしいじゃないですか!」


「分かった!分かった!…。で?、男は誰が行くんだ?」


「僕と中出さんと、久保木さんと春日さんの4人です」


「ふ~ん…」

僕はそう言うと、その場から立ち去った。


その時、僕のケータイへメールが入った。

ARROWSのサキからだった。


「えっ!?」

僕はサキからのメールを読んで驚いた。


僕は編集部からベランダに出て、サキに電話をかけた。






 その夜、僕はARROWSに行って、1人で飲んでいた。

すると、合コンに行ってるはずのグリオからメールが入った。



(アニキ、今から飲みませんか?)


僕はグリオにメールの返信をする。


(良いけど、お前合コンは?)


(ダメです…。かわいいコはリョウちゃんだけで、あとはホンコンとタシロと大差ありません。なので2次会はパスです)


あ~、行かなくて良かった…(笑)


グリオからのメールを見た僕は、そう思いニヤニヤした。


(今、ARROWSで飲んでるからお前も来いよ)


(分かりました。タクシー飛ばしてスグ行きます!)




「お待たせしました!」

店に着いたほろ酔い気分のグリオが、店内に入るなりそう言った。


「あれッ?、サキちゃんは?」

サキのいないカウンターを見たグリオが続けて言った。


「彼女はこの店を辞めたんだ。だからもういない…」

カウンターに座る僕が、グリオに振り返り静かに言う。


「えッ!、いつ辞めたんですか?」

驚いたグリオが、席にも着かずに僕に言った。


「先週の金曜が最後だって言ってたかな…?、俺だって昼間にメールもらってから初めて知ったんだ」


「じゃあ呼び出しましょうよ!近くに住んでるんだから…」


「EXPの寮にも、もういない…。彼女は実家の福岡へ今日帰った…」


「デビューした女子高生バンドはッ!?」


「ダメだったみたいだ…。使い捨ての世界だ。彼女は切られたんだ…」

そう言うと、僕はタバコに火を点けた。


「じゃあもう会えないんですかッ?」

悔しそうな感じでグリオが言う。


「そういうことだ…。やっぱり厳しい世界なんだな…」

僕はタバコの煙を吐く。


「何ですかアニキはッ!、妙にサバサバしてッ!」


「そんな事ないさ…」


「アニキはサキちゃんと、何パツもヤッてるから良いかも知れませんが、俺はそうじゃないんですからねッ!」


「ヤッてね~よ俺だってッ!、お前そういう誤解される様な事、大声で言うなよッ!」


「嘘ですねッ!、あれだけチャンスがあったのに、ヤラナイ訳がありませんッ!」


「そんなら、なんで俺もサキが福岡に帰るのを、さっきまで知らないんだよ!」


「ホントですかぁ~…?」


「本当だ…。それから、今日電話でサキと最後に話したんだが、彼女は空港だった。今までありがとうって、泣いてたよ…」


僕がそう言うと、グリオは黙ってしまった。


ヤレヤレ…。

まったく、コイツは酒が入ると突然暴走し、訳の分からない事を言いだすから始末が悪い…。





 僕らはその後、隣にある居酒屋「三男坊」で始発まで飲む事にした。

グリオは既にARROWSで飲み過ぎて、ベロベロに酔いつぶれていた。


出入口付近のテーブル席に座ると、グリオはすぐに寝てしまった。


「この席、寒いからストーブ置いときますね」

三男坊の若い店長が、隙間風の入って来る僕らの座る席の側に、石油ストーブを置いてくれた。


「あれ?、今日はあの可愛いコはいないんですか?」

店長が僕に聞く。


「彼女はもう来ないよ…」

僕がそう言うと店長は「そうですか…」と言うと、深く理由を聞くこともなく、厨房へと戻って行った。




「寒い…」


しばらくすると、うつ伏せで寝ていたグリオが、そう言って僕の隣に移動してきた。

ストーブの火が僕の方に向いていたから、グリオは寒かったのだろう。


僕は、うつ伏せで寝るグリオを横目に、1人日本酒を飲んだ。

そしてサキの事を考えていた。


サキはNHKの歌番組にも出演した。

それでも、彼女は消えて行った。

ビジュアルが良くても、テクニックがあっても、大手事務所がバックについても、あの業界で生き残るのは大変だという事か…。


僕はこの先、どうするべきなのか考えていた…。



To be continued…


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