7 先生はお忙しい
お仕事頑張る
「んじゃ、来週からテストだからな。きちんとテスト勉強するように」
HRの終わりにそう注意をすると大体の生徒が面倒そうに返事をする。まあ耳タコでも言っておくことが大切なのだ。何やらいつもよりニヤニヤしながら俺を見ている生徒も約1名いるが……うん、気にしない気にしない。
「あ、あの巽先生!」
「ん?」
教室から出てすぐに後ろから生徒に呼び止められる。えっと、確か………
「清水か。どうかしたのか?」
「あの……ご相談があって……少しいいですか?」
「ん、わかった。とりあえずここじゃなんだし進路指導室にでもいくか」
清水の雰囲気的にそれが良さそうだと思い移動する。誰しも他人に聞かせたくない話をする時にはそれなりの雰囲気があるからわかるものだが……深刻そうな清水の様子からそれがわかってしまったのでそうする。
「んで?どうかしたのか?」
進路指導室に連れてきてから椅子に座ってからそう聞くと清水はしばらく迷ってから言った。
「あ、あの……実は母が今入院してるんですが……来月の修学旅行休ませて貰えないでしょうか?」
「お母さんはそんなに重体なのか?」
「本人は大丈夫だって言ってました。でも……なんだが、咳も酷いし、お医者さんもあんまりいい顔してなかったので心配なんです」
「ふむ……」
ここで母親に確認を取るのも選択肢の1つだが……親というのは子供前で無理をする傾向もある。だとしたら取れる手段は……
「わかった。ただ、きちんとお母さんにもそのことは話すこと。あと課題用にプリント出すからきちんと提出するんだぞ?」
「は、はい!ありがとうございます!」
「んじゃ、部活もあるから俺はそろそろ行くな」
「あ、あの……そういえば、清香ちゃんの機嫌が良いんですが何かあったんですか?」
「いや、それを何故俺に聞く」
本人に聞けよと思っていると清水は言った。
「清香ちゃん、先生のこと大好きですからもしかしたらと思ったので……すみません」
「まあ、いいけど」
既にそれが周知の事実なのも問題だよなぁ。アイツは俺への好意を隠すどころかダイレクトにかましてくる。学年主任からも目をつけられてるし学校で下手な行動は取れないのだ。
まあ、俺からアイツに何かをすることは今のところないが……家に通ってる事実がバレれば騒がれるだろうなぁ。今の世の中、そういうことにうるさいというか、ゴシップがあれば叩きたいという人心が強いのだろう。
教員の不祥事なんて美味しいネタ過ぎるだろうしね。あとは単純に俺を嫌ってる連中からの嫌がらせとかな。まあ、関係ないか。