◆在りし日の女狐◆
過去回、胸糞展開注意です。
本編とは違うので読み飛ばしても大丈夫です。
もっと多くの民が欲しい。
そうすればもっと多くの血を流し、妾のLvとやらも上がり強くなれる。
あの男には妾の術は通じぬし、ちょろそうに見えて色仕掛けにも惑わされる事は無い。
妾の欲を満たすにはもっと大きな国を手に入れなければ成らぬ。
ぷれいやあ成る者達に手を出せば妾は消されかねぬからな。
なんとしてもあの男よりも強い力を手に入れなければ……
強大な力。
居るでは無いか。
妾と同格の刑部狸。
彼奴を狂わせ、街中で暴れさせれば、同等とまではいかずとも、少しはあの男と打ち合える様には成るじゃろう。
あの男の力の底の一旦でも垣間見えれば、それを超える者を妾が魅了し傀儡とすれば良いだけの事。
すぐには現れんじゃろうが、ぷれいやあ成る者達からは、あの男と同様の力を感じた。
一人で適わずとも、二人、三人ともなれば流石に勝てるじゃろう。
ぷれいやあ成る者達は簡単に誘惑する事も出来るし妾の術も効いておった。
密かに飼っておった者達はいつの間にか消えてしまったが、成長した者であれば消えてしまう前にあの男の首を取れると見ておる。
「玉藻様、刑部狸の妻である生生世世を捕らえ、牢に放り込んでおります」
「よくやった。
刑部狸に、返してほしくば妾の所まで来いと伝えよ」
さて、刑部狸には国中で暴れ回って貰うとしよう。
彼奴の性格からして、抵抗する事は無いはずじゃ。
それにあの男も、暴れた刑部狸をただ消すなどと言う事は無い。
恐らくだが、戦って決着をつけるじゃろう。
刑部狸の取れる選択肢はあの男に殺されて妻を開放するか、あの男を倒す他無い。
あの男を屠れる程の力があれば妾の命も危ういが、それは無いじゃろう。
それが出来るのであれば、とうにやっておるじゃろうしな。
「玉藻前様」
「来たか、通すがよい」
「世世を何処へやった?」
「そう焦るな。
あの娘は無事じゃが……」
「分かっている。
何が望みだ」
「そうじゃのう。
まずは妾に服従して貰う……
ほう、その様に其方が妾の前で頭を下げるとはな。
面白い」
あの隠神刑部が、このように従順な様を見られるとは思わなんだ。
刑部狸は悪人では在るが、愚直な男じゃからのう。
妻であるあの小娘が妾の手の内に在る限りは従順な振る舞いをするじゃろうな。
どれ、一目くらいは合わせてやるか。
人質の存在は確かめさせておかなければならぬしな。
じゃが、取り返そうとして暴れられても困る。
「一目合わせてやるが、少々痛めつけるぞ?
暴れられては適わんからな」
「好きにしろ」
両手両足を縛り上げ、下の者共に痛めつけさせる。
血反吐を吐くがのた打ち回らずに、大人しいものじゃな……
十分に痛め付けたので、下の者に運ばせ牢へと連れて来る。
「……世世」
「強がりよって、言葉を吐けば息が絶えだえでは無いか」
「隠神様。
世世はどうすればヨイ?」
「この女狐の喜ぶように振る舞え」
「フフっ女狐とは妾の事か?
言葉を改め、玉藻御前とでも呼んで貰うとしようかの?」
「玉藻御前?
そう呼べば満足か?」
彼奴め、鼻で笑いよるわ。
面白い。
懲らしめてやろうぞ。
「小娘の拷問を初めよ。
もっと従順に成らなくてはいかぬ」
「やめろ、なんでも言う事は聞く。
その娘に手は出さないでくれ」
妾は「嫌じゃ」と言うて、小娘を下の者に甚振らせる。
「どうじゃ?
其方の夫が不甲斐ないばかりに其方は傷ついておるのだぞ?
恨み言の一つでも言ってやれ」
「世世は多くのコトバ学んだ。
お客さんとも仲良く……なた。
いぱいコトバ、まなんで、沢山伝えたい事できたよ。
でも、沢山伝えたい、コトバ一つだた。
隠神様愛してる」
小娘は精霊を呼び自らに攻撃させようとしたので、即刻その精霊を殺した。
面倒な。
いくらでも湧きよる。
じゃがすぐに精霊を呼ぶ力も無くなるじゃろう。
この力は消耗が激しい。
「世世……」
「口惜しいか?
刑部狸」
「某は何もせんし、この様に手足を括られては何も出来ぬ。
せめてもの情けに世世の顔を良く見える所まで運んでは貰えんか?」
「くくっ……
態々ボロボロにされた妻の顔を見たいなどとは。
面白い奴じゃ。
構わん、運んでいってやれ。
感謝せよ隠神刑部」
下の者達が刑部狸を小娘の元まで運び、顔の目の前まで持って行ってやると恐ろしい事が起きた!
刑部狸の首が飛び、小娘の首を食いちぎったのじゃ……
「あっはっは!
世世よ!
其方は某の妻であった!
今生の別れとなろうとも某は其方だけを愛すると誓おう!」
く……狂いおったぞ……
彼奴の妻である小娘が死んでしもうた。
誤算じゃ。
刑部狸めが此処で刺し違えてでも妾を殺しにくる!
妾はこの場から逃げ出し、城に籠って守りを固める。
彼奴は狂っておる。
殺しに来るにしても一人で動くじゃろう。
これだけ城の守りを固めれば、恐るるに足りぬ。
それから彼奴を待ち構えておったが、来ることは無かった。
変わりに忍者が現れ、あの男の城へと呼ばれた。




