6 頼れる友
無理矢理だけど出したかったのでw
「なぁ、どうすればいいと思う?」
『知るかアホ。こんな時間に電話してきて惚気けるなや』
こっちは真剣に話してるのに……まあ、そう言いながらビール片手に話してるのだが。相手は高校時代からの友人の池谷という男だ。
『つうか、なんか似たような話を俺も知ってるんだが……』
「ん?なんだ経験談か?」
『ちっげーよ。親父と母さんがお前と似たような感じで結婚したんだそうだ。子供はいなかったそうだが』
なんだか世の中似たような話で溢れてるのだなぁと思いながらビールを飲んでいると池谷は言った。
『んで?そんな惚気話のために電話してきたのか?』
「まあな。ぶっちゃけ俺も仕事には真剣に向き合いたいんだよ。だから生徒の1人を特別視するのはあまり気持ちよくないんだよ」
『真面目かよ。まあ、親父も似たようなこと言ってたな』
「そうなのか?」
『母さんの旧姓が須藤だった頃に同じように悩んだそうだ。そういや、母さんはお前の父親とは知り合いとか言ってたな』
何その初情報。まあ、別に親父が誰と知り合いでもどうでもいいが。
「なあ、お前ならこの状況どうする?」
『据え膳食わぬは男の恥だろ?』
「肉食乙」
聞いた俺が馬鹿だった。
『つうか悩む前に答え出てるんじゃないか?』
「……かもな。少し酔ってるわ」
『お前酒弱いからなぁ』
「親父とお袋は強いから遺伝的には強いはずなんだがな」
普段は飲まないけどウィスキーをストレートで飲んでもケロリとしてる親父といつもビールを飲むお袋。化け物だよな。
『てか、こうして俺の時間を削ったんだから今度飲む時は奢れよな』
「子持ちにたかるなよ」
『いいだろ?どうせそこそこ貯金してるんだろうし』
「お前こそ独身なんだから奢れよ」
池谷は結構イケメンだし仕事的にもお金は普通に余ってるだろうに……
『るせぇよ、こないだキャバクラで使いすぎて金欠なんだよ』
「相変わらずそっちはお盛んだな」
『男は女に貢いでなんぼだろ?』
「まあ、その考え方はどうかと思うが……」
女遊びが好きらしい。出会い系で会った女の子にもお金使ってるそうだし、将来が心配になるよ。うん。
『あ、女といえば寧々ちゃん元気?』
「手を出したら殺すからな」
今年1番の殺意を向けると流石に自重したのか池谷は言った。
『別に寧々ちゃんには何もしないよ。ただ、将来玲子さんそっくりになりそうだなぁとは思うけど』
「ま、親子だしな」
『どうせお前は玲子さんに申し訳ないとか言ってその子の好意を受け入れきれないんだろ?』
唐突に話を戻したので驚くがまあ、その通りかもな。
「俺はアイツを守れなかった。そんな俺に好意を向けて貰う資格はないだろ」
『はぁ……あのな、女が自分からグイグイ来てるんだ。そんなくだらない意地なんて捨ててもっと正直になったらどうだ?』
「簡単に言ってくれるよ……」
それが出来ればどれだけ楽だろうか。いや、それをしたら……俺は玲子のことを忘れてしまいそうで怖いのだろう。まるでいなかったように振る舞う……想像しただけで怖くなる。でも、美澄からの好意が嬉しいという矛盾。本当に俺は最低だと思いながらビールを飲み干すのだった。