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5 送るついでに

ついでに

「晴太さんは運転姿もカッコイイですね」


夕飯も終わり、子供達も寝た頃になって美澄を自宅に送るために車を運転していると助手席でそんなことを言う美澄。


「別に世辞はいらんぞ」

「本心ですよ。それにちゃんと分煙してるところがポイント高いです」

「本当にお前は観察力高いな」


車にタバコの箱があることからだいたい察したのだろう。俺は基本的にはタバコは吸わないが、出先で唐突に吸いたくなった時のために車に乗せてあるのだ。まあ、子供達がいれば吸わないし、滅多にないが。


「学校でもあまり吸われてないのは知ってますから」

「ま、最近高いしな。買わないに越したことはないさ」

「お酒もほどほどにしてくださいね」

「……やっぱりバレてたか」


冷蔵庫にあるビールの存在を見逃すわけないか。


「本当は晩酌のお供をしたいのですが……」

「学生だろうが。深夜のバイトはダメだ」

「ええ、知ってます。でも、お義父さまはこの頃からよくお義母さまの晩酌に付き合ってたそうですよ」


なんで息子が知らないことを平然と話すのだろう……いや、もう何も言うまい。


「そういえば、明日も来るのか?」

「ええ、朝ごはんも明日から作りますよ」

「いや、そこまでしなくても……」

「ダメです。これからは私がきちんと管理しますから」


とはいえなぁ……


「ぶっちゃけ両立はキツくないか?お前が無理して倒れるのは誰も望んでないぞ?」

「大丈夫ですよ。そのためにこの時期まで色々試行錯誤したんですから」

「何をだ?」

「色々です。お義父さまから家の合鍵を貰う条件とだけお伝えしておきます」


よくは分からないが……今日鍵を渡してないのに普通にいたのはやっぱり合鍵を持ってたからか。しかも親父から貰ったということは親父も少なからず美澄を認めたってことか。


「はぁ……まあ、いいが倒れたりしたら出禁にするからな」

「厳しいですね」

「そう思うならちゃんと自分の身体を大切にしろよ?」

「……お優しいですね」

「どこがだ?俺はわりと鬼畜だぞ?」

「そうやって、キツいこともちゃんと言えるのが晴太さんの優しさですよ」


隣でそんな風に微笑まれると気まずくなるが……これだけは聞かないといけないと思い出して俺は言った。


「なぁ、お前は全部知ってるのか?」

「晴太さんのことならなんでも」

「俺の妻が死んだ原因とかもか?」

「はい。もちろん存じてます」

「それを知っててお前は俺に好意を向けるのか?」


そう聞くと彼女は優しく笑って言った。


「過去というのはどうしようもありません。でも、私が好きになった晴太さんは紛れもない本物ですから」

「……お前は変わってるな」

「むー、ちゃんと名前呼んでくださいよ」

「はいはい、清香ちゃん」

「あ、それちょっと可愛いですね」


そんなアホなことを言いながら送るが……そういえば、助手席に人を乗せたのは久しぶりかもしれないと後になって思う。最後に乗せたのはそう……妻が亡くなる前乗せたのが最後だろうと思うのだった。






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