3 懐いてるだと……
色々スピーディーになりそうな予感w
「ただいまー」
重い足取りで玄関のドアを開けると、ドタドタとかけてくる足音が2つ。
「とうちゃんおかえり!」
「ぱぱおかえりー」
5歳になる双子の兄の裕介とその妹の寧々。俺の可愛い子供達だ。裕介と寧々はどちらかと言えば俺の妻の遺伝が容姿に強くでており、特に寧々なんて数年もしたら本気でそっくりになりそうだ。
裕介も童顔なので女装しても似合いそうだが……昔、俺も童顔で姉さん達に女装させられたことを思い出すので、絶対阻止している。
「というか、裕介。頼むからとうちゃんはやめてくれ」
「なんで?とうちゃんはとうちゃんだろ!」
にっしっしーと笑う裕介。うん、なんかこの大雑把なところはお袋を思い出すよな。俺の母親は母親というにはあまりにも大胆な人だからなぁ。むしろ親父の方が母性が強いというちぐはぐ夫婦なのに何故か相性が良いのだ。
「あ、おかえりなさい。夕飯出来てますよ」
………そして、当たり前のようにエプロンを着けて出てきた美澄。うん、冗談じゃなかったのね。
「あ、すみません。やり直しますね」
「え?何を?」
そう聞くと美澄は微笑んで言った。
「おかえりなさいあなた♪ご飯にします?お風呂にしますか?それとも……わ・た・し?」
「うん、じゃあご飯を頼むよ」
「ぶー、晴太さんのいけず」
「サラッとファーストネームで呼ぶのな」
というか、今時それを生で聞けるとは思わなかったが。そんな風に思っていると、裕介と寧々が美澄に駆け寄ってから嬉しそうに言った。
「ねぇちゃん!おれ、はらへった!」
「おねえちゃん、ねねも……」
「うん、じゃあご飯にしようか。ちゃんと手を洗うんだよ?」
「「はーい!」」
……あれぇ?なんかめっちゃ懐いてない?お父さんちょっと寂しいんだけど……
というか、あの人見知りの激しい寧々すら笑顔で話しかけるほどに溶け込んでるという異常。うん、これ随分前から交流してたんだろうなぁ。
「晴太さんも早く着替えてきてくださいね」
「はぁ……わかったよ」
ここでグダグダ言っても仕方ない。そう思って部屋に行こうとすると、その前に思い出したように美澄は言った。
「それと、私のことは家では清香と呼んでください」
「いや、何故そうなる」
「じゃないと、今晩は晴太さんの苦手なキノコ尽くしにします」
鬼か。でも、子供達の前で残すわけにはいかないし、親父が作ってくれるわけでもないので従うしかないか……はぁ……
「わかったよ。清香」
「……!」
「いや、言わせておいて顔を赤くするなよ」
可愛い反応するなよ。ここまで用意周到にやってて初な反応されるとリアクションに困るんだけど。まあ、普通に可愛いと思ってしまうあたり俺もまだまだなのだろう。
「す、すみません。想像以上に嬉しくて……録音しといて良かったです」
……聞き間違いだよな?そうだと思いたい。
「ところで清香。ご飯食べ終わったら車で家に送ってやるよ」
「え?いいですよ。1人で帰れますから」
「こんな世の中でお前みたいな可愛いのが夜に歩いてたら、色々危ないからな。送らせろ。これは雇用者としての命令だ」
ちょっと横暴だったかな?でも、女の子を1人で帰すわけにもいかないし、仕方ないだろうと思って美澄の方を見ると……何故か頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んで言った。
「……晴太さんのそういうところが、私は大好きなんですよ」